エピローグ



火茂瀬 真斗:「みゆきー! 行ってくるよ〜」


真白 みゆき:「行ってらっしゃい」


俺は執行人のコピーキャットを辞めた。


2つの連続殺人事件が同時に消えた事で、マスコミが2つの事件には何か繋がりがあるのではないかと騒いでいる。


警察側もその可能性があると見て調査を進めているが、これは偶然に出来たものである。


だが、そんな事はマスコミも警察側も思わないだろう。


何か意図的な繋がりがあると見て疑っている。


俺はその調査チームに所属しているが、短い自宅安静の間に みゆきの墓参りに行った。


埋葬の時以来、みゆきの墓には来ていなかった。


殺人を犯し、女霊を夢の中で抱いていた俺は墓に行くことを避けていた。


だが、もうコピーキャットも女霊を抱く事もしないと決めた俺は、 自分の気持ちをリセットする為に、みゆきの墓参りに行ったのだ。


そしてどんなに探しても見つからなかった、みゆきの霊が墓の前に居た。


殺されたショックでしばらく墓の中で眠っていたらしく、目が覚めたみゆきは墓で俺が来るのをずっと待っていたらしい。


真白 みゆき:「ねぇ、どこ行くの?」


みゆきを家に連れ帰り、数日前から一緒に暮らしている。


火茂瀬 真斗:「山梨。なんか県警に呼び出されてさ。一緒に行く?」


真白 みゆき:「うーん……行っちゃおうかな! 家に居てもご飯の支度もお掃除も出来ないし」


俺とみゆきは車に乗り込み、山梨へ向かった。


途中、高速を走りながら梓さんにメールを打つ。


『傷の具合はどうですか? 仕事で山梨に向かうことになったので、帰りに萌さんのお墓参りに行こうと思います。場所が分からないので住所と大体の場所を教えてもらえませんか?』


梓さんは裂けた頬の傷を縫い、傷口が開くといけないので自宅安静を命じられていた。


最低限の外出以外は認められておらず、山梨へ行くことも許可されていなかった。


高速を使い2時間ほどで目的地であるお寺に到着した。


俺を(大腹警部経由で)呼び出した県警に案内され、長い石段を登る。


左太ももの傷が治っていない為、歩くと傷口がじんじん痛む。


自宅安静が解けたからと言って、いきなりこんな山を登るのはきつい。


真白 みゆき:「山の中にお墓がいっぱいだね〜」


みゆきは俺の横を浮遊しながら、物珍しそうに辺りを見回している。


山梨県警:「こちらです」


俺たちは一つの墓の前に案内された。


火茂瀬 真斗:「ご苦労様です」


ブルーシートで隔離された墓の前に群がる県警に挨拶をすると、県警が道を開けてくれた。


そして俺が山梨に呼び出された理由が分かった。


火茂瀬 真斗:「梓さん……な、なに、やってんスか……」


瞬きすら忘れ、初乃咲萌と彫られた墓石に寄り掛かる梓さんを見つめる。


梓さんは喉に穴が空き、傷口と口から血を流し死んでいた。


右手に握られた拳銃は新しい血と乾いて茶色く変色した血が付着している。


考えなくても新しい血は梓さんの物で、乾いた血は萌さんの物だと解る。


拳銃が失くなり回収が出来ていなかったが、梓さんが持っていたのか。


こうなることは薄々感じていたので、生存確認のために梓さんにメールをしたのだが、既にここで死んでいた様だ。


右手に拳銃を握り、左手には何か紙を強く握り締めていた。


血が飛び散り、所々赤く染まった紙を梓さんの手から取り、広げてみる。


火茂瀬 真斗:「梓さん……」


握られていたのは婚姻届だった。


梓さんと萌さんの名前が書かれ、梓さんの印鑑まで押してある。


当たり前だが、そこに萌さんの印鑑は無い。


おそらく婚姻届を握り締めたまま自殺したのは、萌さんに印鑑を押してもらう為だろう。


火茂瀬 真斗:「ようやく……出せますね……」


梓さんは萌さんと一緒に居る。


今はまだ眠っていて姿が見えないが、自殺したことにより地面と足首が鎖で繋がれ、梓さんはこの場から動けなくなる。


それでも愛する萌さんと一緒に居られるのなら良いのかもしれない。


萌さんは交代人格を殺した事で自殺にはならなかった様だ。


涙を流す萌さんの霊は遠くからこちらを見つめている。


火茂瀬 真斗:「……おめでとうございます」


青白くなった梓さんを見ると、幸せそうに微笑んでいた。



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