第31話「紫蓮とカゲトウ団の対決」
朝日が昇り朝食を食べた康家たち。カゲチヨとトウコは、早くやろう! と紫蓮を急かす。
それはカゲトウ団と紫蓮の対決。一鬼として戦うのではなく、人間の体で戦う紫蓮に勝てたら山丸童子と二人だけで戦うことを許すと言った彼。
条件は紫蓮に致命傷を負わせて一鬼の姿にさせたら二人の勝ち。逆にカゲチヨかトウコが片方でも戦闘不能になったら二人の負け。
紫蓮は知夜里から受けとっていた小鬼刀を使う。ここまでハンデを付けても勝てないようなら山丸童子に勝てるはずもない。少なくともこれがクリア出来なければ簡単に殺されるだろう。
紫蓮はカゲチヨとトウコと距離を置いて康家に開始の合図をしてもらった。志織はカゲチヨとトウコを応援している。彼らの話に同情したからだ。
山丸童子は昔、中鬼たちを従えて集落を管理していた。人の肉を運ばせてはたらふく食っていた山丸童子は、宴の席で中鬼に芸をさせる。
山丸童子のためだけの集落だった。人を襲うのも山丸童子のため。残飯を漁るカゲチヨとトウコは二人で挫けず生き抜こうと言い合った。
そして抜け出したのだ。山丸童子は放っておいたようだった。それからお腹が空きながら逃げ走るカゲチヨとトウコは堅爺とチヨ婆に拾われた。
誰かの手で山丸童子を殺せるならそれでもいいとカゲチヨは思っていた。だがトウコは必死だった。自分たちの手で復讐がしたい、そう願うトウコの圧に押し負けた。
死んでも構わないと言うトウコに、流石にそれはダメだと言ったカゲチヨは、どうしても山丸童子に勝てなかったら紫蓮に任せるという条件で、共に戦うことを約束する。
そして紫蓮にも条件を出されたトウコは張り切っていた。全力で臨めば勝てると思っていたから、康家の合図を待つ。
そして試合が始まった。カゲチヨではなくトウコを狙う。走ってくる紫蓮の足を氷で止める。紫蓮は小鬼刀の峰で氷を砕いた。その隙にカゲチヨが電撃を放つ。紫蓮は小鬼刀を地面に刺し受け流す。
トウコは紫蓮の周りに螺旋のような氷の道を作り出す。その道に飛び乗ったカゲチヨとトウコは滑りながら紫蓮に迫る。
待つ気もなくトウコの方へ斬りかかる紫蓮。紫蓮はトウコの心臓を斬ろうとして戸惑ってしまった。その隙をついてトウコは紫蓮に抱きついて氷漬けにしようとする。
振り払った紫蓮だったが氷から中々抜けられない。襲い来るカゲチヨの片腕を斬り飛ばした紫蓮は何とか氷を砕いて抜け出す。
カゲチヨの方を狙おうとする紫蓮。カゲチヨの腕はすぐには再生しない。トウコは巨大な氷柱でカゲチヨを援護する。
だが紫蓮は全ての氷柱を弾き飛ばし、カゲチヨに迫る。カゲチヨは雷のステップで退きながらトウコの傍まで来る。
トウコは全力で氷の柱を紫蓮の足元から出現させた。足を取られ空中に投げ出された紫蓮は、空中で体勢を整えて落下する。
下からカゲチヨが飛んできて心臓を狙う。紫蓮は空中で回りながらカゲチヨを斬ろうとした。それでもカゲチヨは退かなかった。
トウコの願いを叶えたい。カゲチヨの目に必死さを見た紫蓮は回転を止めて心臓を貫かれた。
地面に落ちて紫蓮は一鬼になった。カゲチヨは不安を感じながらも勝利条件を満たしたことを確認する。
構わないと言った一鬼に喜ぶトウコだったが、ただし、と言う。そこまでしたいなら本当の本当にギリギリになっても助けられると思うなよ? と言った。
もし紫蓮が本気ならここでリタイアしていた二人。心臓を斬れる場面があったにも関わらず紫蓮は斬らなかったのだから。
それは厳しい言葉だった。カゲチヨは迷うがトウコは頷いた。トウコがカゲチヨとの条件を満たしていないと言ったカゲチヨに、トウコは危ないと感じたら逃げたらいいと言った。
ため息をついた一鬼は、堅爺の鉄壁の外に出て鬼を食う。流石にそろそろ魂鬼の肉の満腹感も減ってきていた。
カゲチヨとトウコもお腹が空いたため食事にする。鬼の集落を襲いに行き鬼を食べた。
カゲチヨの腕も再生したので、準備を整える。一鬼は紫蓮に戻って改めて尋ねる。
本当に勝てると思っているのか? と。手加減のような形になってしまった紫蓮は、心臓を斬ってでも止めなくてはいけなかったのではないかと後悔した。
大丈夫だよ笑うトウコ。絶対トウコを守ると誓うカゲチヨ。後は野となれ山となれか、と呟いた紫蓮に、康家と美月と香苗は笑った。絶対そんな風に思っていないと感じた三人は、紫蓮に言う。
本当に鬼らしくない人だと言った康家に、紫蓮らしいわよねと言った美月。そして、だからこそ信頼できると言った香苗は、トウコの元に駆け寄るニャーコの姿を見て微笑んだ。
カゲトウ団もまた、彼ららしく生きている。頼もしい彼らならきっと勝てるのではないだろうかと香苗は思った。
紫蓮たちは山丸童子のいる人牧場を目指す。康家もこれは放っておけない問題としてずっと頭の隅にあったため都合がいい。
人牧場は文字通り人を飼う牧場だ。鬼たちは人を飼育して丸々肥やさせた肉を、食べたり出荷したりするのだ。
人の命を肉としか見ない鬼たち。一鬼が神鬼から聞いた話では、苦痛を感じれば感じるほど人の肉は美味しくなると言う。
まるで家畜とは大違いだ。牛や豚などはストレスが少ない方が美味しくなると言われている。逆に人の肉はストレスが強い方が鬼にとっては美味なのだ。
人牧場には人のためのご飯の材料が多く置かれている。それは人のための飼料として使われる。人を太らせるために吐くまで無理矢理食べさせて、ストレスを感じさせるために鞭で叩きまくるのだ。
紫蓮は一度だけ人牧場に来たことがあった。神鬼に連れられて来たそこで、人の肉は美味いぞ? と神鬼に言われた顔面を殴ろうとした一鬼は逆に殴り返されたものだ。
そして管理する鬼を殺してまわり食べて、人間たちを逃がそうとした。だがその時人間たちは逃げなかった。自由になってもどこに逃げたらいいのかわからなかったのだ。
どうせ殺されるならと諦めていた人牧場の人間たち。逃げることなく項垂れていた彼らに哀れんだあの頃。
紫蓮は昔を思い出しながら、人牧場の人間は助けても逃げようとしないぞ? と康家に言う。康家はそもそも人牧場なんてものが必要ない事を言って、助けた後にちゃんと教育を施せば、人牧場で飼育されてる人間もきちんと人として生きられるはずと言う。
そういうものかと考えながら紫蓮は道案内する。場所は覚えている、山に囲まれた場所だ。鬼たちが作ったその広大な牧場は鬼の集落に囲まれている。
紫蓮たちは三手に別れて鬼の集落を潰した。カゲチヨとトウコは前哨戦だと張り切って向かって行った。知夜里はニャーコを頭に乗せて紫蓮と共に。康家と美月と香苗は大鬼刀で暴れ回る。だが山丸童子は出てこない。
全員で一度集まり人牧場に攻め入る。人牧場の人間たちは騒ぎに逃げ惑った。やがて奥から中鬼たちが出てくる。
中鬼たちは不満げだった。こんな事態には山丸童子が出て回るべきなのだ。それなのに指示しただけで自分は動かない山丸童子に中鬼たちは
とはいえ逆らえば山丸童子に殺される。中鬼たちは仕方なく紫蓮たちを襲う。そんなやる気のない中鬼たちが紫蓮たちに敵うはずがないのだが。
紫蓮はカゲチヨとトウコに力を温存しておけと言う。トウコは見せつけてやりたいと言ったが、手の内を晒すことは敗北に繋がると言った紫蓮に従った。
紫蓮は五匹いる中鬼の内、紫蓮、康家、美月、香苗、知夜里で一匹ずつ請け負うと言った。知夜里は小鬼刀だ、危険ではないのかと問う康家たちだったが、知夜里はやる気満々だった。
やがて連携で最後の一匹となった時に知夜里に任せた紫蓮は、知夜里の成長具合を見る。
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