169:ギャルと男女の仲を意識する
星架さんと横中から戻ると、14時過ぎだった。解散にはまだ早い。だけど何か、二人とも変な空気になってしまってるし、今日のところはリセットしたい。帰り道でも不自然なほど映画の話題にはならなかった。星架さんも意識してるんだって、否が応にも察せられた。少しだけ
「どうしよっか? ウチくる?」
沢見川駅のロータリー、竹屋の前あたりで少し立ち止まった星架さんが聞いてくる。彼女はどう思ってるんだろう。僕が行きますと言ったら、やっぱり気まずく感じるのかな。
かなり本音で話し合えるカップルだと自負してるけど、これは無理だよなあ。星架さんをエッチな目で見てしまうかも知れないから、今日のところは帰りたい、なんて。
何か他の口実は……あ。良いのがあった。
「えっと、依頼も入ってるんで、アクセ作ろうかなって」
「あ、ああ、そっか。そうだよね、それは仕方ない」
星架さんも明らかにホッとしてる。ああ、やっぱ気まずかったんだ。まあそうだよね。
「じゃあ、また明日ですね」
そういう形でまとまり、駅から自転車に乗って帰路につく。星架さんのマンションまで戻ってきた所で。
「今日はホントありがとね。映画、えっと……観れて良かった。ご飯もごちそうさま」
こういうのキチンと言ってくれるの、やっぱ嬉しいよね。けど流石の星架さんも言葉を選んでた。まあ爆弾落とされちゃったからねえ。
「いえいえ。さっきも言いましたけど、トラウマ関連ではお世話になりましたから。少しでも返せたのなら良かったです」
そんなやり取りを最後に、僕たちは手を振り合って別れた。
家に戻り、一人自室で考えを整理する。
まずなんだけど……僕と星架さんがそういうことするのは早すぎると思うんだ。僕たちはまだ16歳、高校一年生だ。そういう経験してない人の方が圧倒的に多い年代……だよね? ああ、でも、どんどん低年齢化してるとか聞くし。園田さんは、えっと、経験者らしいもんね。身近な所にも居るって思うと途端に生々しく感じられてしまう。
「い、いやいや」
そもそも、だ。周りがしてるから僕も乗り遅れないように、なんて理由でするのはナシだろう。僕にとっても星架さんにとっても大切な、人生で一度きりしかない思い出になる体験なんだから。やっぱりキスの時と同じく、お互いの気持ちが本当に最高潮に達した時にしたいよね。その為には……
「って、する前提になってるじゃんか!」
もう一度、気持ちを高め合う方法を考え始めていた。恐ろしきは男の生殖本能ってことか。僕のような草食系でも、いざチャンスの予感がしただけで、このザマだ。
「……」
星架さんの唇の感触、抱き寄せた時に感じる女性らしい体の線。程よい肉付きのお尻も花火大会の時に触ってしまった。そして極めつけは最近よく抱き入れられる胸の谷間。薄着でもお構いなしなので、普通にお胸の肉がダイレクトに頬や鼻に感じられる時もある。シレっとしてるけど、毎回毎回、僕からも触れたい衝動を抑えるのに必死だ。
もしその衝動に許しが与えられるなら……
気付けば僕は掌を彼女の胸の大きさくらいに開いていた。うわ、無駄に正確なサイズ感。鷲掴みにしたのは一度きりだけど、再三の「甘えん坊」のおかげで顔でも何となくサイズを測れてるからか。
「ダメだ、頭がピンク色に染まってる」
とても平静とは程遠い。扇風機のリモコンを掴むと、弱から強に切り替えた。これで頭が冷えてくれたら良いんだけど。
「というか、星架さんがどう考えてるかは分からないんだよね」
気まずくなったのは両者共通だけど。その後、どう考えたかは、分かりようもない。話し合いにくい内容だから、今後も分からないままだろうか。それとも恥を堪えて話し合うべきなんだろうか。
僕はパソコンの電源を入れて、検索を始める。正直、恋愛ハウツーみたいなのは、あんまり好きじゃない。誰にでも多少は当てはまるような事をそれっぽく言ってる占い師みたいな胡散臭さを感じてしまうから。けど今は言ってられない。少しでも判断材料が欲しかった。
「僕と同じくまだ早いと思ってるなら良いんだ。だけどそうじゃなかった時にすれ違ったり、彼女にだけ恥をかかせてしまう可能性がある」
そうなるくらいなら、少し背伸びしてでも彼女に合わせたい。予定が早まるだけで、いつかは僕も彼女と愛し合いたいという想いはあるんだから。
いや、そもそも星架さん主導で考えてしまってるのが良くないのか。キスも告白も彼女からで、ここでもまた受動的じゃダメな気がする。けど。さりとて僕から押せ押せで行くのもなあ。彼女が心の準備が出来てなかったら、それこそ傷つけてしまう可能性が高い。
「……難しすぎない?」
一縷の望みを抱いて検索をかけるけど、みんな僕と同じく悩んでるという事しか分からなかった。体の関係に進む際のすれ違いで別れてしまったなんて恐ろしい書き込みまで見つけてしまった。
「はあ」
恋愛は難しい。
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