第7話 光の中、電車は廻る

「ママ。抱っこ」

 よちよち歩きの幼子が私に手を伸ばしてくる。可愛い私たちの娘だ。

「パパが抱っこしてくれるって」

「やっ。ママが良いの」

 娘の言葉にショックを受ける夫。

 職場の上司に紹介されて、同じ会社の他部門にいた夫と結婚した。私をトド呼ばわりした元夫は見た目も給料も比べるのも失礼なほど素敵な人だ。

 私もあれから見た目にも気を使いもうトドには見えない。

「ふふ。きっとこの子も気がついているのかも」

 そうして私は二人目を授かっているお腹を撫でる。これから妊婦検診に向かうのだ。

「大丈夫かい?」

 心配そうに私を気遣ってくれる優しい夫。

「ええ。大丈夫よ。ちょっと目にゴミが入ったみたい」

 そうして、私は夫と最愛の娘の手をとり、電車に乗る。

 温かい光が降り注ぐ中、電車がホームに滑り込んできた。

 駅名は……。

「ふふ、いつもと変わらないわね」

 あの日、あの時の駅名は……。

 電車に乗り込むと空いていたので家族で並んで座った。キラキラと窓からの光が反射して、電車はアナウンスと共に走り出した。光の中を、最愛の夫と子どもたちと共に、もう二度と戻らない道を。

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