P09:アーティファクト【02】
「クソッ! 逃げ場がねぇ、援護頼む!」
「ほら見たことか!」
ロイド機はシールドを展開して防御姿勢になってからゆっくり後退し始めた。クーガー機も左腕にシールドを展開してから銃弾の雨の中に躍り出る。カミナは崖上のBMを狙うが射線が通らない。
『――オリハ、アリア、崖上の敵を撹乱できるか?』
カミナの不安そうな声に怯えるアリア。
「カミナさん……オリハ、パパッと倒しちゃってよ!」
「ダイジョウブ。20ミリナラ、ナンパツアタッテモ、カンツウシナイヨ、タブン」
「オリハ! 頼むよ、皆を無事に帰したい!」
うわっ、カミナさんが気弱な状況はちょっと怖くなるわね。こっちのバカ顔文字はまたタバコ吸ってるし……禁煙しろ!
「こらーっ! 強い武器出してきたらヤバいでしょ!」
「ダイジョウブ、ダッテ。シンパイシスギー」
もうっ! ここは……仕方ないか!
「倒してくれたら……今晩、ご褒美いいよ」
「サァ! キアイ、イレルゾ、ガンバルゾ!」
顔文字がエロい顔に変わったと思ったらハートの蓋が開いてマジックハンドが顔を出した。
「違うでしょ! 閉まっときなさい!」
蓋を無理やり閉めるとマジックハンドが挟まれて
「イタイッ!」
「あっ、ごめんごめん……」
「モウ……デハ、ジャンプ、スルヨ! ベルト、シッカリ……」
四点点式ベルトが自動でアリアを固定する。操縦桿が出てくると、勝手に動き出した。やる気に溢れたオリハがジャンプしようとした瞬間、眩い光が崖上からロイドとクーガーに襲い掛かった。
「粒子ビーム!」
「リュウシビーム!」
オリハとカミナが同時に叫ぶと同時にロイド機の左腕に直撃した。シールドが爆散して肘から下が無くなっている。
ロイドはコクピット内で一瞬呆然としていた。
『――後退するぞ、ロイド。右のシールドも展開しろ! 聞こえてるかっ! 後退だ!』
「クソッ! アーティファクト持ちが敵に居るなんて聞いてないぞ? 違約金モンだぜ」
『――金の話は後でナッシュに文句言おう。まずはそこから後退するんだ!』
クーガーが巨岩まで辿り着いた。二機のシールドを使って崖上からの攻撃を遮りながら後退を始めた。ロイドとクーガーは巨岩を使って粒子ビームの射線を潰している。逆に崖上から射線が通るようになったので、そこそこの銃弾が二機を襲う。
しかし、それと同時にカミナ機は一歩前に出た。
「粒子ビームの集束機ーーー!」
テンションがおかしくなってるカミナ。BMが腕をグルグル回している。コクピットの中でも腕まくりして腕を振り回す。
「アイツ倒して集束機をゲットしてくるねー!」
『――えーーー! カミナさん、大丈夫なんですか?』
「さーて、ジャンプして一発こっちもぶっ放して、格闘戦に持ち込むかぁ? さてさて、どうする……」
既に聞こえていないようでブツブツ独り言を呟いている。声は正直、正気を失っている。
「アリア。コウイウトキ、ハ、テッタイ」
「えっ、倒せないの?」
「アタッタラ、タイヘン。ニゲルヨ」
そうよね。それが正解よね。オリハは冷静よ、ステキ!
「カミナさん、無理しないで一旦引きましょう」
『――粒子ビームの集束機欲しーい!』
既にカミナの耳にはこちらの声は届かない。
「直下まで移動して一気にジャンプ、一気にジャンプ!」
叫びながら一騎で突っ込んでいった。
カミナ機はローラーダッシュではなく僅かに空中に浮いて進むホバリングが可能な軽量級BM。後退に成功しつつあるロイドとクーガーの横を通り抜けて銃弾を避けながら突き進む。ロイドが敵の銃弾で釘付けにされていた巨岩を回り込んだところで粒子ビームがカミナを襲う。
「カミナさん、ヤバーい!」
「しまった!」
ビームをギリギリ避けるが脚部にダメージを負いホバリング走行ができなくなってしまった。結局ロイドが釘付けになっていた巨岩に張り付いて銃弾を避けることになってしまった。
「ごめーん!」
『――カミナさん、無茶するから!』
ここで危険地帯からやっとのことで戻って来れたロイド機とクーガー機。クーガーは踵を返してカミナ機を確認する。クーガーのBMは重装甲タイプで、普通のBMの攻撃くらいなら問題ない。勿論粒子ビームは別だが。
「くそー、ロイド、俺はカミナの救援に向かうぞ!」
『――あぁ、気をつけ……』
クーガーがもう一度救援に行こうと一歩を踏み出したところで崖上の敵は此方への砲撃を強めてきた。カミナへの救援を邪魔するつもりらしい。
「クーガーさん! オリハ、カミナを助けるよ」
「エー、メンドウ……」
いつものタバコを吸う顔文字。イラッとして顔文字をデコピンする。
「イタイナァ……モウ……」
「なんでよ!」
クーガー機はどうにか近づこうと崖上に射撃している。ロイド機も援護射撃中だ。
皆んな頑張ってるのに、コイツったら!
「ワナニ、ジブンデ、ハマルノハ、ジゴウジトク……」
「助けなかったらご褒美は永久にお預け!」
顔文字がサッと青ざめると、汗をかきながら慌てる顔文字に変わった。
「サァ、キュウエン、イクゾ! アリア、コンバン、ゴホウビ、ヨロシク」
「ほら、分かったから、さっさとやっちゃえー!」
ここで、オリハからいつものイケメンボイスが聞こえてきた。
engage enemy now.
(現在、交戦中)
detect a multipul energy and probably ARTIFACT energy.
(複数体、及びアーティファクトと思われるエネルギーを検知)
move to defensive sequence.
(防御態勢に移行する)
non target lock.
(目標固定なし)
defensive mode change AEGIS.
(防御モード『イージス』に移行)
are you ready?
(準備を確認する)
「
「ヨシ、ケイヤク、セイリツー」
ok.
(了解)
the order has been approved.
(指令を承認する)
mode change AEGIS complete.
(『イージス』移行完了)
いつの間にか見慣れないものがコンソールの下に出てきていた。小さな玉が箱の上にくっついてるようにしか見えない。
「トラックボール、ノ、ソウサハ、マカセタ!」
「へっ?」
コンソールには線で描かれたオリハの立ち姿が映っていた。
「ボールヲ、マワシテミロ」
少しオラつく命令口調の台詞にキュンするアリア。強気に言われる方が好みらしい。
(イケボモードのオリハ、頼りになっちゃうなー)
「ドウシタ?」
「あっ! はい! こ、こうかしら?」
変なこと考えて頬が赤くなってないかソワソワするアリア。慌ててトラックボールをグルグル掌で回すとコンソールのオリハの腕に光る点が移動していった。
「マエ、ミテ」
言われた通りに前を見ると、オリハの腕に五十センチ位の光ったサラダボウルみたいなものがくっついていた。
「えっ、何これ? あっ、ボール動かすと移動するわよ!」
アリアがトラックボールを動かすと、光るサラダボールのようなものが移動していく。
「ピンポイントバリア。コレデ、リュウシビームヲ、ハジケル」
「わーっ、楽しーい、って、えっ? えっ?」
すると、コンソールに簡単な線画のアニメーションが現れた。崖の上の敵が発射した弾をバリアを動かして防御している。
「タノンダゾ」
一通りの説明をすると、左腕の盾型装甲から粒子ビームを板状に展開してシールドを作っていった。
「ビームシールド。リュウシビームモ、ハジケルケド、ネンノタメ、ソッチ、ヨロシク」
「えーーって……きゃーーーー!」
アリアが状況を把握する前にローラーダッシュで突進する。銃弾を避けながらあっという間にカミナに追いつくと、崖上の敵をライフルで狙い射撃する。しかし角度が悪くて射線が通らない。
「ダメダ。ヤッパリ、テッターイ!」
ライフルを背中に格納すると、右腕からもビームシールドを展開してカミナを防御する。アリアはコンソールと睨めっこ。クルクルとボールを回しながらビームシールドから漏れた銃弾を防いでいる。
コンソールから視線を外さずカミナに声を掛けた。
「カミナさん、大丈夫ですか?」
『――アリアちゃん! オリハも、ごめんね。でも集束機、欲しいのよねー!』
まだ諦めてないの、と少し呆れる。
それよりも、揺れる機内でコンソールをじっと見てると酔って吐きそうになる。
顔が青白くなってるアリア。
「ねぇ……集中してると吐きそうよ」
「エー……ワガママダナァ。ジャア、コレデ、ドウ?」
椅子の座面が下がり身体がベルトに固定されたままコクピット内に立つような姿勢になるアリア。狼狽えていると
「やっぱりコレはコレでスゴイわね……」
すると、マジックハンドがアリアの腕にピタリとくっついてきた。
「うわっ、今じゃないでしょ!」
マジックハンドから離れるために手をブンブン振ると、バリアが前後に激しく移動した。
「えっ?」
「アリアノ、
右手とバリアが連動して動いている。アリアが右手を頭にかざすとバリアはオリハ機の頭部に移動している。頭を守りたい時は頭に手を、肩を守りたい時は肩に手を持っていくと、そこにバリアは移動した。
「あら、コレは分かりやすいわよ! 良いわね、オリハ!」
「ソレカラ、ダメージウケルト、ワカル、ヨウニシタヨ」
直後に敵の銃弾が頭部に当たると、アリアの頭にはデコピンを受けたような衝撃が走った。
「あっ、痛い! ちょっとオリハ、いたたた!」
手で防御するとバリアが移動して、実機の防御も出来るようになった。
「なるほど、これは真の一心同体ね。なんか
「ヨロシク」
アリアがフンっと鼻息荒く気合いを入れると、敵側も激しい銃撃を再開した。
「このっ、胸ばっかり狙うな! あっ、あっ、やめなさい! イヤッ、だからってお股もやめなさい!」
「タノシソウダナ……」
「こらこら、だから胸はやめなさい! あっ、だからって脇を狙うな、マニアックか!」
カミナの前に立って防御していると、また崖上から眩い光の粒子が襲い掛かった。
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