光魔法

 シグナの手を握り待つこと20分程度、ついに僕達の番が回ってきた。


「次の村の方は、奥の部屋へ入ってください」


 先程まで奥の部屋へ入っていた集団がぞろぞろと出てきて、今度は僕たちが奥の部屋へ行く番だ。部屋から出てきた人達の表情は満足気だったり、残念そうだったり、自分の才能を知って一喜一憂している。良くも悪くも、将来について決める1つのピースとなるのだろう。


「シグナ、いくよ」


「ん…」


 僕はシグナの手を引き教会の司祭が案内する部屋へ向う。するとすれ違いざまに他の村の子供たちが僕を見て、次にシグナに目を向けた。するとその目は驚愕、次に怯えを帯びたものに変わり、その場にへたりこんだ。そうして震えながらこちらを指さして、叫んだ。


「悪魔がいる!!」


 その叫び声によって、視線は僕達に集まる。少しでも目立たないために…と被せられた黒い外套から覗くシグナの漆黒の髪、漆黒の目。ある者は関わらないようにしようと、そっと目をそらす。ある者はこちらを見て怯え、怖い怖いと叫んでいる。黒は不吉の象徴とはいえ、そんなに露骨なのか。喧騒が場を包む中、誰かが呟いた。


「呪われてる…」



 シグナからすれば訳が分からないだろう。自分は今まで村人として普通に生きてきたというのに、まるで悪魔や殺人犯のように扱われる。見知らぬ土地に来た途端、心当たりもない中で周りから邪険にされる。そんなの恐怖以外何物でもないではないか。


 僕は魔力の循環を早める。魔力の循環を高速で行うと魔力が身体から滲み出して、可視化される。僕の姿は神々しくなって、光のオーラを纏っているみたいになる。そこが僕的にポイントが高い。


 シグナに集まっていた視線が自然と僕へと集まる。するとみんな口をポカンと空け、突然の事態に混乱している様子だ。それもそうだろう。10人中9人が「これこそ神聖」と言うであろう神々しい光を、5歳児が放っているんだもの。


 満を持して一言。


「彼女を恐れる必要はないよ___」


 そう言って僕は、光魔力を凝縮した光の球を、右手に浮かび上がらせた。光魔法の予備動作だ。


「__俺は勇者だ」


 右手に構えていた光の球を放つ。それと同時に、真っ白な空間が閃光と共に広がった。









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