第3話
都心の道路を走るタクシーの車内で目を覚ます。そして、先程見ていた景色が夢だったことを知る。とはいえあの夢が現実と関係ない訳ではない。あれは、私が出演するドラマの冒頭シーンだった。ちなみに私は第一話で殺されるあのモデル役だ。リアリティを追い求めた監督の意向により、役の起用も現在軌道に乗ってきているモデルである私が選ばれた。本当に短い演技だが、ここで認めてもらえれば一気に仕事が増える。マネージャーからも気張れよと言われていた。
窓の外を景色が過ぎ去って行く。それは段々と都心から離れて行き、ビル群が見えなくなって、ようやく山を登り始めた。ゆっくりと、タクシーの両脇をうめる木々がかわりばんこに顔を覗かせる。
「着きました」
タクシーの運転手が差し出したトレーにお金を乗せてドアから降りれば、既にマネージャーは着いていた。何故かいつも着ているスーツは、今日も皺一つない。
「来ましたか。私たちが一番乗りですよ」
目の前の山荘を見た。撮影現場であるそこはどこか不気味な雰囲気を感じる。唾を飲み込んで、覚悟を決めた。
「いい顔ですね。頑張りましょう」
「はい。絶対にもっと仕事を貰えるようになります」
笑みを浮かべたマネージャーの後ろに着いて山荘に入った。
私は気づいてなかった。山荘の中に潜む影に、マネージャーの瞳の奥に宿る怒りに。
探偵と犯人と 堕なの。 @danano
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