第23話 カオスなお見合い〜ご趣味は〜

 便坐のお見合い相手の虫歯四姉妹を引き連れ弥山へ登って行った鹿三位。心配になったニャン吉と味噌汁は密かにその後をつける。


 だが、味噌汁は途中で尾行を断念する。小型犬ではこの化け物じみた白猫の動きにはついていけない。樹上を猿よりも巧みに移動し、蛇のように滑らかに枝先へゆく。その動きは、同じ猫でも真似できそうにない。

『ニャン吉、後は任せたわ』

『任せとけ』

 そう言うとニャン吉はギアを上げた。木から木へ蝿のように精密な動きで渡る。その動きを地に足を付けて岩の間から観ていた味噌汁は、ただ呆然とするしかなかった。


 しばらく行くと樹の下に鹿三位とお見合い一行の姿が視認できた。木の枝先、葉が重なり向こうから見えにくい位置を取るニャン吉。鹿三位より、虫歯姉妹の方が足音が大きかった。


 再び静かに尾行を続けると、鹿の集まる池が見えた。樹上で息を潜めるニャン吉。彼は、全身に泥をつけて目立たないようにしていた。眼だけはどうしても光るのでサングラスを用意した。


 池の辺りでボスの娘の便坐と虫歯四姉妹が対面する。側面には池を背にした鹿三位が黙って佇んでいた。


 簡単に挨拶を交わすと、お見合いは始まった。皆公家女房のような雰囲気を漂わす。

『ご趣味は』などと定番の言葉を便坐が虫歯たちに尋ねる。

 長女のキャンディ虫歯は『蛆虫コロリンですの』と言うと便坐と虫歯妹たちはホホホと笑った。


 樹上で聴いていたニャン吉は『どんな趣味や』と言いそうになり、口を抑えた。


 次女のキシリトール虫歯は『自分の出したおうんこの観察を少々』とはにかむ。


『地面に巻き散らかしやがって』と口走りそうになるニャン吉。


 三女のシュガーレス虫歯は『意にそぐわない方々を海に突き落として弄んだり』などとあまりにも自己中心的かつ乱暴な本性を明かしつつ、顔を赤らめる。


『赤面乱暴者娘が』と声に少し出してしまったニャン吉。鹿三位がこちらをチラリと見てきた。


 四女のカリフラワー虫歯は『私は末っ子なのでわがままで甘えん坊なんです。自分の欲しい物があれば、相手がどれだけ抵抗しようと、爪を剥ぎ取ってでも奪いますのよ。もちろん私が単独でやりまして』と爆弾発言。


『もっと他のやつに相談せいや! 単独で動くな! 自立すんなやクソ鹿』とやや大きめな声で言ってしまったニャン吉。鹿三位は完全にこちらに気付いた模様。だが、他の鹿は全く気付いていない。


 便坐は気を良くして『あたしの趣味は鹿の剥製集めなの。もちろん、パパ野郎の部下の連中だけどね』と問題発言。


 それから、お見合いの鹿たちは紅葉の粉を吸引し、ハイになって池へ飛び込む。鹿三位は呆然とその姿を見ていた。


『こりゃいけんわ……警察呼ばんにゃ』とニャン吉は心配で初めて警察に頼りたいなどと感じた。


『次回「カオスなお見合い〜後は若いお5人で〜」』

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