第38話 そして悪魔は動き出す

 ニャン吉の隠れ家で月に照らされた用意周到なクソ猫の姿を見る。そして、夜が明けた。


 ニャン吉はどんな時でも熟睡できる。他の獣たちが迫る脅威に震えながら夜を過ごしたというのに……。


 窓から差し込む朝日を背に、フルブリッジを決めるニャン吉であった。


 朝食には様々なものが用意されていた。

『こりゃ、ホンマにどっからってきたんや』と文化会の獣たちは不思議そうに木の実を食べる。

『こりゃ、ホンマにどっからってきたんや』とチバリンがよくわからない草をムシャムシャ食べる。

『こりゃ、ホンマにどっからってきたんや』とスパイシーな肉を貪る味噌汁。

『こりゃ、ホンマにどっからってきたんや』と鹿三位が用意していた最新の写真を眺めてつぶやくニャン吉。


 さらに、鹿三位の撮影した小型ビデオも観た。

『こりゃ、ホンマにどっからってきたんや』と映像の中の鹿は言う。

『こりゃ、ホンマにどっからってきたんや』と太った鹿の腹を他の鹿が角で突付いては何の栄養を摂取すればこうなるのかと嫌味を言う。


 ビデオを見終わった時ニャン吉は再びつぶやいた。

『こりゃ、ホンマにどっからってきたんや』


 ふとニャン吉は思った。今日の会話は全て『こりゃ、ホンマにどっからとってきたんや』であった。とるのとの字が違うのみである。


 一通り資料に目を通すと、ニャン吉は外の空気を吸った。外に設置されたボットン便所へ、ニャンクソをてんこ盛り。


 そして、様々な罠を吟味し、森の中を抜ける会議をした。


 作戦を伝えると、ニャン吉はチバリンと味噌汁を連れて行くことにした。戦力になりそうにない獣たちはここで待機することになった。


 獣たちが震える中、ニャン吉の顔は実に活き活きとしていた。口では大変なことになったなどと真面目ぶっていたが、顔には鹿を罠にはめる喜びが溢れていた。


 刀傷のように細く釣り上がった目をして、眉根に暗い影を落とす。口から牙を2本覗かせ、口角を裂けんばかりに上げる。口の中は暗くて見えず、底なしの悪意を飼っているようにすら見えた。邪王猫な笑いが飛び出したのである。


 その笑顔を見ると返って鹿よりもこの猫の方が恐ろしくなってくる。


 どこから盗んできたのか不明の黒いリュックサックに数々の罠を詰めるニャン吉。その顔は戦いを恐れる顔ではなく、相手が罠にはまった時を想像しての笑顔である。


 そして、ニャン吉たちは出発した。


『次回「レッツゴー地御前」』

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