第10話
「じゃあ最後の質問っ……」
「はいはい。何でもどうぞ」
「良いの?」
「ありえないくらい腹立つけど、あんたに抵抗しても無駄って気づいたし、もう好きにしなさいよ」
「うん分かった。じゃあ……」
セレスは目を閉じて少し黙ったあと、ゆっくりと目を開いて言った
「私の子、産んでもらえますか?」
「産まないわよ! 産むわけないでしょ!?」
魔王にそんなこといった奴初めてよ! ましてや女の魔王にそれ言う女なんかこの世界の歴史上多分この子が初めてよ!
「私は産みたいよ、アンナちゃんと私の赤ちゃん……」
「女同士いぃぃぃぃ!!! あと顔を赤らめてお腹の下さするな!!」
こいつ目がハートマークになってやがる!
セレスは私に筋力で優っていることを、さっきの押し合いで把握したのか、あたしの肩を掴んで引っ張ってきた ひぃ!
「私はちゃんと責任もって育てますよ? あなたの赤ちゃん」
「知らないわよそんなこと! というかそういうのは結婚してからするものじゃないの?」
「うん分かった……私、あなたを幸せにするねっ」
「してないしてないあたしはあんたにプロポーズなんかしてないぃぃぃぃ!!! 今のプロポーズなんかじゃないってのぉぉ!」
ぶんぶんと首を振るあたしに、セレスはぐいっと顔を近付けてきた。唇と唇が触れそうになる。うう、どうしてこんなことにぃ……
「私はあなたに恋……しちゃったんですよ?」
「あたしはしてないっ!」
「大好き、アンナちゃん……」
「話聞きなさいよぉ!」
セレスの熱い吐息があたしの顔にかかる。どうしようっ? いやどうしようもできない!
うっ……この子の良い香りがしてくる……
セレスは目を閉じて、そして。
「んっ……」
「んんっ……!?」
あたしのファーストキスはあっさりと奪われた。それも今日知り合ったばっかりの女。
女同士なのに、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
むしろ……
「……えへへ。しちゃった」
「ばか……ばかぁ……」
あたしは半泣きになってセレスを睨みつけた。もはや魔王の威厳なんてこれっぽっちも残っていない
あたし、もう完全にこの子に……いや、そんなことは!
「やっぱり、アンナちゃんかわいいっキスしたらもっと好きになっちゃったよ……」
「うぅ。ばか……」
なんでそんなに余裕なのよっ……こっちはもう何も考えられないってのに
「ほらアンナちゃん」
「え? ……きゃっ!?」
あたしはセレスに押されて、自分のベッドに座らされた。ベッドは自分が一番落ち着ける、いわばあたしのパーソナルスペースの最後の砦だ
その砦に魔の手が忍び寄ってくる。あたしは魔王なのに、魔王なのに侵略されちゃってる……!
「アンナちゃん」
「……何よっ……」
「大好きだよっ……んっ……」
あたしはベッドに座らされたまま、セレスが少しかがんで唇を当ててきた。
また、キスされちゃった。何よこれ、何も考えられない
セレスを遠ざけようと腕を掴むも、それ以降何もできない
何もできなくなったあたしは……目を閉じた
「……っ!」
「……!!」
キスの途中、一瞬だけ、舌を入れられた。あたしの口の中にセレスの舌が入ってきて、あたしの舌の先をちょっと撫でた
あたしは身体を跳ねて力を入れて硬直するも、セレスはあたしの頭を撫でてきた
するとあたしはまた、何もできなくなった
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