第37話 悪魔の兵法
空き家の2階でニャン吉のコレクションを見て愕然とする味噌汁とチバリン。
『ニャン吉、あの地図はいつ用意したんや』
『一月前にゃあそこに貼っとるで』
一月前と聞いて横目でニャン吉の方を見る味噌汁。
『ここにあるんは……なんに使うんや』
『おう! ええ質問じゃチバリン』
ニャン吉は活き活きと道具について説明しだした。
『まずはこのバケツじゃ。中にゃスライムが入っとっての。いざという時に相手の顔に投げつけるんじゃ』
口を開けたまま話を聞いているチバリン。
『次はこの剣山じゃ。迷彩色に染めて森で相手の足を打ち抜くんで』
『ああ……』
『それからこの鎌は触ろうとすりゃあ回転して――』
『ん……』
ニャン吉の武器は1つとして正々堂々としたものは無かった。それも、足掻けば足掻くほどドツボにはまる罠と、騙し討ちの後にさらに騙し討ちをするという二重トラップなど普通の汚さではない。後の者はこの悪知恵を『万全を期した卑怯』と称する。
『――この水鉄砲の中身はハバネロでの。相手の目に撃った後はこの刻み海苔を――』
『もうええわ。味噌汁大満足じゃ』
『わしも大満足じゃ』
『ほうか? じゃがここからがおもろいんで?』
しょんぼりと下を向く2匹の犬。彼らはニャン吉のえげつなさについていけなかった。
月の光が優しく宮島を照らす。窓から見える遠くの月を眺めため息を吐くニャン吉。平安の昔もこんな月を眺めていたのであろうかと3匹は思いを馳せる。
『この月を見よったら争いなんか馬鹿らしゅうなってくるのう』
『お前が言うなや! この悪魔め!』と思わず口走る味噌汁。
『そうじゃ! 猫の形した破壊の匠め!』とつられて言ってしまったチバリン。
いきなり味方から罵倒され困惑するニャン吉。
『え? なんでや』
『おお! すまんニャン吉。味噌汁反省』
『わしもすまん』
『ならええんじゃ』
月から再び壁に貼られた地図へ目を遣るニャン吉。
『ここまで来りゃ後は運じゃの。大丈夫よの。厳島の神が俺らの味方してくれるはずじゃ』
『お前に味方するような神がおったら右の頬も左の頬もグーでぶん殴るで!』と再び失言する味噌汁。
『ほうじゃ! 例え戦いの神でもお前の味方だけはしちゃあいけんわ!』とチバリンも追い打ちをかける。
『うるさいんじゃ! お前ら誰の味方や!』
大声で怒鳴るニャン吉に2匹の犬は、隠れ家だろここはと諭す。
『次回「そして悪魔は動き出す」』
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