第9話

「それともう一つ質問!」

「何よっ」

「名前、教えて欲しいな?」

「え?」

「あなたの名前、私まだ聞いてないよ?」


セレスはあたしの顔を覗き込んで言った。ここまで拒絶しているのに、どうしてここまで食い下がってくるのかしら。

やっぱり、恋したから? 恋するとそうなるの?


「……アンナよ。あたしの名前はアンナ」

「アンナちゃん!」

「はい出てけー! あたしの城から出ていけぇー!」

「えー!? ひどいよー!」


目を輝かせて私の名前を呼んだセレスの肩を掴んで、ドアまで押していく。

それでもセレスは私の腕を振りほどいて、逆にあたしの肩を掴んで押してきた。

セレスの力にあっさりと負けてしまう

ううう……魔力だけじゃなくて筋力まで弱くなってるじゃないぃぃ!!

無力化ほどはいかないけどっ、これじゃ人間並みの筋力じゃない!


「そんなに照れなくてもいいじゃん! アンナって名前すごくかわいくて良いと思うよ! アンナちゃん!」

「やめなさいよその呼び方! あたしは魔王なんだからもっと敬意を払った呼び方にしてよ! アンナ様とか、マスターアンナとか!」

「んー……じゃあアンちゃん?」

「もっと軽くなってるじゃない!」

「あーちゃん?」

「縮めればイイってもんじゃないの! あー……他の奴に名前教えてこんなに早く後悔するってこと初めてよ……」


実際あたしのアンナという名前は本当の名前だ。魔王らしくないからあんまり好きじゃないからこんな状況じゃなきゃ断固名乗らないんだけどね。魔王って称号は便利だから大体の奴は魔王という称号であたしのことを呼んでくれるから、あたしはいつも本名を名乗らず魔王って名乗ってるの

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る