第23話「ニャーコを連れた紫蓮たちの旅」

 相変わらず康家はミサイルにしがみついて目を強く瞑っている。着地の爆発で頭がアフロになる。

 他のメンバーは着弾前に飛び降りて着地する。南の島にたどり着いた。とはいえここはまだ日本。

 一番大きな島に着いた紫蓮たちは、集まってきた鬼を斬りながら基地へ向かう。

 今は鬼狩り隊の基地となっているその場所にもセンサーがある。紫蓮は自分と知夜里とニャーコの鬼の能力の封印を一鬼になってから行い基地へと入る。

 特別隊として二番隊隊員に迎えられた紫蓮たちは、まず食事を取った。パイナップルやゴーヤチャンプルーなどが出てくる。

 南の島の料理に目を輝かせた知夜里は美味しそうに食べていた。

 今の状況を康家は聞く。大鬼は一人いるが攻めてくる様子もなく、安定しているという。

 中鬼の多くは本州に集っていったという噂は本当だったようだ。この島には中鬼がいないらしい。

 康家は大鬼を狩るかどうかを紫蓮に尋ねる。紫蓮は首を横に振る。その大鬼は絶食者だと言う。人も鬼も食べない特殊な鬼。こちらから仕掛けなければ何も問題はない。

 だがその大鬼の元には行く必要があるらしい。女性の鬼のようで、彼女に会うために今どこにいるか把握してるか尋ねる紫蓮。

 二番隊隊員は、彼女がどこにいるかまでは把握していないという。ならば島々を旅するしかない。

 地図を貰って基地を出た紫蓮たちは、知夜里とニャーコの封印を解き鬼を狩る。


 知夜里の修行を見ながら、ニャーコを連れて旅する紫蓮たち。美月と香苗は自身の流派の技も知夜里に教えようとする。だがその必要はないと言う紫蓮は『神代流剣術』について説明する。

 その昔存在した『神代流剣術』は、他の流派の技を吸収して一大流派となった。全ての流派の技を習得して成るその剣術は最高峰であると称される。

 いくら技を沢山覚えても、その場に応じた技を繰り出せなければ意味がない。『神代流剣術』を扱える者は極小数だった。

 師範である紫蓮の父は祖父から受け継いだこの『神代流剣術』が廃れつつあったことに憂いていたという。

 だが紫蓮は完璧にマスターして師範代となった。だが『神代流剣術』は紫蓮が鬼になってしまった事で歴史から名を消した。

 他の流派も無くなってしまったモノが多くある。それらの技も紫蓮はちゃんと記憶している。

 ちなみに流派によって呼び名が違うだけで同じような技もある。そういう場合有名な方の技名を使ってるとの事。

 全てを熟知した『神代流剣術』の技を覚えれば、自然と他の流派の技も覚えられる。

 知夜里は小鬼との実戦で技をモノにしていく。そうして旅しながら大鬼を探した。

 紫蓮は昔その大鬼に言われたことを思い出す。思いのままに旅して最後の島で洞窟に来てと言っていたと。

 康家は洞窟のある島を調べようとするが紫蓮が止める。言われた通りにしなければ出逢えないだろうと言った紫蓮は、船を借りて島々を行き来する。

 海にも鬼はいる。海外からこちらへ来る鬼もいるのだ。

 現在の船は最新のもので簡単には鬼に壊されないが注意が必要だ。いくつかの島を巡っていた時、洞窟のある島にも着く。

 紫蓮たちは念の為捜索するが見つからない。小鬼が住処にしていたので斬り殺す。

 食事を取りながら進む。紫蓮も時々鬼に戻って鬼を食う。康家と美月と香苗は海で魚を採って食べた。鬼魚もいるのでそれはニャーコが食べる。

 やがていくつもの島を調査し回った紫蓮たちは何処にもいない大鬼を探す。困った時は太陽の昇る方角を見なさいと言う教えを、今更思い出した紫蓮は康家に言葉責めにされる。

 そしてある島を見つけた。その島は地図にない島。そこが大鬼の住処だった。


 二帝、占鬼せんきという大鬼が、無人島の洞窟に住んでいた。

 昔ここに来たことがないのか? と康家に問われた紫蓮は、昔は占鬼も神鬼と一緒に行動していたと言った。占いにより未来を読む占鬼。

 さっそく美月と香苗が食いついた。そういうところは女子だなぁと感じた康家は、未来予知という言葉である事を思い出していた。

 美月と香苗の占い結果は、お互いに同じ人を好きになって奪い合う仲になるだろうということだった。ただ強引に奪い合うのではなくて、譲り合い共に好きな人を支え合うだろうという結果が出た。

 次に知夜里とニャーコを占う。ニャーコは既に運命を脱したと占鬼は言った。あの月鬼戦で死期を免れたニャーコは、永く生きるだろうという占鬼に、皆は驚いた。

 あの場にいなかった占鬼があの光景を知っている。それだけで信憑性が上がる。美月と香苗は話し半分で楽しんでいたのを、真剣な眼差しになり占鬼の話をもっと聞こうとする。

 知夜里はこのまま剣術の修行をしていれば紫蓮に追いつくことが出来ると言われた。やったー! とポーズを取った知夜里の頭を撫でる紫蓮。

 そして紫蓮には最悪の事態が訪れたら、プライドを捨てて鬼として戦えと言う占鬼。

 理由を尋ねる紫蓮に占鬼は首を横に振る。未来を変えるわけにはいかないと言った占鬼は、ただその時が来たら必ず選択しろと話した。


 何故康家が順番を飛ばされたのか、康家は真剣な面持ちで占鬼に自分の未来も占ってくれないかと尋ねた。

 占鬼は悲しそうな顔をしている。康家には大いなる試練が待ち受けてると占鬼は言った。

 協力者はいるがその試練は康家が乗り越えなければいけない試練だと話す占鬼。

 占鬼は紫蓮に、ここに来た目的はそれ・・だろう? と尋ねニヤリと笑った。

 何でもお見通しな占鬼に、はどこにいる? と紫蓮は聞いた。

 まぁ慌てるなと言う占鬼だったが察した康家は詰め寄る。やはり占鬼は知っていると感じた康家は、頭を下げて嘆願する。

 頭を上げて欲しいと言った占鬼は康家の未来を教える。その試練はとても難しいもの。何故なら彼は協力する気がないから、と占鬼は言った。

 それを聞いた康家は、あまりの事に呆気に取られて口をポカンと開けた。そして紫蓮に掴みかかる。約束を果たすと言っただろう! と。

 落ち着けと言って、襟首を掴む康家を離し、誤解を生む言い方をするなと紫蓮は占鬼に言う。クスクス笑う占鬼にはこんなことすら読んだ未来の内のよう。

 占鬼は全面的に協力するつもりが紫蓮にはないだけで、今もこうして協力してくれているだろう? と笑う。

 占鬼は話す。こうしてここで待っていたのにも意味があるのだと。紫蓮たちがここに来るのを知っていたからこそ、彼女はここで待っていたのだ。

 まぁ過去に未来を見ていて一鬼である彼に助言をしていたのも大きいが。

 未来予知は外れることもあるのかと問う美月。占鬼の未来予知はほとんどの場合当たるが、外れることもあると言う。

 それは予知を聞いたものが自分の意志で未来を変えてしまおうと道を進んだ場合。

 占鬼にとって最初に未来予知が外れたのは、神鬼が死んだ時だと言う。

 あの日三鬼は死ぬはずではなかった。彼女に忠告してしまったのだ。愛する人の死を受け入れなければならないと。三鬼はそれを聞いたせいで、受け入れられず一鬼に立ち向かい死んだ。

 本来なら彼女は神鬼の死を引き摺り落ち込み、二鬼と共に寄り添うはずだった。

 このせいで未来は若干変わったと言った占鬼。あなたたちは忠告をちゃんと聞くようにと言ったのだった。


 康家は息を吐いて落ち着いた後、康家の敵はどこにいるのかを尋ねる。そして占鬼は、その話をするためには皆に康家と紫蓮との約束の話をしなければならないと言った。

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