一夫多妻制

むらた(獅堂平)

一夫多妻制

 僕には三人の妻がいる。

 月曜日と火曜日は真琴まことと過ごし、水曜日と木曜日は香織かおりと過ごし、金曜日と土曜日は恵美めぐみと過ごしている。


 *


 月曜日。

「ただいま」

「おかえり」

 仕事で疲れた僕を心地よい声で真琴は迎えてくれた。彼女はキュートな声をもつ二十五歳の女性である。モデル体型の小顔で、ストレートのロングヘアがよく似合っている。

 服装は清楚にまとめており、ベージュのワンピースと白のカーディガンが似合っている。

「お風呂にする?それとも、私?」

 真琴は甘えた声を出した。僕の胸は高鳴り、

「もちろん。後者で」

 と選択した。

 週初めから妻を貪りつくす。仕事をする上でのパワーとなり、今週を乗り切る気力が湧いてくる。

 コトが終わり、体を洗った。バスルームを出ると、

「今日はパスタだよ」

 真琴が言った。彼女は料理が得意だ。まさに理想のお嫁さんタイプ。

「このペペロンチーノ、美味しいよ」

 僕は舌鼓を打った。

 その夜、ペペロンチーノにあったニンニク効果で二回戦をした。


 *


 水曜日。

「たーだいまー」

 僕は疲れた顔で玄関のドアを開けた。

「おかえりなさい」

 香織は優しく微笑んだ。髪はシャギーの入ったロングヘアで、笑顔が可愛い三十二歳の女性である。いわゆる癒し系と呼ばれるタイプだ。

「疲れたよ」

 僕は彼女の胸に顔を埋めた。香織は何も言わず優しく頭を撫でてくれた。

「ご飯食べようか。手を洗ってきて」

 僕は手洗いをし、ダイニングテーブルの椅子に着座した。

「今日さ、上司がさ」

 僕のいつもの愚痴タイムが始まった。香織は適当な相槌を打ち、受け入れてくれる。

「大変だったね」

 彼女の癒しの笑顔と労いの言葉で、週末まで頑張ろうという気持ちにさせてくれる。


 *


 金曜日。

 夕方に僕と恵美は駅前で待ち合わせていた。

「お待たせ」

 恵美はナチュラルメイクでショートカットヘアの三十五歳の女性である。服装はTシャツとジーンズというラフな服装だが、蠱惑的なボディなので充分魅力的だ。

 居酒屋を探して、一緒に呑むのが彼女との週末パターンだ。

「乾杯」

 グラスを合わせた。とりあえず生ビールだ。

「仕事、どうだった?」

 恵美はねっとりとした目線で僕を見てきた。

「結構大変だった。部下のミスもあったし」

「へえ。お疲れ様」

 彼女は腕を組んできた。胸が当たった。

「ところで、他の彼女たちとは、どうなの?」

 いきなり核心を突いてきた。

「うまくやっているよ。みんな納得した上での多妻制だからね」

「ふーん。それならいいけど」

 恵美は生ビールのグラスを空け、次は日本酒を注文した。

「あまり飲み過ぎないようにね」

「はいはい」

 僕たちは二時間ほど居酒屋で飲み続け、その後はコンビニでアルコールやつまみなどを購入し、二次会は大人のホテルでおこなった。


 *


 *


 *


 日曜日。

 僕は病院にいた。医者は頭のレントゲン画像をためつすがめつ。

「うーん。今のところ、異常はないようだね」

 医者が言った。彼は四十代半ばくらいの中年男だ。

「そりゃ、そうですよ。僕は正常です」

 僕は肩を竦めた。

「でもね。あんたみたいなのは、”異常”なのよ」

 医者が断言し、僕は不満顔になった。

「どこが異常ですか?」

「どこがって……」

 彼は苦虫を噛み潰したような顔になり、言葉に詰まった。

「どこですか?」

 僕の問いに、医者は自分のこめかみをトントンと人差し指で叩いた。

「異常だよ! 自分の母親の頭蓋骨を妻だと紹介する奴なんて! しかも、三人も妻がいるって? 全部、あんたの母親の頭蓋骨だよ!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一夫多妻制 むらた(獅堂平) @murata55

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ