第14話「女性が行方不明になる都市」
特別隊として活動する事になった紫蓮たちは、本部から調査の命令を受ける。
ある都市で女性たちが行方不明になり帰ってこないという事案が発生していた。本部は四番隊の調査部隊を送ったが、行方不明者が後を絶たない。
紫蓮たちはヘリコプターをチャーターして、その都市に向かう。操縦は多才な康家が行う。
都市に入る前にヘリを森に隠し、徒歩で向かった。調査を開始した紫蓮たちは都市の中に入る。そこである事を考えた紫蓮が康家に進言する。
康家は紫蓮の言う通りにセンサーである結界を調べる。すると結界内に入ってくる鬼に対しては鳴るようになっていたが、既に中にいる鬼に対しては鳴らないように設定されていたようだった。
康家が機械に詳しいため、その経験で分かったこと。恐らく中に鬼がいると考えて準備を固める。
ある程度調べて回ると、フードを被ったある女が女性に声をかけているのがわかった。
操作系の能力の鬼だと予想した紫蓮は、一度鬼の姿になり美月と香苗に呪いをかける。それは一鬼以外の能力にかからない呪い。
ついでに康家にも呪いをかけたが、今回の潜入には美月と香苗が鍵だ。フードを被った女に美月と香苗が接触して、操られた振りをしてついて行く。
ある住宅地に入っていく女と二人を追いかけた紫蓮と康家だったが、ここでカメラの存在に気づき合図を待つ。
ある場所で衣服を脱ぐように言われた美月と香苗は、通信機も捨てさせられ丸腰になってしまいそのまま地下へと向かわされる。階段を降りた先に鉄の扉があり、それを開いた場所では太った男が待っていた。
男はフードの女に扉を閉めさせ、男の後ろに回らせる。男は裸の美月と香苗の体を舐めまわすように見た後、ペタペタと美月の胸を触った。
男からしたら感触を確かめるための行動であったが、思わず声が出た美月。
男は訝しげにフードの女を見る。女は首を横に振った。
洗脳が効いていなかった事に気づかれた二人。美月は謝罪したが、香苗もこれは仕方ないと励ます。
二人は血を飲み腹を鞘に透けて持ち出せる特殊な鬼刀『
男は
美月と香苗は『子刀』で戦う。それは刀と言うよりナイフに近かったが、歌操は身体能力が低かったため、なんとか攻撃を防げた。
だが奥にいたもう一人の知夜里という名の小鬼が鬼刀を持って襲ってきた。彼女は小鬼であったがために身体能力しか秀でたところがなかったし、剣の腕もめちゃくちゃだったが、それでもナイフのような鬼刀『子刀』では防ぐのが難しかった。
美月と香苗は地下から脱出しようとする。『子刀』には発信機が付いており、発動と共に居場所を知らせる。紫蓮と康家に場所が伝わってるはずなのだ。
逃げようとした美月と香苗だが扉が開かない。知夜里の攻撃を美月が防ぎ、歌操の攻撃を香苗が防ぎながら、救援を待ち必死に戦った。
康家は『子刀』の反応を察知して紫蓮と共にその場所に向かう。地下への階段を見つけた二人は降りていき鉄の扉の前に立つ。紫蓮が扉を鬼刀『紫鬼』で斬り裂いて中に入った。
救援の到着に安堵した美月と香苗。香苗は自分の裸を紫蓮に見られたことに恥ずかしがる。
そんな事どうでもいいと言い放った紫蓮に顔を真っ赤にして怒った香苗は、美月と共に退がる。康家が持ってきた二人が脱いだ服に着替えた。
紫蓮は歌操を易々と殺し、知夜里も殺そうとした。だが必死に我流の剣術を使う知夜里。やがて刀を弾き壁に追い込む紫蓮。
刀を掲げ知夜里の脳を真っ二つにしようとした紫蓮だったが手を止めた。知夜里は涙を流していた。
何故涙を流していたかはわからない。殺される恐怖からだったのか、それとも生きたいと願う心からの涙だったのか。
何にせよ紫蓮は知夜里に鬼としての希望を持つ。今まで鬼は涙を流せないものだと思っていたから。残酷な鬼が普通だと思っていたからだ。涙腺なんてものはないと思っていた。
紫蓮は知夜里に、俺についてくるなら生かしてやると言った。
知夜里は頷き紫蓮に従った。紫蓮は知夜里を生かす事を康家に許可して貰えないか尋ねる。
美月と香苗は反対したが涙を流す鬼を見たのは康家も初めてだった。康家は美月と香苗を説得して知夜里を特別隊隊員という形で保護することを決めた。
最後に隅で震える男を見た。首謀者である男の
とある会社の社長であり、人の社会を支える立場でありながら快楽に溺れた落園。女性を自由にさせてもらう代わりに歌操を匿い、知夜里は趣味で刀を覚えさせたと言う。
鬼になりたかったと涙ながら話す落園の願いを聞いた紫蓮は、胸に『紫鬼』を刺し一鬼の姿に戻る。一鬼は落園の頭を掴んで彼を鬼に変える。鬼になれたことを喜んだ落園だったが即座に一鬼に首を切られ絶命する。
そして知夜里に、これからは人ではなく鬼を食うようにと言う。
知夜里に試しに落園の肉を食べてみるように紫蓮は言う。
落園の事をパパと呼ぶように言われていた彼女は遠慮なく鬼となった落園の肉を食う。それは彼女にとって美味ではなかったが、腹はふくれた。
知夜里は話す。彼女は小鬼では珍しく人間の時の記憶がある。
人を食べるのが苦手だったが、好き嫌いをしてはいけないという人間の頃の父の言葉を守り、嫌々食べていた。
彼女が悪い鬼ではないことを確認した後、紫蓮は知夜里を弟子として育てることにする。
一鬼としての紫蓮を知った知夜里は、紫蓮の事を師匠と呼び、剣を学ぶ。鬼を食い生きる事となるが、彼女にとっては喜びしかなかった。
やはり恐れていたことが起こった。香苗と美月は顔を見合せた。紫蓮は……否、一鬼は能力を使うことを躊躇しない。必要ならば能力を使う。
それは必要ならばという条件下であるとはいえ、神鬼の能力は受け継がれている。
人の世の脅威が去ったわけではないと痛感した。せめて紫蓮との仲を育み、人に敵対させないこと。これはかなり重要になってくるだろう。
一鬼が紫蓮に戻り、地下から出る時康家にもこっそり話した。
康家はそんなことを気にしていてはいけないと言う。先の未来を予想することは大切だ。だが想像に囚われていては前に進めない。
今は紫蓮が味方である事を喜び、共に研鑽する事が大切だと康家は言った。
香苗は楽観的すぎないかと思った。だが美月が妙に納得していることもあり、そういうモノかと考える。
紫蓮は現段階では殺せない。一鬼を殺すことは不可能だろう。『紫鬼』を奪い戦えば或いは……? だが一鬼のストックしている能力がどれだけあるかはわからない。
正直神鬼よりも厄介だと思った香苗は、振り返り紫蓮の顔を見る。知夜里に剣の話をしていた紫蓮は香苗の視線に気づき、そちらを向く。
香苗の見せる顔に何かを感じたのか、紫蓮はフッと笑って微笑んだ。その笑顔に人間らしさを感じた香苗は、少しの間目を瞑り前を向く。
紫蓮が敵になる未来はもしかするとあるかもしれない。だが今は考えられない。ならば少しでも大鬼を殺し続ける紫蓮の傍で、彼の支援をし続けるべきだと香苗は思った。
一度その街で宿をとる。到着した四番隊の隊員に事のあらましを伝えた康家は色々な報告書を書き隊員に渡した。
紫蓮は広い部屋を用意してもらい、知夜里と同室で剣の指導をする。素振りから始め、基礎的な『神代流剣術』を知夜里に教えていく。
知夜里は覚えがよく、まだまだだったが紫蓮の技を習得していった。
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