循環と放出

 とある異世界の夜中。気絶していた1人の赤子が目を覚ました。




「うぁ…?」


 ん、僕は…寝ていたのか…?確か魔力を使って、それで…これ、もしかして、魔力の使いすぎというやつでは?


 異世界転生が本当にあると思っていた僕からすると、魔力というのは使いすぎると気絶したりしなかったりする。作品によっては死の危険性があったりするけど…


 僕は必死に首をまわして、周りを確認する。感じ取れる気配は、眠っているお母様と、その胸に抱かれてる僕の2人だけ。


 …よし、魔力のトレーニングするか。

 さっきは気絶しちゃったけど、実際に今生きてるし、死ぬことは無いでしょ(適当)



 気絶直前の記憶によると、恐らく身体強化と呼ばれるものを行うことが出来た。だが僕が思い描いていた光魔法ピカーン!敵グシャー!!とはいかなかった。


 昨日やったものを循環系と称するのであれば、僕がやりたいのは…放出系?魔力を光魔法という現象にして使うには別のやり方があるはず…


 魔力を放出するイメージ…魔力を放出するイメージ…

 僕は目をつぶって、身体の中にある魔力に意識を向ける。しばらくすると、日光に当たっているような、ポカポカとした暖かさが全身を包んだ。するとお母様が僕を湯たんぽだと勘違いでもしたのか、ギューッと柔らかい胸に僕の頭を押し付ける。集中力の切れた僕は、堪らず閉じていた目を開き藻掻く。


 お母様の胸と格闘すること2分程度、ようやく解放された僕は、自分の体の違和感に気づいた。


「え、いあっえう…(え、光ってる…)」


 魔力の放出…やり方は間違っていなかった。確かに魔力によって光っている。僕のお腹から、手から、足から。そう、光ったのだ。体全体が。もう一度言おう、体全体が光っている。生まれて半年にも満たない赤子が、全身からピカピカと光を発しているのである。湯たんぽのような暖かさを添えて。



「おおっえあおおいあう!!!」



 しばらくするとやってくる魔力が無くなっていく感覚。虚脱感。僕は意識を手放した。

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