強くなるために

 魔王を殺す。


 その決意をしてからの行動目標は簡単だった。ただひたすらに鍛錬に励む。自分の目的のために人を殺す。それだけのために僕は自分の力を磨くことを決めた。


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 鑑定の儀から時を戻して5年前。


 転生してから数ヶ月、まだまだ赤子の僕は指をしゃぶりながら、ひたすら強くなるプランを考えていた。この段階から強くなるためにできることは何か。それはという新たな概念に対するアプローチである。それは赤子の身体でもできる事だからだ。


 異世界転生が本当にあると思っていた僕だ。こういう時の行動は嫌という程妄想していた。

 まずはすべきは魔力を探り当てること。僕は自分の身体へと意識を集中させるために、目を閉じる。するとどうだろう、違和感のある流れを知覚した。元々魔力なんてない地球で暮らしていたんだ。17年間無かったものが唐突に現れたら違和感もするであろう。逆になぜ今まで気づかなかったのか、と言うほどに存在を主張してくる。


 僕はその、違和感のある流れへ強く意識を向けた。



 ___ドクン...ドクン...



 心臓の鼓動に隠れて多少わかりにくいが、魔力が身体中に満ちている感覚を感じることが出来た。


 異世界転生を本気であると思っていた僕にとって、この程度造作もない。


 知覚した魔力をどう動かすか。僕が真っ先に思いついたのは第2の心臓を、魔力にとっての心臓を意識することだった。当然のことを語るが、血液はどうやって身体中に流れているか?僕たちの世界ではそれは周知の事実。心臓によって身体中へ血液が送られるのである。同じことが魔力にも言えるのではないか?そう結論に至ったのである。




 という訳で、実践しているのだが…


「おおっえあおおいあう!(思ってたのと違う…)」


 確かに魔力を意図的に動かすことは出来た。でもそれは体に満ちている魔力を循環させているだけ。冷静に魔力が酸素を運ぶ役割などないであろうし、循環させる意味などなかったのだ。そう結論を出そうとした時。





「あぅ…?」



 あれ?なんか体が軽い…。

 もしかしてこれは…身体強化というものだろうか…?


 試しに第2の心臓を意識して、鼓動を早めるよう挑戦する。するとその魔力がなにかに吸収されているのを感じた。恐らく細胞、?

 魔力の循環→魔力を細胞が吸収


 これによって身体強化のエネルギーを一時的に産んでいる?



 僕はそう仮説を立て魔力の循環を早めた。

 するとどうだろうか、どんどんと身体が軽くなっていく。その一方で、身体の中の魔力が減っていく感覚がした。そしてその魔力が尽きる時、僕の意識はブラックアウトした。

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