第24話 カオスなお見合い〜後は若いお5人に〜

 あまりにカオスなお見合いに、ニャン吉は全身に悪寒が走る。ましてや、鹿三位の心境はいかに……。


 粉紅葉のハイが治まって、便坐と虫歯四姉妹は池から上がってきた。春とはいえまだまだ寒い。全身ずぶ濡れでくしゃみを連発する。


 鹿三位はもはやこれまでと感じて『後は若い者同士にお任せしましょう』と言い残して逃げるように去っていった。


 その後もニャン吉はお見合いの結末を見届けようと、樹の上から息を潜めて見続ける。


 便坐と虫歯四姉妹は、弥山を散歩する。生い茂る草木の中を練り歩く5匹。


『キャンディさん。こちらをどうぞ』

 便坐が口からプッと何かを吐き出した。

『反芻しやがったの』とニャン吉は小声で言った。


『こりゃなんですかね』

 キャンディは吐き出された物体をシゲシゲと眺める。


『こりゃあ、サルミアッキっていうて、フィンランドの美味しいアメちゃんですのよ』

『そうなの。じゃあいただくけえの』

 地面に吐き出されたサルミアッキを口に含む。サルミアッキと聞いてニャン吉は、巴御前がそんな名前の世界一不味いアメを大量購入していたことを思い出す。


 キャンディがサルミアッキを口の中で転がしていると、次第に口がへの字に曲がりだした。目を閉じて歯を食いしばる。

『どおかしら? 美味いじゃろう』

『ええ……クソ……美味いですねえ』

 ニャン吉は『嘘つくなや』と言った。


 気分を良くした便坐は、口からプップップッと3つもサルミアッキを吐き出した。

『よかったら皆さんでどうぞ』

 妹たちもサルミアッキを口に含んだ。口の中に凄まじい味が広がる。


『これはね、ある女性に鹿せんべいの代わりにってもらったんよ』

 妖しく歯を剥き出しにして微笑む便坐。


『そりゃあ、御主人様じゃの』と微かに声に出したニャン吉。


 先程までとても話が弾んでいたのに、サルミアッキのせいで沈黙。さすがに何かあったと勘付いた便坐。彼女は突然皆の方を振り向いて、楽しませようとこう言った。

『A・B・C・D・E・F・爺さん!』

 虫歯四姉妹は皆サルミアッキを吹き出してしまった。不意打ちで思わず笑い、不味いアメを吐き出す。


 だが、何を思ったのか便坐は、口から飛ばしたサルミアッキを拾って来て虫歯四姉妹へ渡した。

『落とし物ですよ。お嬢さん』

 虫歯四姉妹は目を見開き、広角を限界まで上げて引きつった。それは、後ろから見ているニャン吉にすら分かるほどの嫌がりようである。


『さあどうぞ』と便坐がしつように勧めてくるので、仕方なく再びサルミアッキを口に含む。


『お見合い失敗かの』

 呆れるニャン吉は、自分の隠れる木で爪を研いだ。


『次回「なんてことだ」』

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