【第一章】
死刑執行人
黄色い立ち入り禁止テープで囲まれた内側には、刑事と鑑識が数人。
外側には警備についているのが数十人。
???:「おはよう」
僕は背後の声に振り返り、頭を下げた。
血生臭い内側に入って来たのは3つ年上の先輩刑事、
白城 智:「ほっそい女だなぁ……」
白城は廃虚ビルの4階で体中の関節が逆に折られた女の死体を見て、顔をしかめた。
四方木 梓:「今月に入って2回目ですね」
中指でメガネのブリッジを押し上げ、明るく染められた長い髪が血でベタベタになっている華奢な女の死体を僕も見つめた。
折られた関節から骨が皮膚を突き破り、死体は血の海に浸っている。
血管は千切れ、噴き出た血が壁や割れた窓ガラスを汚していた。
白城 智:「前回の犯人は執行人が殺っちゃったから、今回は俺たちで犯人捕まえないとな。まぁ……仕事の早い執行人に勝てる気はしないけどさ」
困った様に頭をガシガシと掻く白城を見つめ、僕は彼の発言を心の中で訂正した。
白木の言う執行人は、美人でスタイルの良い若い女を殺害した犯人を殺す、善良な様で全く真逆の連続殺人鬼のこと。
本物の執行人は、その条件にプラスして 【ロングヘア】なのだが、一週間前森で、下着姿で首を絞められて殺された犯人が殺した女はショートヘアだった。
僕は前回の犯人を殺したのが執行人の
だが、僕はその事実を誰にも言っていない。
警察がコピーキャットだと断定できる証拠が無いからだ。
白城 智:「執行人は殺人犯だけ殺すんだから捕まえなくてもいいんだけどなぁ〜」
四方木 梓:「……一課の刑事が何言ってるんですか。執行人より先に犯人見つけて逮捕するんです」
メガネを外し、現場の砂埃で汚れたレンズをマイクロファイバークロスで拭きながら、呆れた口調で先輩刑事を見る。
白城 智:「刑事としては梓が正論なんだけど、人としては執行人を応援したくなるよ。……法は必ずしも被害者の味方じゃないからな」
そうですね、と目を伏せた僕はメガネを掛け直す。
白城 智:「証拠、見つけないとな」
顔をバッと上げ、一人で意気込む白城は死体の近くで指紋を採取している鑑識に話し掛けに行った。
白城は時々変な事を言う面白い人で、優しくて信頼している兄の様な存在である。
僕は鑑識と話しをしている白城に背を向け、砂埃まみれの現場を見回し、鼻の奥がむずむずした。
椅子に使っていたであろう木箱や、酒屋から盗んできたのか黄色いビールケースが部屋のあちらこちらに散乱している。
粗大ゴミで捨てられていただろう二人掛けのソファーは、表面の生地が所々破けて中のスポンジが露出していた。
不良の溜まり場として使われていたのは一目瞭然で、複数の人間が出入りしていた可能性が高いので警察側の捜査は難航するだろう。
僕は現場の様子を手帳に書きとめながら、鑑識の隣にしゃがみ込んだ白城に歩み寄る。
白城 智:「ん〜……ここからは出なかったみたいだ」
眉毛をハの字にした白城が僕を見上げた。
白城 智:「……にしても、酷いな。関節一つ一つ折られて、凄い痛かっただろうな……」
逆に折られた関節部分からは白い骨が突き出ていて、痛々しくて見ていられない。
背骨だけは折られていなかった為、壁に寄り掛かる様に座らされていた。
死体に手を合わせた白城は、この廃墟ビルを普段から溜まり場に使っていた、被害者の友人であり第一発見者の男女4人の学生の話を聞く為に、死体のある部屋から出て隣の部屋へ向かった。
死体の血に浸っている右手の平を見ると、細い木片が突き刺さっていた。
おそらく犯人と揉め合った時に木箱を掴んで身を守ろうとしたのだろう。
鑑識も少なくなり、僕も死体に手を合わせる。
それから白い手袋をした手で、 死体にそっと触れた。
手から伝わる死体の嘆き。
この女を殺した犯人は、 結婚詐欺をした前科持ちの男、
僕は特異体質だった。
サイコメトリーといえば伝わるだろうか。
僕は死体に触れることで犯人が解るのだ。
だが、犯人が解ったからといって白城や他の刑事に報告したりしない。
僕はこの不思議な力を持っている事を誰にも言っていない。
言ったとしても嘘だと笑われるか、犯人と何らかの関係があると疑われるのが目に見えている。
本来、 サイコメトリーとは霊的能力を持った人間が物体に触れて、その持ち主や持ち主の過去、体験や経歴、人間関係や事件などを見ることが出来る過去視の事。
だが僕に手先以外の霊的能力は無い。
幽霊が見えたり、重たい空気を感じ取った事は一度も経験したことが無いのだ。
僕の両手にだけ霊的能力が宿っているのかもしれないが、自分でも何故こんな力を、いつから持っているのかは分からない。
最初は意味不明な力を嫌っていたが、今では個人的に役立っている。
だから僕はこの力を公表するつもりはない
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