第13話 無限の可能性

─── 三ノ宮美月視点 ───


僕は三ノ宮美月。七星高校2-B。プログラミング部所属。つやっつやの髪に小柄でスリムな美ボディーの愛され系女子だ。



校内でもトップクラスの美少女であるのだが、男子たちは奥手のやつらしかおらず、いまのところ告白どころか言い寄ってくる男子はいない。まあ、僕くらいの美少女になっちゃうと相手も気後れしてしまうのも仕方の無い。逆に僕という美少女と同じ年代に生まれてしまったことを可哀そうにすら思ってしまう。なぜなら、みんな僕に惚れてしまって他の子に目がいかなくなってしまうのだから。叶わぬ恋を追い求めてしまう彼らを不憫に思う。



つくづく僕の美少女っぷりは罪だと思う。



自己紹介を始めると幼少期からのモテヒストリーを話さなければならないので、いくら時間があっても足りない。ここはその辺りは省略して最近の話をしよう。



僕達は修学旅行中に異世界召喚によってこの世界にやってきた。召喚された理由はこの街に迫っている魔物と戦わせるため。



先生も言っていたが、異世界からわざわざ人間を召喚するということはそれだけ切羽詰まっているということが予想される。チートな何かに期待しているから呼ばれるのだ。本当に迷惑な話ではある。



でも、ご飯はおいしいし、お風呂は広いし、化粧品なんかも使い放題。エステもマッサージもついて至れり尽くせりな感じはある。ちょっと長期の海外旅行だと思えばこんないい生活もなかなかない。いつ帰れるかわからないのは大きな問題だが、先生がなんとかしてくれるだろう。



あと、やっぱりいいのがトイレが水洗なところ。中世の屋敷なんかは外に直接垂れ流すのが一般的だと本で読んだことがある。どんな魔法で動いているのかはわからないけど、とにかく水洗だ。中世のクソ水準かと思っていたが、十分に文化的な生活だ。文明さいこー。なにやら僕達よりも前に同じように召喚された人たちがいろいろ整備していったらしい。ありがとー知らない人。



僕達には個室も与えられている。調度品なんかは現代的だとは言えないけど、なんかめっちゃいい感じで高そうな物が備えられている。ベッドもふっかふかだ。ただのふかふかでは無い。ふっかふかだ。僕はマットレスは堅めの高反発派なのだが、意外と悪くない。



とにかく生活には文句は無い。インターネットが無いことは大きな問題だが、ゲーム機はあるしトランプもある。花札は早々に飽きた。そういえば男子の間で麻雀が盛り上がっているらしい。今度かっぱらってくるのもいいだろう。



話が逸れてしまった。僕たちに部屋が割り当てられているという話。でもほぼ全ての生徒達は自分の部屋にいない。ほぼ全ては言いすぎだが、だいたい誰かの部屋に転がり込んで3、4人で部屋に集まってる。僕たちも例に漏れず、高坂みなみと藤川さくらちゃんが僕の部屋に入り浸っているのが当たり前になっている。



僕の部屋が選ばれる理由は、みなみの部屋から近いという一点に尽きる。



僕とさくらちゃんにはあまり無い現象だが、みなみは時々ヘラる。



基本、強気の性格をしているみなみだが、一度ヘラると手が付けられないくらいに落ちる。そういう時に一人になりたい欲求が高まるので、集合場所にみなみの部屋が選ばれることは無い。そして、ヘラったときにすぐに部屋に行けるように近い方が良い。さくらちゃんの部屋もそんなに離れている訳では無いが、なんとなく僕の部屋に集まることが当たり前になっていた。



正直、こういうのはめちゃくちゃ楽しい。



毎日友達と眠くなるまで喋ったり、ゲームして寝る。修学旅行は中断されてしまったけれど、醍醐味は十分に味わっている。



欲を言えば、もうちょっと観光とかもしてみたいかも知れない。この世界に来てまだこの城の外に出させてもらえていない。魔物の大群が迫ってきているからしょうがないのかも知れないけれど、せっかくならいろいろ見て回りたい。異世界の街なんて見る機会は一生無いだろうから。



そして、今日も僕の部屋で女子会が始まった。



「さあ、本日はスペシャルゲストをお呼びしています!異世界美少女イリスちゃんでーす」


「「わー」」



パチパチパチと拍手を受け、緊張した様子でイリスちゃんが頭を下げる。



「きょ、今日はこのような場に呼んで頂いて本当にありがとうございます」


「そういう固いのいいから、うちら年も違わないのに敬語とかいらねーから」



みなみの言葉にさくらも「うんうん」と頷き、イリスは「そ、それなら…」と受け入れながらも緊張の様子は取れない。



「わたし、いま手汗やばいです…」



イリスちゃんは私達「使徒」が推しだったな。推しのパジャマパーティーに急に呼ばれたらこうなっちゃうか。



「でもイリっち今日寝てないんじゃなかったっけ?大丈夫?」



さくらがイリスちゃんを独特の呼び方で呼び、睡眠不足を心配する。



「だ、大丈夫です!みなさんが訓練されているときに寝かせてもらっていましたからっ!」



上ずった声で答えるイリスちゃん。うーん可愛いじゃないか。



「って言っても5時間くらいか?いやーうちは無理だなー。しっかり8時間寝ないと寝た気にならないし、寝不足の顔なんて見れたもんじゃねーからな。美月、無茶ぶりさせすぎじゃねーの?」



僕は夕食が終わった後、たまたま歩いていたイリスちゃんを捕まえてここまで連れてきた。僕もイリスちゃんの体調は気になったが、イリスちゃんは「いつですか?今日ですか!」とちょっと僕も引くくらい食い気味だった。聞きたいこともあったので丁度いいと思い、そのまま連れてきた。



「イリっち迷惑だったら言っていいだよ?」


「いえっ!そんなことは絶対にありませんっ!」



イリスちゃんは即座に答える。僕らのこと好きすぎだろ。



「でもまあ、先生も結構あれだよな。イリスちゃんを朝までこき使うなんて。完全にブラックじゃん。イリスちゃん可哀そうじゃね?うちが文句言っといてやろうか?」


「そんな!いいんです!可哀そうどころか使徒様のお役に立てて本当に良かったと思っています」


「あーね。新魔法を作ったってやつね。あれそんな凄いことなん?」


「凄いですよっ!新魔法なんて魔導士が十数年かけて作り上げる成果をたった一晩でなされたのですから!本当に信じられません。さすが使徒様です」



イリスちゃんは興奮気味に先生を称える。僕はプログラミング部だからなんとなくその手順がわかる。正直、今回の新魔法を生み出したのは大したことじゃない。僕でも手順さえ教えてもらえば同じことが再現可能だろう。だってコピペしただけなんだから。



でも、その開発環境を一晩で作り出したのは凄いことだ。それはあのエルフさん達もいたから出来たのだろうけど、パソコンを使って魔法を開発しようなんてことに思い至り、それを実現させてしまうというのは思いもしないことだ。あいつマジ変わってるな。



実はこれがイリスちゃんに聞きたいことだった。可愛い異世界の美少女と仲良くなりたいというのも、もちろんこの会の目的ではあるのだが、新魔法についていろいろ聞きたいというのが僕の狙いだ。



僕の長年の野望がこの世界で果たされる可能性がある!



「やっぱあれ凄いことなんだ」


「もちろんですよ!長い魔法史を遡っても新魔法を一日で編み出したなんて聞いたことがありません。黒羽様は天才です!魔法の神に愛されているとしか言いようがありません!」



僕はイリスちゃんにジャブを打って会話の流れを新魔法に持っていく。イリスちゃんは先生にかなり好意的だ。こうやって話を振れば話の流れを誘導することはたやすい。



僕の目的のために自然に聞き出すのだ。それこそイリスちゃんにもバレることも無く。



「魔法って凄いよねー。なんでも出来ちゃう気がしちゃう。他にさーなんか変わった魔法とかないのぉ?」


「変わった魔法ですか…。そうですね。エルフの方たちが使うドルイドマジックに植物を育てる魔法とか、天気を変える魔法なんて凄いものもあるらしいですよ」



そんな魔法もあるんだ。期待した通り魔法ってかなり自由度が高い物なんだな。しかし、まだだ、僕の期待する魔法の情報ではない。



「凄いねー。魔法ってなんでも出来そう。なんかこう物体を変化させるみたいな?魔法ってあるのかな?」


「ありますよ。私も伝承でしか聞いたことの無い魔法ですけど、木を金属に変化させる魔法があるそうです。凄いですよね」



ちょっと進展したか?だがまだ遠い。



「そんな魔法があるんだ。木と金属だったら構成する元素が違うのにどういう原理かわかんねーな」


「あれじゃない?昔、お父さんのやってたRPGであったんだけど、体を金属にして敵からの攻撃を受けなくするやつみたいなの」


「だからそれはゲームの話だろって、実際のところどうやってんのかって話」


「それは魔法だから出来るんじゃない?」


「たしかに」



みなみが感想を言い、さくらがのっかっている。よしよし、まだ魔法の話の流れは途切れず、僕の狙いもバレていない。



僕はさくらとみなみの胸部に目をやる。



こいつらの胸は凶器だ。二人とも相当な物を抱えていやがる。



みなみは校内でもかなり大きなバストを持っている。本人曰くGカップとかいう化け物じみた果実をぶら下げていやがる。男子たちからの羨望を集めているのを快感に感じていて、わざと胸を強調するポーズを取ったりしていやがる。そして本当に気に入らないのが、それを明自慢気に僕に話しやがるところだ。マジ許せねぇ。



そして、それよりも凄いバストを持っているのがさくらちゃんだ。さくらちゃんのバストは驚愕のKカップだ。確かにでかいでかいとは思っていたけれど、まさか「K点越え」が実在して現実に拝める人生があるとは思ってはいなかった。男子からの視線はほぼ胸に集中しているらしく、非常に迷惑がっている。人と話しているときでも相手が自分の顔を見ているよりも胸を見ている時間の方が長く、「胸と話している」と嫌がっている。しかし、さくらちゃんは優しいのであまり強く言うことは無く、僕に対しても「大きくてもいいことないよ」と持つ者が持たざる者への哀れみを見せてくる。それに僕はいっそうみじめな思いをしているのだが、さくらちゃんには言えない。



ちなみにイリスちゃんはいい感じだ。そこそこありそうだけど、僕がダメージを追う程でもない。CかDくらいだろう。頑張れば挟めなくはない。



そんな胸囲の格差社会に苛まれる僕はAだ。認めようAであると。Aとはトップとアンダーの差が9センチから11センチのことを言うあれだ。正直、僕はほぼBよりのAであると主張し続けていたが、今回は認めよう。



僕はこれまでこんな化け物みたいな胸に囲まれてAもBもあった物じゃない。等しく持たざる者なのだから。



それでも「一部には需要が」だとか「ステータスだ」だとか「無い物ねだりで巨乳が多い県ではモテる」だとか聞いて、本気で九州に引っ越してやろうかと考えたときもあった。



だが、もうそんなことはどうでもいい。



この世界には魔法があるのだから。



僕はプログラミング部に所属していて、簡単な物だけれどいくつかアプリも作ったりしている。



活動をしているときに感じるのが、プログラミングはなんでも出来るということだ。



もちろんそれは電子的、機械的に行われる物に関して全てできるという意味だが、例えば「こういうのあったら便利なのに」「こういうこと出来ないのかな」ということはパソコン上で行われていることは基本的に全て実現可能だ。もちろん、僕の技術が全然足りていなかったり、ハードウェアやソフトウェアの問題もあり実現出来ないことあるけれど、デジタルで行われることに関しては出来ないことは無いと僕は思っている。



先生が新魔法を開発した手順を聞く限り、魔法には無限の可能性がある。



クラスのみんなはあまり理解していなかったかも知れないが、今回、先生が行った魔法の開発は簡易的な物だと言える。もちろん僕なんかでも試行錯誤すればすぐにたどり着ける領域だ。でも、魔法という物は奥が深い。先生が手を付けなかった詩の部分を解明すればもっと自由に多種多様なことが出来るようになるのは明白だ。



それこそ、人体の一部を肥大化させるなんてことも…。



僕の目線からすると、この魔法という物は現実世界にプログラミングを持ち込んだような物だ。だったら、デジタルで行われることが出来ないことは無いように、現実世界で行われることも魔法で出来ないことは無い。もちろん制限はあるのだろうけれど、木を金属に変えてしまえるようなトンデモなことも実現可能な神の御業だ。それこそ、突き詰めれば僕の想像を超えるような物も実現可能だろう。



僕を巨乳にすることなど簡単なことなのだ。



僕は自分がさくらちゃんを超える巨乳になった姿を想像してニヤケテしまう。おっといかんヨダレだ。



だから今回はイリスちゃんを呼んで魔法についていろいろ聞いてみようと考えたのだ。狙いは「人体を変化させる魔法」や「物体を大きくする魔法」だ。



しかし、僕にもプライドがある。みなみとさくらちゃんや他のクラスメイトにも気づかれる訳にはいかないし、イリスちゃんにも出来れば悟られたくはない。慎重にだが、大胆に話を進めていこうではないか。



「すごいねー。それだったらさー、鳥になる魔法とかないのー?僕、鳥になって空を自由に飛びたいなーなんて素敵だと思うんだけど」


「あ、飛行魔法ですね。あるにはあるんですが、浮かび上がって周囲を見渡す魔法で、鳥のように自由に飛べるわけでは無いんです。魔力の消費も激しいですし…でも使徒様だったら使いこなせるかも知れません」



違う、そうじゃない。



「そうなんだー。でも可愛い動物になれるなんてのも憧れるよねー。そういう魔法はないのかなー?」


「聞いたことはありますね。なんでも狼に変身する魔法があるとか、秘匿されている魔法なので詳しくは知らないのですが」


「おっ、近づてきたー」


「え?近づいて…ですか?」



ヤバい。声に出てた。



「他にはなんか無い?なんかよさげな魔法…」


「よさげなですか…?」



イリスは次々と魔法を教えてくれる。「物体の重さを変える魔法」「相手の大きさを半分にする魔法」「体を霧に変化させる魔法」などなど、かなり近いが惜しい魔法が出てきた。僕は興奮し、「きたっ」「いいね」「もう一声」と声を荒らげていた。



「なあ、魔法の話ばっかじゃなくてもっと別の話しよーぜ」



みなみが僕とイリスちゃんの会話に割って入ってきた。バカ野郎、いまいいところなんだ。



「そんな、女子が集まってする話と言えばコイバナでしょコイバナ」


「お前にそんな浮いた話もねーだろがよぉ」


「はぁ!そんなんあるかもしれねーだろぉがよぉ」



僕とみなみが言い争いになり、さくらちゃんとイリスちゃんがオロオロしている。僕たちに会話が弾むような恋愛経験なんかねぇだろぉが。それよりもいまは魔法の方が大事だろぉが。バカか!



「美月!お前はどうせ胸が大きくなる魔法があるとかおもってんだろぉ!ねーからそんな都合のいいもん。お前は持たざる者なんだよぉ」


「はぁ!ちげーし!そもそも持ってっから、そんな魔法いらねーから」



こいつ言い当てやがった。クソが。



「あの…。外見を変える魔法ならありますよ?」


「えーほんとー。それそれそれ!そういうのを待ってたんですぅ。イリスちゃん大好き!ちゅ!」



僕は感情の赴くままにイリスちゃんに抱き着いた。最高やでこの子。



「やっぱそうじゃねぇか」


「はいその通りです。見栄を張っておりました。申し訳ありません」



僕はみなみに深々と土下座する。僕の悲願を叶えるためならばこの頭など安い物だ。僕は実利を取るタイプなのだから。これで僕が巨乳になれる未来は確定した。僕のプライドなど安い物だ。



「話題かえよっか?」



僕が土下座をしているせいで微妙になっている空気を察してさくらちゃんが助け船をだしてきた。いい女だぜほんと。僕の方が巨乳になってもさくらちゃんだけには優しくしてやるからな。



「じゃあコイバナしちゃうコイバナ!」


「お前、浮いた話ねーとか言ってじゃねぇか」


「みなみっちもまあまあ落ち着いて、じゃあ私から話題を提供しましょうかね」


「えぇ!さくらちゃん、まさか彼氏いんの!?」


「マジかよ。俺のさくらの豊満なスイカを好き放題してるやつがいるってーのかよ…」


「別にみなみっちの物って訳じゃないから。わたしの胸は私の物だから。てかちがくて、今日の美咲っちのあれってさぁ、やっぱり先生のこと好きなのかなって」



高城美咲、今日の授業の終わりに先生にダルがらみしていたな。あいつ先生狙いなのかよ。



「まあ、完全にかまってちゃんだったよな。言ってることもわけわかんなかったし、完全に先生しゅきしゅきムーブしてたよな」


「え、そうだったんだ。全然気づかなかった」


「お前は胸のことしか考えて無かったんだろー」


「返す言葉もございません」


「みつきっちはみさきっちと仲良くなかったっけ?なんか聞いてたりしないの?」


「あーあいつあんまりそういうの話さないからなー。なんか予想外の組み合わせって感じがするけど」


「そうか?あの先生けっこう面倒見いいから、高城みたいなのはコロッといっちゃうんじゃない?」



僕たちが黒羽先生×高城の話で盛り上がっていると、イリスちゃんが所在なさげに縮こまっていた。



「あの…私、ここにいていいんでしょうか?使徒様方の秘密を知ってしまって大丈夫なんですか?」


「ああ、そんなこと気にしてたんだ。大丈夫大丈夫、別にマジの話でもないからさ。どのみち、あの先生にそんなかい性ないでしょ」


「そうそう、あの先生ぱっと見クズっぽい感じだけど、その辺はまともだから。それになんか佐藤先生に色目使ってる感じもするし」


「やっぱそうなん?くろはねっちもやるねー。あかねちゃん狙いとはなかなか高望みしてんなー」



更に明かされた情報にイリスちゃんの動揺が止まらない。まあ、僕たちが勝手に話してるだけのタダの噂話だし、気にする必要はないんだけど。万が一の話、先生と高城が付き合うとしても、先生の性格を考えると卒業してからとかだろうし、そこは好きにしてくれって話だ。同窓会なんかでネタにしてやるくらいしか思いつかない。



「ちなみに、悠里と奈々も怪しいんだよなぁ。時々メスの顔してっから」


「なにぃ、くろはねっちハーレムやん」


「あいつヤバ過ぎだな。早くなんとかしないと」


「あの…。ほんとに聞いてていいんでしょうか…」



先生モテモテだな。全然知らなかった。



まあ、先生の話はこんなもんでいいだろう。そこまで引っ張る話でもないし。僕たちの好みとは離れてるからな。好みは人それぞれだし、応援する気も止める気もいまのところない。人の恋路を邪魔するヤツは…ってやつだな。



「そういえばイリスっちは結婚するんだっけか?」


「え、あ、はい。そうですね」


「そうだそうだ。聞かせて聞かせて」



結婚なんて真剣に考えたことは無いけれど、イリスちゃんは「この戦いが終わったら結婚する人」だった。確か婚約者がいるって言ってもんな。折角だから詳しく聞いてみたい。



「楽しい話ではありませんよ…」


「いいからいいから。うちたちも将来結婚するかもだから参考にさせてよ!」



みなみもイリスちゃんの結婚に興味を持っているようだ。



「そこまでおっしゃるのでしたら…」



イリスちゃんは重々しく口を開いた。

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