決意

「あえ、あんえいいえうんあ?(あれ、なんで生きてるんだ?)」


 まだ視力も覚束無い目が、僅かな光を捉える。そこには中世ヨーロッパのような、何世紀もような生活が広がっていた。



『トラックに轢かれたら異世界へ転生できるんだよ!!』なんて言ったからだろうか。

 僕は確実にトラックに轢かれて、事切れていたはずだった。


 そのはずなのに、


 僕は異世界転生をしていた。



 ///


 なんてベタな展開だろうか。トラックに轢かれたのも何者かの意図によるのではないかと疑ってしまう。更にそれを加速させたのが数日前のこと。ステータスボード(仮称)なるものの存在である。転生初日、ベタすぎる展開に僕は『ステータスオープン』なんて恥を捨てたことを赤子ながらに叫んだのだ。実際には『うえーあうおーうん』だっただろうが。


 するとあら不思議



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 名称:ルクス

 性別:男

 年齢:0

 経験:Lv1

 称号:転生者 勇者

 肉体強度:F

 技能:鑑定Lv2

  光魔法Lv1

  回復魔法Lv1

 剣技Lv1

 魔力操作Lv1

 思考加速Lv16

 成長速度10倍

 成長限界突破

 起死回生

 ______




 唐突だけど僕、勇者になったらしいよ。この世界での名前はルクス。謎に思考加速のレベルだけ妙に高い0歳児。現在魔王を倒そうと奮闘中。


 この世界初日だった僕は、母親と思われる女性の腕に抱かれながら、思考を巡らせていた。


 なぜこの世界に僕は生を受けたのか。なぜ僕のステータスに勇者なんて称号があるのか。それらの疑問は唐突に頭に流れた知識によって解明された。


 曰く、数年前にこの世界で、魔王が生まれたらしい。それを倒すための対抗策として僕が勇者に選ばれたという。その話を知った当初、魔王を倒すこと自体に興味はなかった。だが、一つ気になったことがあった。その知識が言うには、魔王を倒すと願い事がひとつ叶うという。


 僕はその時に、灰色だった世界が色付いていく感覚に酔いしれた。


 彼女の蘇生。


 自ら命を絶った彼女はこんなこと望んでいないだろう。僕のエゴで、勝手な気持ちで、彼女を死から蘇らせる。そのために、僕は魔王を倒すことを決意した。

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