第8話
「私があなたの部屋まで来た方法なんだけどね? まず街のアイテムショップで大量のアイテムを買ったの! 最近になって強力なアイテムがたくさん街に出回るようになったから得しちゃった」
「ふーん……それで?」
「えへへ……ここからが肝心だよ?」
セレスは息を軽く吸って、続けた
「まず街の騎士団の詰め所にコッソリと忍び込んで魔物撃退用の大砲の中に入ったの、それで私自身を射出。それから空中で身体が軽くなるポーションを飲んだの、それから突風が発生するビンを開けて一気に城まで近付いたの」
「……え?」
「それから一時的に名匠が打った武器のように固くなるポーションをフォーク二本にかけたの。それを壁に差し込んでへばりついたの、そのままロープを上に投げてひっかけて壁をよじ登って……最後は思いっきりあなたの部屋の窓ガラスを蹴ったの」
「えええっ?」
「これであなたの部屋まで侵入できたってワケ! どうっどう? 勇者様みたいに強くなくても愛があれば魔王城への侵入なんてできちゃうの!」
「…………」
え? なに? そんなふざけた方法であたしの魔王城の守りを突破されたの?
ていうか自分自身を大砲の砲弾にするってどういうこと? 危ないじゃない……いやセレスの危険なんかどうでも良い……んだけどねっ!?
というかさっきあたしが紅茶を飲んでいた時に、外から聞こえてきた突風の音もガツンッガツンッって音も! 全部この子が出していた音だったわけ!?
「どうしたの? 部下の皆さんだけじゃなくて今度はあなたが固まっちゃった」
「し……しんっじられない! なんでそんな危険なことをっ! いやっ……なんでそんなふざけたことをするのよ!」
あたしの説教にセレスは頬を膨らませた。
「ひどーい! 恋する乙女の行動をふざけたなんて言わないでよ!」
「大砲に入って自分自身を射出なんて方法をそんな可愛らしい言葉で片づけるなっ!」
というか騎士団の詰め所に潜入したとも言ってたわね……この子ってば潜入癖でもあるのかしら……
セレスはむっとした顔をしつつも、追及を諦めたのかまた元の表情に戻った
あの、近いわよ……
「あっ! じゃあ私からも質問して良い?」
「好きにしなさいよどうせ嫌って言っても聞くんでしょ?」
「あっ……」
「何よ」
「今の言い方……長い期間好きな女の子に寄り添ったお嫁さんみたいでイイ……」
「やっぱ嫌。今言ったの取り消し、すぐに出ていけ」
「あーん、分かったから意地悪言わないでぇ」
ぷいっとそっぽを向いたあたしに、セレスは背中から抱き着いてきた
既に意地悪というレベルを超えたことをあたしはあんたにされたんだけどね……!
あたしは背中に抱き着いてきたセレスを振りほどくと、落ち着きなさいと言わんばかりにセレスの両肩にあたしの手を置いた
こら胸に手を当てるな頬を染めるなっ!
「それが……その今の話し方が本当のあなたなのね? 最初に会ったときの、我とか、そういう話し方は取り繕った話し方なのね?」
「取り繕ったって……ええそうよ! 今の話し方が本当のあたしの話し方よ! ……ふんっ、夢で見た魔王との違いに幻滅した?」
「ううん! そんなことない! むしろ……もっと好きになったよ」
「ふんっ。どうせ適当なこと言ってるんでしょ?」
「かわいいよ。本当のあなたはとってもかわいい。あなたのこと好きになって良かった」
「っっっっ!!! こっち見るなバカぁ!」
なんなのコイツ……! そんな良い顔であんなこと言われたら……!
だっ騙されるなあたし! あたしは魔王なんだから! あたしは……!
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