第3話 リマッチ。

 舞台は前回と同じ後楽園ホール。実況と解説は前回と同じ、観客も前回と同じだった。


 暗闇の中から徐々に明かりが増し、カメラのフラッシュが観客の期待と興奮を照らし出す。リングの階段を上がりながら、サスケはファンの歓声に包まれながら歩んでいた。そのステップは前回とは異なり、確固たる自信に満ちているように見えた。


 前回から一回り大きくなった身体。そして、キレのある動き。ライガ・ビーストはその動きにサスケの尋常でない覚悟を感じていた。


「さあ、リマッチです、今回の試合どうですか。ナガイ・しゅう・リキさん」


「あのサスケの身体みてください、今日の試合は誰も見られなかったライガ・ビーストの本気が見れますよ」


 リング上に立つサスケ、対岸にはライガ・ビーストが不動のまま立っている。サスケとの因縁の試合、その影響を受けた観客席も静まり返っていた。


 ゴングの音が響く前から、サスケの視線はライガ・ビーストと交わった。それは言葉以上に強烈で、前回の敗北への悔しさと、今回の勝利への執念が込められていた。


 ゴングが鳴り、試合が始まる。サスケはゆっくりと一歩ずつリング中央に向かって歩み、ライガ・ビーストとの視線の交錯はまるで雷が走るようだった。観客席からはどよめきが広がり、緊張感が最高潮に達した瞬間だった。


 サスケのステップはリズミカルで、まるでプロのダンサーがリング上で踊るかのようだった。その一方で、ライガ・ビーストは堂々とした態度でサスケに立ち向かっていた。二人の間にはまるで電気が走っているかのようなエネルギーが漂っていた。


 そして、リング中央でサスケとライガ・ビーストが対峙する。その瞬間、まるで時間が止まったかのような錯覚が広がり、リングの上に漂う空気が凝固するかのようだった。



 サスケは機敏かつ巧妙な動きでライガの攻撃をかわし、反撃に転じる。ライガもその俊敏な動きに応じて技をかけようとするが、サスケの身のこなしはまさに芸術のようだった。両者の間には互いを知り尽くした者同士の緊迫感が漂っていた。


 リング上では、一瞬一瞬の攻防が繰り広げられていた。サスケがライガをリング隅に追い込み、フォロワーたちの歓声が一気に高まる。しかし、ライガも容赦なく反撃し、サスケをロープに投げ飛ばす。


「ライガ・ビーストが反撃!」


 実況アナウンサーの声がリングに響く中、ライガ・ビーストはサスケに向かって突進する。しかし、サスケは素早い反応で回避し、ライガの背後に回り込んだ。


「ここでサスケがカウンターのチャンスを掴む!」


 サスケがライガの背中にダイビング・クロスボディを仕掛けようとする。リング上に轟く歓声と拍手が鳴り響く。その一瞬の興奮を感じながら、サスケは動きを止めた。


 再びリング中央に立ち、サスケを待ち構えるライガ。


 二人の視線が交錯し、まるで戦う者同士が心を読むかのような緊迫感が漂った。




「先ほどのサスケがカウンターを止めた動きどういったことでしょうか。リキさん」


「あれはライガの誘いですね。わざと雑な攻めをして、サスケの反撃を誘う作戦ですね。」

 

 リキの解説を聞き、草野と観客はヒートアップしていた。


「サスケですが、以前の比べて技の初動の緩急が違いますね。アレでは簡単には組み技に持ち込めないですよ。だから、あえてライガはサスケを誘った攻めをした。」


「なるほど。という事は、ここからが本当の戦いだ!」


 草野が間髪入れず実況する。


 サスケはライガの攻撃を巧みにかわし、高速の連続技で反撃に転じる。しかし、ライガもその巨体を生かした圧倒的なパワーでサスケを追い詰めようとする。


「両者、互角の戦いを展開中ですね!」


 解説者の声がアリーナに流れ、その言葉通りサスケとライガの戦いはまさに互角の様相を呈していた。


「サスケの汗の量、すごいですね、そろそろ決まるかもしれないですね」

 

 リキは周りの熱気に流されず、冷静に見ていた。


 そして、ついにサスケは前回と同じ、組み合った態勢に持ち込まれる。


「数か月でも、肉体と経験の差は埋まらなかったな」


 ライガは手先、膝、重心を調整し、徐々に攻勢を強める。その瞬間、サスケは押し返した。


「サスケ押し返した!!!」


 実況と解説は、思わず立ち上がった。


 ライガは負けずに押し返そうとする。しかし、サスケは速かった。即座に手をほどき、バックステップをして、ライガの肩に手をかけて、宙返りをする。自身の勢いを利用され、ライガはうつ伏せに倒れる。


「ここで!サスケ!数か月に喰らった技をライガ・ビーストに返す!キャメルクラッチだ!」


 サスケがキャメルクラッチをライガに決める。ライガは腕を外そうとしたが、無理だった。サスケの足で手が固定されている。これは...一朝一夕で習得した技ではない、ライガは瞬時に理解して...認めた。


 キャメルクラッチを決まった瞬間、会場は息を呑んだ。観客はその緊迫感に呼吸を止め、まるで時間が止まったかのような錯覚に陥った。


「ワン!ツー!スリー!」


 審判の3カウントが響き渡った。そして、サスケが大きく力強い雄叫びを上げた。


「リマッチの勝者はマスカラ・サスケ!!!」


 観客席からは歓喜の嵐が巻き起こり、拍手と声援が雷鳴のように轟いた。


 サスケはリング上で勝利のポーズを決め、観客に感謝の気持ちを込めて手を振った。この熱狂的な瞬間は、サスケにとってだけでなく、プロレスの歴史にも刻まれる瞬間となった。


 リングサイドには、弥生がいた。彼女の瞳には感動の涙が宿り、勇壮な笑顔が広がっていた。


 観客の声援に応えるサスケ、コーナーにはライガ・ビーストが佇んでいた。かつては敵対していた者が、この瞬間を共有している。ライガは目を細め、敬意を込めた微笑みを浮かべながら、サスケに近づいていった。


「お前の成長、俺は誇りに思う。おめでとう、サスケ」


 ライガの声は、深い感慨と賞賛がこもっていた。彼はサスケの左肩に手を置き、勝者を称えるように右手を差し出した。サスケとライガはお互いに感謝の意を込めて握手を交わした。


「ライガさん、ありがとうございます。おかげで、俺は成長できました。」


 サスケの声は、謙虚でありながらも確かな自信が漂っていた。この瞬間、プロレスのリングはただの戦場ではなく、友情と尊敬の場となっていた。


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