ブラッディ トゥ ナイト 【週間最高44位】
月桜しおり
プロローグ
恍惚と光る青白い月が、雲で見え隠れする12月の寒い夜。
鳥肌を立たせる冷たい風が吹き抜ける森に、落ち葉を踏む2人の足音が響いていた。
男:「はぁ……はぁ……」
俺は寒さも忘れ、息が上がっている
男は何度も振り返り、恐怖に歪んだ顔で俺を見る。
男:「な、何なんだよッ!? ……お前誰だよっ!?」
男の質問には答えず、コートの内ポケットから取り出した 麻酔銃を撃つ。
森の真ん中に男は倒れ、その衝撃で砂埃と落ち葉が舞う。
男は即効性の麻酔で強制的に意識を手放した。
撃った麻酔薬は即効性だが微量のため持続性は無いので、俺は素早く男を仰向けにし、衣服を脱がして、真冬の森で下着姿にした。
男の体に興味があるわけではない。
腐女子が喜ぶ趣味も無ければ、男に手を出すほど女に困ってもいない。
ただ、この男が、そうしたから俺も同じ事をしているだけだ。
男の鳥肌が立っている腕を背中に回し、手首にガムテープを巻き付けて拘束する。
さらに脚を伸ばした状態で交差させた足首と、重ねた膝にしっかりとガムテープを巻き付け、目を覚ます前に 男の動きを封じた。
ぶわっと強い風が吹き、落ち葉を纏った冷たい風が下着姿で手足を拘束された男の肩を叩く。
尖った喉仏が浮き上がる首に、ホームセンターで買った細い麻縄を三周巻きつけたところで、男の瞼が小さく揺れた。
男:「……うぅ……」
男が目を覚ました。
自分の置かれている状況を瞬時に理解し、男は目を見開く。
男:「ッ!! ……お、お前、ななな何してんだっ!? ……くッ……ロープを解けッ!!」
男は血の気の無い紫色の唇を震わせて、俺に命令する。
それを無視して俺は男の呼吸に合わせて小刻みに上下する腹に跨り、細い麻縄を握った黒い革手袋の 手に力を入れた。
男:「!! ……や、やめろッ!! ……何で、こんなッ……こと、するんだッ!?」
俺と自分の体重の下敷きになっている両腕は使えず、下半身は足首と膝を拘束されているせいで、膝を曲げて俺の背中に攻撃する事ができない。
さらに寒さのせいで体が悴み、幼虫の様に体を左右に揺するだけでまともな抵抗が出来ていない。
???:「お前が殺した女も、やめてって言ってたんじゃねーか?」
俺は青紫色に変色した男の顔を見下ろした。
男:「な、んでッ……お前ッ、それ知って……」
男は俺の発言で更に肌を青白くした気がする。
???:「4日前、ここで今のお前と同じ状態で殺された女の事件を知ってるからな」
俺はこの女子高生殺人事件について詳しく知る者で、男は本来捕まえるべき犯人なのだ。
殺人犯:「お、お前……刑事、なのか? ……刑事が、人殺して……いいと、思ってんのかッ!?」
俺はゆっくりと両手に力を入れて、細い麻縄の両端を左右に引っ張った。
グググ……
細い麻縄が擦れ合う音が、男の恐怖心を煽る。
???:「じゃあお前には、ここで女を殺す権利があったのか?」
顔を真っ赤にして、酸素を取り込もうと必死で口を鯉の様にパクパクさせている男に問う。
殺人犯:「……うッ……グッ……グァッ……」
開いた口から垂れた唾液が、頬を伝って耳に向かう。
???:「あ? 聞こえねー、よッ!」
ググググ……
細い麻縄を、ぐっと強く引っ張った。
殺人犯:「……ぁあッ……なッ……ぐあッ……」
真っ赤に充血した舌が、口の中で蠢く。
???:「無い? ……あぁそうだろうな。誰も、んな権利持っちゃいねーんだよ」
一層強く細い麻縄を引っ張る両手に力を入れ、男の首を絞め上げる。
殺人犯:「……ぅぐッ……ぁっ……うッ……ッ…………」
男は白目を向いて、事切れた。
手足を縛り、寒さで動けなくなっている無抵抗な男を殺すのはとても簡単だった。
命を無くした男の上から、そっと下りる。
男の傍に立ち、手足を拘束された状態で首を絞められて死んでいる姿と、4日前にこの場所でこの男に殺された女の話していた内容と照らし合わせる。
場所も使用した細い麻縄も殺害方法も、全て同じ。
???:「君の大切な未来を奪った男は死んだよ」
これで【女からの依頼】は果たされた。
???:「……さみぃ」
俺は足早に森を抜け、堂々と停めてあるバイクに跨った。
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