第25話「魂鬼の捜索」

 協力者は港町に着いて康家と会った。会った途端に康家を殴り飛ばした。

 その人物に美月は驚いたが、香苗と紫蓮はわからない。そもそも三番隊員になった時、三番隊隊長の康家や副隊長の美月としか会わなかったから当然だ。

 その人物は一番隊隊長である達伊たつい宗政むねまさ。一番隊は、要人警護の任につく重要人物たちの集まり。そのトップと言えばどれだけ大変な任務につくか想像に容易い。当然任務から外れるとなれば大騒ぎである。

 その処理を一番隊副隊長に任せてきた宗政は、康家をしばきにしばいた。どうしても協力をお願いしたいと頼まれたからだ。

 自分の任務がどれだけ重要かを理解している宗政は、いくら康家の頼みと言えど断ろうかと思った程だ。

 だが魂鬼を殺せるかもしれない、それを聞いて上の者に頭を下げ彼はやってきた。

 生憎というか、月鬼の刀はまだ出来上がっていなかった。だからこそ宗政の力が役に立つのか疑問に思う彼は、勝算はあるのかと聞く。

 鬼刀『紫鬼』と鬼刀『黒天』と鬼刀『羅烈』がこちらにはある。これらの大鬼刀があれば魂鬼にも勝てる、そう意気込む康家。

 そう易々とはいかないだろうと思った宗政だったから、美月から渡された『羅烈』を返した。

 宗政の腕があれば『羅烈』を扱えば敵はないと思った美月だったが受け取らない宗政。

 康家はそれでもいいと頷いた。


 占鬼の言った通りにしようと言った康家は皆を連れて魂鬼の第一のアジトに向かう。地図を見ながら、この辺りかと呟いた康家だったが、それらしきモノがわからない。

 建物のはいっぱいあったからだ。どれがそれかはわからないから片っ端から調べるしかない。

 ふとニャーコを頼れという占鬼の言葉を思い出す。康家はニャーコを見た。ニャーコはある建物をじっと見ていた。そしてニャーコは康家を見て鳴いた。

 その建物を調べることにした康家たち。その建物は丘の上にあった。ドアを開けると風が吹き抜ける。奥から声が聞こえた気がした。

 まるで霊のような声にビビる美月と香苗。ニャーコは走り出した。追う知夜里。紫蓮も後を追ったので康家と宗政も走る。置いてかれるのも困る美月と香苗はついて行く。

 その部屋に入ると魂が踊っていた。美月と香苗は悲鳴をあげる。康家と宗政は魂に触れようとした。触れられず通り抜ける。それでもダンスを止めない魂たちは、泣いていた。

 助けて、助けて。そう言ってるように見えた。言葉は聞き取れなかったが人の形をした女性たちの口元から読み取れた。

 康家は拳を握り締める。宗政は康家の肩を叩く。彼も怒りを感じているようだったがグッと堪えていた。


 第一アジトを出た紫蓮たちは第二アジトに向かう。途中鬼の集落があったので中鬼含めて討伐する。

 鬼の集落では知夜里の修行にさせていた紫蓮だったが、宗政の実力も見たいと言った。

 宗政は中鬼を相手に中鬼刀で相手する。その剣さばきを見て、『烈火流剣術れっかりゅうけんじゅつ』だと見極めた紫蓮は、康家の『蒼突流剣術』と相性がいいなと感じていた。

 知夜里は宗政の戦い方をよく見ていた。そして動きを真似ていた。

 鬼の集落というものは昔、人々が住んだ街が鬼を殺すために爆撃を受けたため壊れ、人が住めなくなったところに鬼が住むようになったのだ。

 だから所々、人の住んでいた街並みの跡がある。

 そんな景色を見て思い出す昔の景色に囚われながら紫蓮は知夜里に剣術を教えていた。

 鬼に剣を教える姿に笑った宗政に、紫蓮自体も鬼である事を忘れるなと忠告する。

 鬼の集落を攻略して第二アジトに向かう紫蓮たちは、第二アジトを探すのにもニャーコの勘を頼る。

 大まかな場所に着いた康家はニャーコを見る。ニャーコはキョロキョロと辺りを見回し、ある建物のところを見つめるとそのままじっと見ている。

 第二のアジトに着くとやはり魂たちが囚われていた。囚われた魂の数も、広い家屋の分多かった。

 ここにも魂鬼はいない。わかっていることだったが歯がゆかった。囚われた魂は救われない、魂鬼を討伐するまでは。

 第二のアジトを出て第三のアジトを目指す。そこで香苗が口を開いた。魂鬼は魂を奪うというのだから何か策が必要なのではないか? と。何も問題ないという紫蓮に美月は怒る。

 知夜里は魂が奪われる前に『紫鬼』で斬ってしまえばいいという。

 そうもいかないだろうと呆れる宗政だったが、どうやら紫蓮には策があるらしかった。知夜里は首を傾げる。

 鬼の集落を潰していく。こうしていくと『黒天』と『羅烈』はとんでもない刀だ。特に『羅烈』は、羅奉の火と水と風と雷を備えた途轍もない鬼刀だ。

 殆どの中鬼の能力を上回り簡単に蹴散らしてしまう。これで羅奉は五王だというのだから驚くところだ。

 この調子でいけば鬼を完全に駆逐するのも夢ではない、そう思ってしまう使用者の美月。

 香苗は月鬼の鬼刀が手に入ればどれだけの戦力になるだろうと夢見る。

 宗政もこれ程の戦力が入ったのは大きいと褒めた。紫蓮が味方になってから大きなうねりのように風が人間側に吹いている。

 第三のアジトでもニャーコは活躍した。囚われた魂を見つけ紫蓮たちを導く。宗政はここまで来てこれになんの意味があるのだと問う。

 全ては占鬼の導き。それは鬼の導きだろう? と指摘する宗政に康家はこれしか方法がないと言う。呆れた宗政だったが、仕方なくついてくる。

 任務を放り出してまで来たのだ。このままさよならと帰るわけにもいかない。第四のアジトにはニャーコのミサイルで向かう。

 ミサイルにしがみつく康家のみっともなさに怒りのボルテージを上げつつ宗政は黙ってついてくる。

 正直に言うと康家自身も不安ではあった。それでもすがり付くように占鬼の未来予知を信じるしかなかった。

 第四のアジトで変化があった。まるでそこで食事をしたかのような痕跡があったのだ。

 魂鬼も人食い鬼だ。人を食って生きている。恐らく傍の港町で人を襲ったに違いない。

 康家は急いだ。焦るなという紫蓮の言葉も聞かず走った。第五のアジトに着く。そこに痕跡はなかったが、あとは残す一つのみ。行こうと言う彼に紫蓮は肩を掴み、落ち着けと言った。そしてある事を言う。それは試練。

 焦っていては決してこなせない。美月と香苗もそれを理解しているからこそ、ここで食事を摂ろうと言った。

 魂が踊る中、人としての食事を摂る。絶対に助けてみせると誓いながら、康家はやる気に燃えていた。

 しっかり食事を摂って休憩をした康家たちは出発する。占鬼に言われた通りに進んだ先には崩れた繁華街があった。

 康家は知夜里からニャーコを取り上げ抱きかかえて頼む。道を示してくれと。ニャーコは康家の腕から飛び降りて、進んでいく。

 そこは地下街だった。今は人の気配がない。階段を降りた先に進んでいくと小鬼がいる。斬り捨てながら進んでいく。第六のアジトは巨大な地下迷路だった。

 康家は固まって行動するように指示するが、紫蓮は分かれて探した方が効率がいいと言う。意見が食い違い喧嘩する中、ニャーコは鳴きながら進んでいく。

 康家はニャーコについて行けば問題ないと言う。紫蓮もそれに文句は言わなかった。やがてある建物にニャーコは入っていく。

 入口に入ると囚われた魂が踊っていた。ショーケースに魂が並ぶ。どれもこれもが女性の魂だった。

 奥に行くとある魂と踊る鬼がいた。六鬼の魂鬼の姿を見た康家は、やっと出逢えた憎き鬼に向けて殺気を放つ。

 魂鬼は踊っていた。宗政は魂鬼と踊るその女性の魂に見覚えがあり、ようやくついてきた甲斐があったと刀に手を添えた。

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