依頼②


???:「男は弱いねぇ」


最後の左手の小指を折ると、痛みによって意識を戻した。


桑月 一:「んんんッ……んッ……んんッ……」


桑月は頭をもたげ、自分の両手を交互に見つめる。


俺は容赦なく両手首を折ってやった。


残りは両肘と両膝、首の五ヶ所。


桑月は涙と唾液と汗で顔がぐちゃぐちゃになっている。


???:「手の方は完了。次は?」


藤山 真綾:「痛くて気を失って、肘の痛みで起きたの」


真綾は一度言葉を切り、首を傾げた。


藤山 真綾:「……どっちの肘だったかしら?」


???:「思い出して。その通りにするから」


俺の隣で真綾は砂や虫の死骸で汚れた床に視線を彷徨わせながら記憶を呼び覚ます。


藤山 真綾:「あ、左だ」


ポンっと手を叩いて俺を見る。


???:「了解」


桑月の左腕を掴む。


桑月 一:「んーッ!! ……ぅヴヴッ!! ……んんッ!!」


目を見開いた桑月は首をブンブン横に振って止めてくれと訴える。


……これ、折れるのか?


俺は掴んだ腕を見つめる。


???:「お前の腕は細いから簡単に折れたんだろうな」


呟きながら立膝になり、桑月の左肘の部分を自分の立てた膝に重ねる。


左手で桑月の二の腕をしっかり掴み、桑月の手首を掴んだ右手を力任せに下へ押した。


メキメキと関節がきしむ音と共にゴギッと折れる音がした。


それと同時に、折れて先端が鋭利になった骨が皮膚を突き破り、真っ赤な血液が噴き出して、どろどろと指先に向かって流れ始めた。


桑月 一:「んんんんッー!! ……ぅヴヴぅうぐッ!!! ……ぅヴッ……っ……」


桑月は激痛のあまり、再び気を失ってしまった。


猿轡さるぐつわにしたハンカチの隙間から泡が溢れてくる。


???:「また? ほんと弱いね」


外側に折れた左腕を放す。


???:「次は右腕?」


藤山 真綾:「左膝」


???:「流石に膝はポキっとは折れないだろ?」


俺は部屋を見回した。


???:「お、いいのあるじゃん。ってか、これ使ったんじゃね?」


汚れた部屋には、いくつかの木箱やビールケースが散乱していた。


不良の溜まり場にもなっているらしいから、椅子として使われているのだろう。


俺はその木箱を1つ持ってくると桑月の左の踵を乗せた。


深呼吸をして俺は、右足を上げた。


そしてそのまま、思いっきり桑月の左膝を踏み付けた。


ボキッ


桑月 一:「ッ!!! ……んんんッ!! んーッ!! ……ぅヴヴ……んーッぅぐぐっ……」


有り得ない方向に曲がった膝を見て、ホッとした。


???:「お! 折れた!」


鋭利になった骨の先端が、太い血管や筋肉を引き裂き、膝裏の柔らかく薄い皮膚を突き破った。


肘よりも大量の血が溢れ出し、真綾の血痕が拭き取られた冷たいコンクリートの床に血の海を広げていく。


俺は成功した喜びを感じ、立て続けに右肘と右膝を折った。


左の肘と膝から先に出血していた為、右の肘と膝も折れた骨が皮膚を突き破ったが、大量に血液が噴き出すことはなかった。


藤山 真綾:「私、首折られる時には死んでたな」


浅い呼吸を繰り返す桑月を見つめ、真綾は顔をしかめる。


???:「痛みに弱くても、体が丈夫ってのは辛いねぇ」


ぴくぴくと動く桑月を見下ろす。


両手を伸ばし桑月の顔を掴む。


涙と唾液と汗で長時間触っていたくないので、一気に首を捻った。


ゴキッと鈍い音がした。


桑月は血の海の中で静かになった。


???:「ふぅー」


肩の力を抜く。


謎の声:「お前だったのか……」


突然の背後からの声に、抜いた力が一気に戻って来た。



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