鑑定の儀
「ルクス、シグナちゃんのことちゃんと守るのよ」
「わかってるよ母さん」
心配性な母が何度目になるかわからない声掛けをしてきた。ついに明日か…。俺は興奮する体を落ち着けるように顔を水で濡らした。
(ステータスオープン)
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名称:ルクス
性別:男
年齢:5
経験:Lv1
称号:転生者 勇者
肉体強度:E-
技能:鑑定Lv8
光魔法Lv42
回復魔法Lv36
剣技Lv1
魔力操作Lv59
思考加速Lv79
並列思考Lv36
成長速度10倍
成長限界突破
起死回生
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ついにダンジョンか…
1歳の時から更にひたすら魔法の研鑽に勤しみ、4年後の現在のステータスはだいぶ向上した。『ステータスオープン!』を何度も言ってたら鑑定のレベルが上がって、ステータスの閲覧はどうやら鑑定の効果によるものだったということに気づいた。気づいてからは『ステータスオープン!』なんて恥ずかしい言葉を叫ぶことは無くなった。心で叫んでるけどね。
さて、ついに明日。この国の5歳児は全員受けるとあるイベントがある。とあるイベントというのはもちろん鑑定の儀。どうやら僕の住んでる村は、アルス王国という王国の領土らしい。アルス王国の国政の一環で、満5歳全ての国民は、教会にて適正検査を行うというもの。だいたい春あたりに僕の村に限らずこの辺りの村中から5歳が集められ、鑑定されるらしい。そうして才能のある子供は、王国にある学園に誘致される。才能ある子供たちを1つの学園に集め、共に技術を高め合いさせるという仕組み。
恐らく鑑定結果が勇者と出た場合、俺は学園に誘致されるだろう。だが王都には三大迷宮の一角とされるダンジョンがある。俺はそこで力をつけるために王都へ行きたかったのだ。そのダンジョンに入るためには資格が必要で、冒険者になるという方法、学園の生徒になる方法、王国から許可を貰うことがある。冒険者は未成年ではなれない。王国から5歳児に許可が下りるとも思えない。最短でダンジョンに行くためには学園へ入学することが最優先事項である。こっそり入るっていう手もあるが、バレた場合のリスクが割に合わない。無断で入ったら極刑だぞ。極刑。国家転覆計画罪みたいなので裁かれるらしい。
それで鑑定の儀を受ける訳だが、もちろん僕の村に教会なんて大層なものは無いわけで。ここから馬車で半日くらいの場所にちょっと大きい街がある。そこの教会で鑑定の儀を受けるって感じかな。街から馬車で迎えが来てくれるんだけど、うちの村の5歳児は僕とシグナの二人しかいないので、2人だけのために馬車を遣わせてくれる王国様の政策には感謝である。
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「ルクス。あなたがとっても賢くて、才能があることは私たち家族みんな知っているわ。もし鑑定の儀で良い結果がでたら、私たちのことは気にせずに王都に行っていいわよ。私たちはあなたを縛り付けないことがあなたにとって良くなるって知ってるからね…」
「ちょ、母さん…そんな悲しい顔で感動すること言わないでよ。これで才能無かったらどうするのさ」
鑑定の儀へ行く当日。母さんは僕に才能があることを確信しているようだ。母の期待が重い…
「ふふ、それもそうね。結果がどうであれ、寂しくなったらいつでも帰って来るのよ」
「…ありがとう、母さん。父さんもいつもありがとう」
「ああ、お前には驚かされてばっかりだった。お前は強いんだ。シグナを守ってやってくれ」
まるで一生の別れかのように振る舞う家族に若干の寂しさを感じながら、5年だけとはいえ僕を育ててくれた村へ感謝の念を抱き、名残惜しさを噛み殺して2人に背を向けた。
///
馬車に向かうと漆黒の少女、シグナが既に座っていた。僕は彼女の隣へ腰をかける。恐らく彼女と関わるのも今日で最後になるであろう。
「シグナ、おはよう」
「…ん」
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