現代に戻った壊れた召喚士はソロでダンジョンを攻略していく

神無月

第1話

あぁ、またこの夢だ


「うちはもう駄目みたい…、たはは…ごめんね。悔しいな…もう一緒に行けないなんて…。君にはたくさん迷惑かけたね。泣かないで…、君には泣いてほしくない。笑って…いつもうちに見せてくれる太陽な笑顔を…。

たはは…見えてるよ、ちゃんと見えてる。…ねぇ、最後に我儘言っていい…、君の側にいたいんだ…、君には残酷な事をしてしまうけど。うちを…」

盗賊だった少女は両足が無く全身から血を流しながら笑いかける。



「すまねぇ、俺はもう盾になれそうにない。こんな所で俺の旅は終わりか。…泣くな、お前が泣くとあいつが怒っちまう。…あぁ、ちゃんと笑ってるよ。…ゴメンな、もう撫でられなくて、…俺はもう長くはない、これからはお前の兄貴分として見守るつもりだ。酷なことをさせてしまう、だから…」

騎士だった男は両腕が千切れ血を流しながら笑いかける



「ごめんなさい、私はもう一緒に行けないわ。何も見えないの。けどね、…貴女が泣いてるのはわかる。泣かないで、泣いたら可愛い顔が崩れちゃう。ほら、笑って。…えぇ、えぇ、見えるわ、貴女の素敵な笑顔が。…いい、これから先困難が立ちふさがるわ、けどね、絶対に立ち止まったらだめよ。歩みを進めなさい。恋愛もねフフッ。…もう時間ね。最後にお願いがあるの、私は貴女の近くで見守りたいの、貴女の未来を…世界を、酷いことを言うかもしれない、でもね気にしたら駄目、これは私が望んだ事。だから…」

弓士だった女が両眼が潰れ血を流しながら笑いかける



「あぁ、僕の旅はこれでおしまいか。少し…いやかなり悔しいな。…もう魔法はつかえないから治せないよ。…泣くんじゃないよ、君は笑った顔が綺麗なんだ、泣き顔は似合わないよ。…あぁ、そうだ、君はその笑顔が1番似合っているよ。…あぁ、最後に美しい華を見れた僕は最高の幸せ者だ。だから、君のそばで君の行く先を見守りたい。…君には残酷だろうが気にはしていけないよ。これは僕の望み…いや、君の力になれるのであれば本望だ。だから…」

賢者だった男が魔臓を抜き取られ血を流しながら笑いかける



《わたくしもここでお別れですね。最後までついて行きたかったのですが、力及ばずでごめんなさいね。…泣かないでください、わたくしは貴女の笑顔が大好きですの。…えぇ、素敵ですわ、その笑顔でわたくしは助けられたのですから。…気にしないでください、これもわたくしが油断した事、貴女は悪くないわ。…これではもう一緒に歌えませんね、貴女と一緒に歌うのが好きでしたから。…あぁ、もっとお話したいのに、神様ってせっかちですね。次に会えるのもう無いのに…。ねぇ、最後にお願いよろしくて。…わたくしはまだ神様の所に行きたくないの、貴女の側に居たい、見守っていたいの。フフッ、神様の所に行きたくないって聖女失格ね。だから…》

聖女だった少女は喉を裂かれ血を流しながら笑いかける



「俺の旅はここで終わりだ。もう俺とお前だけ、…いや、お前だけになってしまったな。…泣くな、俺はお前が泣く顔が苦手なんだ、ほら笑ってくれ。…あぁ、その笑顔、その笑顔で俺はここまで来れた。お前と仲間のお陰で魔王を倒せた。こんなザマになったがな。…なぜ庇ったのかって、…別世界の人間を巻き込んでしまった負目もあるが、惚れた女が死ぬのを見たくないからな。…最初は可哀想だなとしか思っていなかった。だけど一緒にいるうちにお前の事が好きになっていた。…けど、俺は勇者だ。魔王を倒すことが使命…だった。…仲間が死んで行く姿を見て、次はお前が死ぬんじゃないかって不安になった。…何度もこの使命を放棄してお前を連れて逃げたかった。けど、お前は前を向いていた。1番逃げたかったのはお前だったのに、1番辛いのはお前なのに、前を見ていた。だから逃げなかった、使命を放棄しなかった。…魔王を倒した後に告白しようとは思っていた。けど、もうできそうにない。俺はもう長くない。最後に良いか。…俺をお前の世界に連れて行ってくれ、この世界での俺の使命は終わった。…もし、お前が良ければ側にいさせてほしい。だから…」

勇者だった男が心臓に剣を貫かれ血を流しながら笑いかける



「「「「「《うちを/俺を/私を/僕を/わたくしを/俺を》」」」」」




「「「「「《喰べて/ろ/ください連れてって》」」」」」

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