第4話 推しのアイドルと相合傘

「はぁ……マジかぁ……」

 仕事終わらせて、会社を出ようとすると、雨が降っていた。

 空は荒れ模様で灰色の雲が広がっていて、外を走る車が大きな水飛沫を上げていた。


 会社から、駅までは大半が屋根付きの通路なので、大きな問題では無いが、駅から家までの道のりが問題であった。


(困ったものだなぁ……)

 そう思い、ため息をつきながらとりあえず会社の最寄り駅まで歩くこととした。


 コンビニで、ビニール傘を買うという手段もあるが、家に傘が溜まってしまうし、それなりに手痛い出費だ。

 出来る限り抑えたい。



 そんなことを考えながら、電車揺られていると、さらに雨の勢いは増していった。



 こうして、俺が家の最寄駅に着いた頃には、雨は土砂降りになっていた。


(はぁ……仕方ないが、コンビニで傘を買うか……)


 と思い、駅構内のコンビニへと向かおうとすると、後ろから聞き馴染みのある声が聞こえてきた。


「お〜い!ゆうくん〜!」

 驚いて顔を上げると、そこには音葉が立っていた。


「音葉さん!迎えにきてくれたの!?」

「ふふっ、傘忘れてたから、迎えに来てあげました〜!」

 音葉は、何故だかとっても嬉しそうな顔をしている。


 その仕草が、とっても可愛くてドキドキしてしまう。


「マジで助かったよ……ありがとね音葉さん…………って……傘1本しか持ってないの!?」

「ギクっ…………そ、それは忘れたちゃったんですよ……あーワタシったらどじだなぁ……」

 音葉の目は、ひどく泳いでいた。


「あ、あぁ……なるほど……そういうことか……」

「ほら、そんなこと気にしないで!早く帰ろう!!」


 そして、俺は音葉から手渡された傘を開き、その中に音葉を入れた。

 音葉は、とっても満足げな表情で、俺のそばにくっ付いて来る。

 いい歳にもなって、相合傘をするのは、少し恥ずかしい気もしたが、音葉の満足げな表情が見れただけでどうでも良くなる。


「あれ?ゆうくんの体、半分濡れちゃってるよ?」

「そりゃ……まぁ、大人2人は流石に無理があるよな……別に気にしないで」

「むぅぅ……それじゃあゆうくんが風邪引いちゃうじゃん!もっと近づかないと……」

 そう言うと、音葉のプニプニしたものが、俺の体の左側に密着してきた。


「ちょ……音葉さん!?」

「んー?結婚したんだから、これぐらい……普通でしょ…………」

「いや、だからと言って……」

 俺の心臓の鼓動はもう限界で、自身の頬の赤さを自覚出来るほどだった。

 しかし、ふと左側の音葉の顔を見ると、俺と同じように頬を紅潮させていた。



「ねぇ……ゆうくん……私、今すっごいドキドキしてる……」

「そりゃ……俺もだよ……」

「ふふっ、ゆうくん可愛いね……!」

「こっちの台詞だよ…………」

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