第18話 密約
紅葉ハイから素面に戻った鹿三位。彼は、ニャン吉と味噌汁と公園を散歩しながら話をする。
海の見える辺りで話を始めた。
『ニャン吉、お前どうしたいんや』
直球の質問に、心根が変化球のみのニャン吉は一瞬言葉に詰まる。
『怒らんけえ言うてみ』
『じゃあ遠慮せんと言わしてもらうわ』
ニャン吉は弥山の方を見て話し始めた。
『鹿鬼組の連中に俺は砂浜で殺されかけてのう』
『ほう』
『そいつへ報復したかったんじゃが』
『が?』
『どうも、鹿が厄介な徒党組んどることが分かったんじゃ』
『それで』
『……邪魔な鹿鬼組を潰そう思いよる』
3匹の間に沈黙が続く。そこへ、空から烏が大量の糞を雨あられの如く降らしてくる。ニャン吉たちは樹の下に避難した。空を覆うように飛ぶ烏へ鹿三位が怒声を飛ばす。
『なんしよんじゃ! われ! 綺麗な宮島を糞で穢しやがって!』
『いや、お前らもじゃろうが』
苦々しげに真っ白に染まった地面を見る3匹。
しばらく沈黙が続いた。口を開いた鹿三位は意外なことを提案してきた。
『ボスの娘を利用するんはどうじゃ』
『は?』
『じゃけえ、ボスの娘を利用するんはどうかって言いよるんじゃ』
『お前どういう風の吹き回しじゃ』
妖しくニタリと笑った鹿三位。だが、どことなく瞳の奥に怒りが見えた。
『私もボスに恨みがあるけえの』
『んで、どうするんや』
『大丈夫じゃ、あの辺台……いや、ボスは娘を溺愛しとる』
鹿三位の話はこうである。
ボスである御手洗辺台は、娘の御手洗
『というわけじゃ』
『お前……何が言いたいんじゃ』
『察しが悪いのうニャン吉。要するに、娘の縁談をまとめることで、信用を得るんじゃ』
『それで?』
『ボスに近付いて……やがてその座をこの私がいただく』
『ほう』
『ボスにゃ悪いが、一族を宮島から追放させてもらう』
『他のアイデアは?』
『……ボスが眠っとる時に硫化水素を』
『縁談で行こうや』
ニャン吉と鹿三位は前足でグータッチをした。
『ほんじゃ鹿三位。よろしくの』
『おう……その前に、ニャン吉に狼藉を働いたとかいう奴をしごうしちゃらんにゃあのう』
しごうとは広島弁でぶっ殺すという意味。
ニャン吉と鹿三位は妖しく笑うと、その間に味噌汁も入ってきて一緒に笑った。
『次回「ボスの娘は……」』
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