「うわあああぁぁ!!目がぁあああ!」


 なんて叫ぶ奴らを後目に、僕はシグナの手を引いて奥の部屋へ向かう。


 あんなにカッコつけて何やるかと思ったらいきなり目を潰した?テロじゃん。でもしょうがないんだ。せっかくカッコ付けたけど、その後の動きなんてわからないんだよ。だから目を潰した、仕方なかったんだ。僕は悪くない。うん。


 巻き添えを食らって前後不覚なシグナの手を引いて向かった先の部屋には、数人の司祭らしき人がいた。外の騒ぎから状況を察したのであろう。ヤバいやつの対応を素早く終わらせたいのか、急ぎながら俺たち2人の鑑定の準備を始めていた。



 ///

 ぼけーっと体を光らせながら待つこと5分程度。僕たちの目の前に石版がふたつ置かれた。僕用とシグナ用かな。


 司祭さん達は僕たちを完全に危険人物として認識しているのか、警戒した様子で恐る恐る口を開いた。


「…それでは、鑑定を開始します。この石版に手を置いてください」


 僕たちは目の前の石版にそれぞれ手を置いた。

 すると見慣れたステータスボードが僕たちの目の前に現れた。横をチラッと見るとシグナの石版からもステータスボードが出現しており、他の人からも見えるみたいだ。


 __________________________

 名称:ルクス

 性別:男

 年齢:5

 経験:Lv1

 称号:転生者 勇者

 肉体強度:E-

 技能:鑑定Lv8

  光魔法Lv42

  回復魔法Lv36

 剣技Lv1

 魔力操作Lv31

 思考加速Lv80

 並列思考Lv37

 成長速度10倍

 成長限界突破

 起死回生

 ______



 うん、見慣れたヤツだね。特に変化はない。思考加速がちょっと上がってるけど、日々の鍛錬の賜物だね。


「シグナ、ステータス見ていい?」


 僕は何気無く、隣にいる彼女へステータス閲覧の許可を取る。まあ、この距離だと見ようとしなくても目に入るけど一応本人に確認をね。


「…うん」



 __________________________

 名称:シグナ

 性別:女

 年齢:5

 経験:Lv1

 称号:聖女

 肉体強度:F

 技能:闇魔法Lv1

  呪魔法Lv1

 魔力操作Lv1

 成長限界突破

 起死回生

 ______


 なるほど…聖女…




 …ん?



 全く予期していなかった文字の羅列に、僕の頭は混乱の渦中に包まれる。




 …うん?



 闇魔法…これは特殊属性だよね。特殊属性は勇者特有って聞いたんだけどなぁ。




 …あー。




「…」


「ルクス…?」


 シグナはステータスを見て固まる僕を見て、何かイケナイことがあったのかと、不安そうな顔で僕の顔を見上げる。


 あー。んー、闇魔法ねぇ…。髪の色そのまんまって感じだ。聖女聖女…。うーん。うん。




「シグナ、俺と一緒に魔王を殺さないか?」


「…?なに…?」


 ああ、焦りすぎた。闇魔法という彼女の特異的な魔法の才、聖女の称号による成長限界突破の文字。謎の高揚感に包まれ、心臓がドクンドクンと妙な拍を刻んでいる。



「もう一度言おう。俺と一緒に魔王を殺さないか?」


 彼女は全く意味なんて理解して無さそうだ。相手は5歳児、相手は5歳児。そんなこと頭では理解しているのに、無性に湧いてくる興奮を抑えられない。俺とこいつなら魔王を殺せる。そんな根拠の無い確信が頭を支配していた。





「わたしは…」



 謎の緊張感が流れるこの空間で、シグナが口を開く。




「…ルクスに、ついて行くよ」



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