第4話 いじめはなおも続く

 他のことでもよくいじめられた。能力が事故の影響で、大幅に下がっていた。運動能力は事故の影響を一番受けたひとつだ。事故の影響で足や手を痛めてしまっだ。


 リハビリをしたけど、完治はしなかった。百メートル走で二十八秒かかるのだから駄目さは、はっきりしている。


 全てを総合して、特別クラスの次にいじめやすい義男に、いじめが集中したのも当然の成り行きだ。弱い人間をいじめる、卑怯な人間は絶対に存在する。


 しかも一人では決してせず、大抵、一対複数で行う。一対一でも、弱いものいじめはは許されないのに、一対複数とはより卑怯だ。余程のことがない限り勝てるはずがない。

 

 根拠のない、においもひとつのいじめの材料になった。よくいじめをここまで考えるものだと感心するくらいだ。クラスメイトにお前臭いから近づくなと言われ風評被害をこうむり、うんこのにおい、触ったらばい菌がうつる、と言われてほんの少し近づくことさえ許されない。近づくと、うんこ人間、人間のパイ菌、腐った食べ物のような人間、といわれるが、人間扱いされてだけ、ましなのかもしれない。ひどくなると、腐ったゾンビ、ゴキブリをつぶしたようなにおい、猛毒のウイルスなど人間扱い

すらされなかった。


 両親に相談しようとも考えたけど、無駄だからいじめのことは言わなかった。義男は家族との会話を全くしていなかった。挨拶すらしないのだから。


 父の亀夫は仕事人間で家にいるのは数ヶ月に一回程度だった。まれに家にいても仕事の書類整理に追われていて、母の麻美とすら会話することは殆どなかった。後々、大変な二つの事態を起こすことになるとは知るよしもない。


 特にいじめのひどかった小学校時代を通じてひとつ感じたのは、ハンドを抱えている人間は差別の対象になる。


 事故に遭うまでの六年間と逆になってしまった。出来の悪い人間を、馬鹿にしたことへの天罰なのだろう。交通事故に遭うまでの五~六年間は非常に懐かしい。普通に友達を作れて能力も皆と一緒くらいあったので、みんなと楽しく勉強したり遊んだり出来た。本当に懐かしい期間だ。交通事故に遭わなかったら今どんなに幸せだったのだろう。


 過ぎ去った過去には、絶対に戻れない。何故、自分だけ交通事故に遭い、足などを手術した後遺症で能力低下して、人から馬鹿にされるのか理解できない。いじめたやつ全てを呪い、交通事故に遭って能力低下すればいいのに、とひねくれた考えを心に持ちつつ、小学生時代の毎日を生きていた。


 行動もおかしくなった義男は当然のように通常クラス一の嫌われ者である。クラスメイトにも、


「お前は通常クラスではなく脱出不可能特別地獄クラスにいけばいいんだ。通常クラスにいても脱出不可能な地獄となんら変わらないだろ。とっとと本当の地獄にいっちまえよ。なんで執拗にゾンビやウイルスのごとくここにいようとするのかね。気持ち

悪い」


 などと卒業するまでよく言われ続けたものだ。


 毎日のようにいじめを受ける日々の繰り返し。本当に、通常クラスいても毎日地獄だったけど、逃げたくなかった。奴らの思い通りになったら、人生の敗北を認めることになるからだ。少しでも学ぶことでいじめた奴らよりお金持ちになって、


「貧乏人、お金もないのかよ」


 と言い返してやりたかった。悔しさをバネにして必死に耐えた。曲がった根性なしでは、とても生きられなかった。

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