第8話 運命は廻る(巻き戻し前の末路(娘視点))
「あのトドが死んだって?」
「まだ分からないが、麻衣は美恵さんとこにでも行っておくか?」
「そうしよっかな」
お父さんが電話を受けたのは、どうやらお母さんがお祖母ちゃんの見舞いに行った帰りに死んでいたとい話だった。心臓がどうとか言っていた。終点まで行って見つかったらしい。
慌ただしくお父さんが確認に行ってしまった。私は外に出るもの面倒くさいからそのまま家にいた。
やっぱりお母さんは心不全とやらだったらしい。太りすぎていたものね。
あまり悲しくとか思わなかった。葬式も家族葬とかで私とお父さんと美恵さんで見送った。
私は美恵さんが当然お母さんになってくれるものと思っていた。
「これから美恵さんのことをママって呼んで良い?」
あのトドを呼んでいたお母さんなんて呼べない。美恵さんは素敵だもん。
「あ、ええ。それはまた、光男さんと正式に結婚してからね」
そう言って微笑む姿に私は少し違和感があったけれど気にしなかった。
でも、ある日の晩、美恵さんがお父さんに話しているのを聞いてしまった。リビングで酒を二人で飲んでいるようだった。
「高校生のこぶ付きなんて嫌よ。とっととどこかに預けてよ」
「うーん。そうだな。美恵がそう言うなら、そうしよう。どこか施設ないかな」
「なるべく早くね。私も探しておくから」
――え? どういうこと? 私たち親子としてここで暮らしていくのよね。
私は二人に気づかれないように息を凝らした。
「だって、あの子がいると私の子が住む部屋がないじゃない。それに肩身の狭い思いをさせたくないもの、ね? いいでしょ? だって、私の子はあなたの子ですもの。英子さんや夫は気がついてなかったけどね。これでやっと親子で暮らせるわね」
「ああ、待たせたな。あんな女を拾ったばかりに俺も酷い目にあった。あんな女の子どもなんてこれからも一緒なんて冗談じゃない。とっとと施設でも生かせるさ。はは」
とうとう堪らず私は二人の前に飛び出していた。
「お父さん! 酷い! どういうことなの? それに子どもって……」
私はぎっと二人を睨んだ。
「あら、聞いていたのね。それなら話が早いわ。そういうこと、じゃあね」
そう言うと私をそのまま家の外へ押し出した。
「中に入れてよ! 財布や携帯も中に! 服だって」
ドンドンと扉を叩いたが、出てくれなかった。
「どうしよう。どうしたら……。お母さん。助けて!」
そのうち、雨も降りだしてきた。私はただドアを叩き続けた。
結局私は施設に入ることになった。
そして、お父さんたちは子どもを外に放置していると近所の人が警察に通報をしてくれて、連れていかれたのだ。お父さんたちはわめいていたけれどいい気味。
でも、お母さんに会いたい。お母さんのご飯を食べたいよ。ごめんね。あんな女にだまされちゃって……、いつも私たちのために頑張ってくれていたのに。
夕闇の中、電車は廻る えとう蜜夏☆コミカライズ傷痕王子妃 @135-etokai
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