第3話 大人の事情

 義男の入学する前の出来事らしいので、詳しくは知らないけど、よくいじめられたようだ。いじめが原因で自殺未遂をした児童もいたようだ。


 そのときの学校の対応は難しかったらしい。いじめを放置していたことを厳しく責められた。校長が責任をとる形で辞任している。以来、教師は自分の面子を保つために、特別クラスの児童へのいじめをなくすのに一生懸命になった。


 いじめを発見した場合、自宅謹慎や学校中に顔写真を指名手配犯のように張られるという恐ろしい罰を受ける。それで、欝になった女の子がいた。それ以来はいじめが全くなくなったようだ。


 通常クラスの子供のいじめは放置されていた、というのか義男の場合は特別クラスを拒否したことで、教師に嫌われたのも影響している。教師の言うことを聞けない悪い児童はどうなってもかまわないとみられたのだろう。大人の言うことを素直に聞かない悪い子供に、歯向かうとどうなるかを思い知らせる意味合いもあった。以降、このようなろくでもない大人を義男は信用しなくなった。人間不信の始まりだ。


 あまりにひどいので特別クラスにいくことも何度か考えたことはある。しかし、絶対に自分からはいかなかった。卑怯で腐った、ろくでもない最低な大人や児童に負けて、特別クラスにいくことは義男の存在価値を否定するからだ。我慢に我慢を重ねる。特別クラスに行きたいと教師に言うと、


「ようやく決心ついたか。とっとと行って行けばよかったんだよ」


 と馬鹿にされたくなかった。それは屈辱だ。いじめられてもいいから特別クラスには行きたくなかった。自分を全否定された気持ちになる。


 努力の甲斐あって、かろうじて通常クラスに残れたのはよかったけれど、成績は通常クラスで最も下のほうだった。

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