(二)-12

 ただ、肝心の翔太の姿が見えなかった。原宿に行ったときに、どのような役で出るのかと聞いたが、「それは観てのお楽しみ」とのことだった。ただ、裏方ではないとも言っていた。それなので確かに舞台の上にいたはずなのだが……。一体どこにいたのだろうか。拓弥にはさっぱりわからなかった。

 拓弥は建物を出ながら不安になった。原宿での翔太の言動は「これが最後」という意味だったのではないか。実は翔太なりの別れの挨拶だったのか。つまり、彼は拓弥に別れ話をしていたのではないか。拓弥の脳内ではそう思い至っていた。


(続く)

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