第29話「カゲトウ団再集結」

 まずトウコと堅爺に会った紫蓮たちはトウコに話を聞こうとする。トウコはまずカゲチヨと相談したいと言って口を閉ざした。

 強くなれたのかという問いには堅爺が答える。中鬼を倒して食べた肉は確実にトウコのエネルギーになっていると。

 ニャーコは知夜里の頭から降りてトウコに駆け寄っていく。トウコは飛び込んでくるニャーコの手を掴みジャイアントスイングした。

 相変わらずだと言う紫蓮にトウコは胸を張って地面を凍らせスケートのように滑る。氷は音を立てて広がっていきまるで森の一角のような氷の情景が広がった。

 拍手する知夜里は持っていた小鬼刀を振る。氷の木はスパッと切れて崩れ落ちる。

 驚いたトウコは、知夜里も強くなったんだねと語りかけた。知夜里は六鬼を食べたからと言う。口をあんぐり開けて呆けたトウコは、紫蓮にズルいと言った。

 ニャーコも食べたよと言う知夜里の話を聞いて、お前もか! とニャーコと戯れ回るトウコ。

 やがてカゲチヨとチヨ婆が到着した。修行はバッチリだと言うチヨ婆。

 トウコはカゲチヨにある話をする。それは四王、山丸童子の話。ここから西にずっと進んだ先に山丸童子の集落があると言う。

 その昔トウコとカゲチヨは山丸童子にこき使われていた。いつか復讐しようねと鬼食い鬼になってから誓い合った二人は今なら勝てるのではないかと言い合う。


 そんな二人を見ながら本当に鬼と旅していることに時代の流れを感じた志織。まだまだ体はなまっているから戦闘には参加しないが、他の部分で康家を支えていきたいと願う彼女は、トウコとカゲチヨに話しかけた。

 志織は自己紹介をして相談に乗りたいと言った。三人が話している間、ニャーコは知夜里のところに戻り頭に乗る。紫蓮は康家と今後の事に関して話し合う。

 堅爺はチヨ婆に何も問題なかったかを熱心に聞いていた。心配性の堅爺の肩を強く叩くチヨ婆。

 実際カゲチヨとチヨ婆の旅は大変だった。大鬼を避けながら修行するカゲチヨは何度か負けた。死にはしなかったし、チヨ婆が助けたが……チヨ婆は回復したらもう一度戦うように言ったのだ。何度も敗北を繰り返し乗り越えていくカゲチヨは段違いに強くなった。

 中鬼との戦いで修行を積んだカゲチヨに進化の兆しを見たチヨ婆はほとんどの鬼の肉をカゲチヨに食べさせた。

 一方トウコは自力で一回も中鬼を倒せなかったらしい。甘やかす堅爺にチヨ婆は呆れた。だがトウコでは能力を高めることに集中する方が良いという判断は確かに間違っていないとチヨ婆も考えた。

 美月と香苗は知夜里と話していた。実は志織の元に来てから今まで一回も食事をしていない紫蓮と知夜里とニャーコ。お腹は空いていないのかと聞く。

 おなかいっぱいの状態が続いていると言った知夜里に余程、魂鬼の肉のエネルギーはあったのかと感心する。


 やがてトウコとカゲチヨの内緒話が終わった。志織も聞いていたが、本当に実現できるのか分からないと感じていた。

 カゲチヨが紫蓮に言った。トウコが四王、山丸童子を倒したいと言っていることを言う。紫蓮は、いいだろうと言ってどこにいるのか分かっているのかを聞いた。場所は堅爺も覚えている。

 一度全員で場所を確認する事を決めた紫蓮は、ニャーコの能力に頼ろうとした。だが志織が、リハビリのために歩いて行ってはいけないか? と尋ねる。紫蓮としても別に急いでいない。トウコやカゲチヨからも話を聞くべきだ。

 トウコとカゲチヨがそれでもいいならと紫蓮は言う。トウコとカゲチヨは頷いた。『鬼殺街』からずっと西に歩いていく。だが歩くペースが全然違う。カゲチヨとトウコとチヨ婆と堅爺と知夜里とニャーコは鬼であるが故か体力が段違いである。

 これは走るのも覚悟しないといけないと思った志織は、準備運動をする。無理はしなくていいよと言う康家。出来るところまで頑張ると言った志織は紫蓮と康家と美月と香苗と共に走る。

 既にトウコと堅爺によって潰された鬼の集落を通る。やはりまた鬼は集まっているが小鬼ばかりだ。わざわざ今、足を止める必要がない。だが志織に休憩が必要だった。

 仕方なくカゲチヨが鬼を殺して回る間、志織は休憩する。謝る志織に大丈夫だよと言うトウコ。トウコはカゲチヨの援護をしてコンビネーションの確認をしていた。

 紫蓮は少し違和感を感じたので尋ねようとする。それに対して志織が口を挟んだ。

 二人が自分から相談するまで待ってあげて欲しいと。紫蓮はそれを聞いてため息をついて、空を見上げた。

 再び走る紫蓮たち。休憩を挟みながら志織は話す。中鬼が大分減ったように見えると。流石に大鬼のいる場所の中鬼は倒せなかったがカゲチヨやトウコたちは中鬼を減らして回ったのだ。これは大きな進歩だった。


 やがて目的の鬼の集落に着く。だが山丸童子の姿がない。トウコは偵察で何度も確認したと言った。確かにこの場所だったのだ。実際中鬼も何人かいる。

 カゲチヨはトウコと共に中鬼の前に立つ。山丸童子はどこへ行った? と単刀直入に聞いたカゲチヨに、山丸童子様なら人牧場の管理を任されたと言った中鬼。

 用はそれだけか? と問う中鬼の足を凍らせたトウコに怒る中鬼だったが氷から抜け出せない。カゲチヨが中鬼の首を切り、トウコが追撃に大きな氷柱つららで頭を潰した。

 他の中鬼が集まってくる。紫蓮は手助けしようとするが、チヨ婆に止められる。

 ニャーコは真剣な目で二人の勇姿を見ていた。中鬼たちの足を完全に捕らえる氷撃ひょうげきのトウコと、凄まじい勢いの雷の手刀で中鬼たちの首を切る雷撃らいげきのカゲチヨ、ここに復活である。

 カゲチヨとトウコは中鬼を倒してから逃げ惑う小鬼を無視して、ニャーコを手招きで呼んだ。

 ニャーコは鳴いた後、知夜里の頭から飛び降りて二人の元に駆け寄る。そしてミサイルを飛ばして二人の近くの地面に落とした。爆発と共に飛び上がるニャーコ。カゲチヨとトウコはポーズを決める。


 カゲトウ団の再結成がここに成された。カゲチヨはリーダーとして告げる。これから山丸童子と戦うことになる、ニャーコは見ていて欲しいと。カゲチヨとトウコのみ・・・・・・・・・・で山丸童子と戦うと言ったのだ。

 紫蓮は流石に聞き捨てならなかった。カゲチヨとトウコは所詮はまだ中鬼だ。力を付けたと言っても大鬼には敵わないだろうと思っていた。

 二人だけで戦うのには反対する紫蓮。死にたいのか? と問う紫蓮は昔話をする。

 それは一鬼の頃の記憶。四王である山丸童子に逆らった中鬼が簡単に潰された時、大鬼たちは爆笑していた。

 だがチヨ婆はやるだけやらせてやりたいと言った。逆に堅爺は流石に二人だけで四王と戦わせるのは危険だと彼も反対する。

 相手の能力はわかっていると言ったカゲチヨは、勝算があるように見える。だが紫蓮はとにかく全員で向かうことを言う。それには二人も了承した。

 紫蓮は準備を進める中で、どうにかして二人を止めようと考えていた。勿論応援はしたい。これまでの仲だ。だがだからこそ無謀な挑戦は止めさせなければいけないと思っていた。

 人牧場は魔境と呼ばれる南の橋を渡った先にある。現在橋は壊されていて渡れない。ニャーコのミサイルに乗った紫蓮たちは、海を越えて魔境へと向かう。

 なるべく海辺の近くに飛ばしてもらった紫蓮たちは、降り立った後すぐに鬼の襲撃に対応して、小鬼たちを切り裂いた。

 ここの鬼たちは血気盛んだ。人の住める環境にないからこそ、人牧場の肉で生活している。

 人牧場に一番近い場所だからこそ食事に困らない鬼たちだが、彼らは人間がやってきたら一番最初に肉にしてやると思っているのだ。

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