第33話 狂った追跡者
鷹派2頭の罠にかかり、首に縄がかかって窒息寸前の鹿三位。彼を助けたのは寸鉄カミソリの応用というニャン吉の悪知恵。いよいよニャン吉の悪知恵が、ドス黒い食虫植物が開花するように花開く。
耳を噛みちぎられて鮮血をポタポタと垂らす鹿々。その痛々しい姿を見て興奮するド変態の殺殺が鼻息荒く奇妙な頼み事をする。
『のう、その耳ちょっとだけ舐めてええか』
『愛と平和のためじゃったら許す』
『……薄情と暴力のためじゃったら』
『それはそれで許す』
『なんでじゃ!』とつっこむ鹿三位。
『血を見ると・我を忘れる・我々は』
不気味なポエムを口ずさむと、千切れた耳をペロリと舐める殺殺。
地面に吐かれた自らの耳を見て、コレクションに加えようと微笑む鹿々。
一見すると異様な行動に見える。だが、よくよく考えるとこいつらは動物である。自然なことだ……。
その隙に森の奥へ逃げようと試みる鹿三位。
血を見ると我を忘れる2頭であった。だからといって、鹿三位を逃がすほど間抜けではない。森へ入った鹿三位を即座に追いかけていく。
『待てー。そのカミソリ寄越せえええ!』
『剥製にしちゃるわああ!』
耳から血を流す鹿と、口が血だらけの鹿がこちらへ駆けてくる様は異様としかいいようがない。だが、よくよく考えるとこいつらは動物である。自然なことだ……。
自在に逃げながら2頭を撒いてニャン吉と合流しようとしたのだが……2頭はしつこかった。薄暗い森の中、枯葉を踏みしめ、時には石を蹴飛ばして走る3頭の鹿。
走りながら殺殺は背中に負っていたリュックサックの中からペットボトルとライターを取り出した。ペットボトルから液体を口に含むと口元でライターに火をつけて、口から液体を吐き出した。すると、液体に火が引火して火炎放射となる。
鹿々は吹き矢を乱発してくる。口からは三叉の吹き矢を連射。鼻の両の穴にも三叉の吹き矢を突っ込んで、1度に9発もの弾丸を放つ。
後ろから仕掛けてくる猛攻を左右に跳ねながら巧みにかわしていく鹿三位。
よくよく考えるとこいつらは動物である。傍から見ている人がいたらこう言うだろう。
「もはや動物ではない」
やがて、断崖絶壁の隅に追いやられた鹿三位。2頭の鹿がヘラヘラ笑いながら近付いてくる。
『鹿三位ちゃん。ここは俺が観光客を突き落とす愛用の崖じゃ。ええじゃろう、眺めも高さも』
『お前の下衆な趣味にゃあうんざりしとったんじゃ!』
『……落ち行く鹿に乾杯を、オッペケペーじゃ』
『お前の腐れポエムも二度と聞きとうない』
『次回「断崖絶壁」』
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