かくして、彼女は死を選んだ

@takoyaki070

第1話 かくして、彼女は死を選んだ

ふと振り返ってみると僕が生きてきた人生は不幸という言葉がお似合いのものだったような気がする。

自分が世界で一番不幸だった、なんて言うつもりはもちろんないが、そこそこに不幸だったんじゃないだろうか。


それでも僕は今まで精一杯生きてきた。

どんな理不尽や不条理にも耐えて生きてきたのだ。


でも、何故僕がこんなに頑張って生きなければならないのか、という事をいつも考えてしまう。

生きることがこんなに辛いなら死ねば良いんじゃないかって、ずっと考えていた。


それでも僕は死なかった。

いや、死ねなかったのだ。


なぜなら、自分で死ぬことがとても怖くてできなかったからだ。

前向きな理由で生きようとしたのではなく、後ろ向きな理由で死を選択する事ができなかっただけだった。


こんな弱い僕に死ぬ勇気などなく、まるで生きた屍のようだった。

不条理や不合理に出会ってもただ耐えるしかなかっただけ。

どんなに打ちのめされても、死ぬことが怖かった。


そう、だから僕には生きるという選択肢しかなかったのだ--。


でも、彼女は違った。

僕と違って強くて、かっこよくて、かわいくて。

そして、勇気があった。


あの日、僕たちの学校の屋上で彼女は奴らに向かってこう言った。

「私はここで死ぬわ。それがあなた達への復讐になるなら、死ぬ事だって怖くない。あなた達はそうやって他者を虐げて生きてきたんだろうけど、私はその理不尽に負けたりしない。私が死を選ぶのはあなた達のせいよ。せいぜい後悔しながら生きなさい」


そう言って彼女は屋上のフェンスに登り、奴らを見ながら一切の躊躇もなく、屋上から飛び降りた--。


飛び降りる前奴らを見ていた時、彼女は満面の笑顔だった。

本当に嬉しそうだった。


僕と違って彼女は選択することが出来たから。

彼女にはその勇気があったから。


かくして、彼女は死を選んだ。



















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