第11話

「じゃあ私はそろそろ帰るね。パーティーには出たかったけどあんまり遅くなると街の人が心配しちゃうの。だから今日は帰るね!」

「あぁそうですか……」

「じゃあこれからよろしくねアンナちゃん! また来るから!」

「よろしくなんかしないわよ二度と来ないで!」

「えへへ。待っててね?」


キスの後、解放されたあたしは放心状態だったけど、なんとか自分を取り戻した。もういいわよ魔王らしいなんて誉め言葉は、ぐすん。

この子はあたしの言ったことを分かっているのかしら? 二度と来ないでって言ったのに……なんでそんなに笑顔でいられるのよ


「はっ早く行きなさいっ」

「はいはい。そうだっアンナちゃんっ」

「何? 暗くなったら危ないから早く……っ!?」

「……っ」


そっぽを向いていたあたしがセレスの方に振り返ると、その瞬間にセレスにキスされた。

あたし……またっ……!


「……ぇ? ……もう、なの?」

「はいおしまい。えへへ、ちょっと早すぎるけどお休みのキスだよ」

「……はっ!? いい加減しなさいよねこのバカー!」

「はいはーい。それじゃあまたね!」


両腕を振り上げて怒るあたしに、セレスは笑顔で窓から出て行った。垂れ下がったままのロープを掴んで器用に下に降りていく

窓から出ていくんだ。というツッコミをする気は起きなかった。


「言ってくれれば、城の門から出してあげるのに……」


あたしは長い溜息をついて、放置されっぱなしだった、床に散らばった窓ガラスの掃除を始めた。そりゃあ部下の誰かに命令すればやってくれるだろうけど、今は絶対セレスとの関係について聞かれるからやめておく。そんなの絶対嫌だから


「セレス……」


気を抜いた瞬間、あたしはあの子の名前をつぶやいていた。

忘れてしまえば良い。今日のは事故だ。そうすれば良い、明日からまたいつもの征服活動が始まる。


「……セレス」

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