第26話 側近の鷹派

 鹿たちに拐われた便坐。鹿三位に報告するニャン吉。今、戦いの火蓋が切って落とされた。


 一大事である。鹿三位はニャン吉を伴い虫歯四姉妹へ聞き込みを開始する。


 虫歯四姉妹は五重塔の周辺で今でもまごついていた。4匹が顔を突き合わせ、上から見ると四つ葉のクローバーに見えるように並んでいた。


 血相変えた鹿三位は虫歯四姉妹の元へ駆け寄る。そして、彼女らを落ち着かせてから話を聞き出す。

『何があったんですか?』

『鹿に拐われて……』


 聞き込みをすると、虫歯四姉妹は1つ重要な証言をしたかと思うと、自分の食べたいものを天に向かって叫んだ。中々話が進まない。苛立つ鹿三位の横顔を見て冷や汗をかくニャン吉。

『あたしは、オリーブオイルで煮た、くさやが食いたい!』

『んな話はええ! 早く誰に拐われたんか言ええや!』

 鹿三位の怒声が響き渡り、虫歯四姉妹は黙った。そして、キシリトール虫歯が重要な証言をした。

『鹿鬼組の幹部じゃったと思う』

『そりゃ誰じゃ!』


『分からんけど……なんか金魚鉢持っとった』

『なるほどの、感謝するわ!』


 重要な証言を取ることができた鹿三位は、ニャン吉に本部へついてくるように言うと弥山を登って行く。道中、何者が便坐を拐ったのかを説明する。


『ええか、ニャン吉。側近魚を持っとるんは私を含めて10頭の幹部しかおらん』

『10頭の側近ってことか』


『その内、保守的な右派……つまりのう、鳩派の連中は4頭でこりゃ違うわ』

『鹿が鳩なんか』


『次にの、中立穏健派の連中は私を含めて4頭でこれも違うじゃろう』

『カタギに手え出した部下を水攻めするんは穏健派なんか……』


『革新的な左派……つまり鷹派の連中は2頭おる。たぶんそいつらじゃと思う』

『お前よりやばいって……そいつら何者なんや』


『1頭は、角々かくかく鹿々しかじかって名前の下衆じゃ。鹿の剥製工場を趣味で造った、頭のいかれとる野郎での。役職は剥製係じゃ。上納金の鹿せんべいのノルマ達成すりゃ、用済みの観光客を弥山の崖から突き落とす悪趣味な下郎なんじゃ。落ちた観光客見て全身震わせ声無く笑うんじゃ』

『ほんま下衆じゃのそいつ』


『もう1頭は、殺殺ころころ殺殺さっさ。ボスに背いた野郎の処刑人で役職は殺処分係なんじゃ。毎回鹿の処刑の度にポエムを創るド変態じゃ』

『……どんなポエムなんや?』


『……そりゃ、ホンマに聞きたいんか?』

『……まあ』


『……じゃあ、アモーレ殺処分を少しだけ』


「ああ、愛する死刑囚よ。そなたの顔を私に見せて欲しい。ギロチンの刃にガタガタ歯を鳴らず臆病なそなたのこと、いと愛おし。ああ、最後に私の尻の穴を観てくれ。どうか嫌がらずに観てくれ。それが今生最後の記憶となるのだ……。照れていないで、ギロチンの刃を受け入れておくれ」


『……もうその辺で』

『おう……全文詠んだらこの50倍になるけえの』


『嘘じゃあ! そんな量……嘘じゃあ!』

『ほんまの変態は殺殺みたいなやつを……もうやめよう』


『次回「本部襲撃後」』

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