第56話「一日一日が妹の大切な日々なんだ」
突如、大きな揺れと共にバキバキと、白い世界に亀裂が入る。
「な、なんだっ」
「ど、どないしたと!?」
「ミラナも、、分からないのか、?」
「別にあたしは何も考えとらんし、いっちょん分からんとね、」
「と、言う事は、」
エルマンノは冷や汗を流す。ネラの言っていた、最悪が頭を過る。あの、精神が取り残される可能性の話を。
「まさか、十分を超えたのか、?」
「ど、どないしたと、?」
「と、とりあえずっ、ミラナはここに居てくれっ!このままだと、精神が崩れるっ!」
「なっ、それあかんやん!大丈夫なん!?」
「ああ!俺は大丈夫だ!だから、待っててくれ。必ず、ユナが二人を仲良くさせたかったって証拠、見せたる!」
「っ、、わ、分かった!待っとるね!」
エルマンノはニッと。笑みを浮かべて走り出す。
ーマズいな、、このままだとー
エルマンノは頭を押さえる。意識を保つのがやっとである。相当、精神が崩れ始めているという事だろう。これが、向こうに精神を飲まれる。というやつだろうか。エルマンノはそう思いながら、懸命に走る。背後からは、崩れた床が、段々と広がり向かってくる。足を止めたら確実に真っ逆様だ。
「クッ、、ッソ!」
歯嚙みする。絶対、戻る。そう決めたのだ。起きて、ミラナに証拠を見せて。そして。
「ネラッ!絶対にっ、一人にさせないっ!」
エルマンノが強く想った、その瞬間。
「っ」
暗闇となったその場に、突如大きなヒビが入ると、真っ白な世界が広がり、エルマンノはそのままそこへーー
ーー落下する。
「なっ、!」
嫌だ。消えたく無い。約束したのだ。みんなと、妹と。ミラナと、チェスタと。そしてーー
「はっ!」
大量の汗をかきながら、目を見開いたエルマンノの視界には。
「...ネ、、ネラ、?」
「うっ、ぐすっ、ひくっ」
ネラが、居た。
「な、何が、、起こったんだ、?さっき、俺は落下して、、そして、激突したと思ったんだが、」
「よっ、良かったっ!」
「っ」
目の前のネラは、大粒の涙を溢しながら、エルマンノを強く抱きしめた。
「お、おおっ、これはっ、最高の目覚めだな、、俺の下半身も、目覚めそうだ、」
「はははっ、なんそれっ、、ひくっ、もう、起きて直ぐそんな事言って、」
「寝起きが一番元気って言うだろ?」
エルマンノは、弱々しい笑みで返す。どうやら、既のところで起きた様だ。
「...ほんと、危なかったんだよ、?もう少し遅かったら、、手遅れになってた、」
「そう、、か、た、助かったな、」
「落下して激突って言ってたっしょ、?それ多分入眠時ミオクローヌスってやつだと思うんよ、、まだ脳が動いていたから、助かったんだね、」
「おぉ、、流石学校に通っていただけあって、、頭が、いいな、っ」
「っ!大丈夫!?」
「あ、ああ、、悪い、」
エルマンノはゆっくりと起き上がろうとするものの、思わず目眩と共にまたもや倒れ込む。するとふと。その現場の状況に気づく。
「お、おお、これはっ」
「え?あ、うん。膝枕、なんか、したがってたっしょ?」
「いっ、妹にっ、膝枕っ!し、しかもギャルッ!これはっ、、俺はもう死んだのか、?」
「死んどらんから」
ネラは笑みを浮かべる。と、対するエルマンノは首元に
どうやら、マフラーが切れてしまった様だ。妹の愛情パワーではどうにもならなかったらしい。ネラによると、それによってエルマンノの体が危なかった様だ。ミラナはある程度鍛えられているからまだしも、エルマンノは体力も無ければ元々危険な状態なのだ。故に、彼に接近して回復魔法を施さなくてはならなかったという。
「それで、、か、いや、それよりも、、まさか、ネラ、転移魔法を維持しながら、回復魔法を、?」
「ま、まあね、、だから言ったっしょ?絶対、守るって、」
エルマンノは、弱々しく笑うネラの横にあった、大量の試験管に目を疑いながら、彼女へと視線を戻す。
「ネラ、」
「でも、戻れてほんと良かった、、普通なら、消えててもおかしく無かったんだよ、?なんか、強い想いが無い限りさ、精神飲まれて消えちゃう、、もしかして、お互いの気持ちが、一致したんかな、?」
「ああ、俺は、約束したんだ。ネラを守るって、一人にしないって。俺が戻らなかったら、デート。出来ないだろ?」
「っ」
「ネラを、一人にするわけには、いかない。約束、したからな。今度、お出かけ、するんだろ?俺は、、そんな最高のシチュエーション、、逃すわけには、いかない、」
「っ、、うんっ、」
ネラは、泣きそうな表情を浮かべ、優しく口にするエルマンノに抱きつこうとした。が、その時。
「うっ、」
「っ!ネラ!?大丈夫か!?」
突如、彼女はエルマンノの腕の中に倒れ込んだ。どうやら、寝ているらしい。大量の力を使ったのだ。仕方がないだろう。エルマンノは回復魔法を与えながら寝かしつけると、その姿に「ありがとう」と、小さく微笑んだのち。
隣の、ミラナに視線を向けた。
「ミラナ、?ミラナ、大丈夫か、?」
「...う、、うぅ、あ、へ、?こ、ここ、って、」
「っ!そうだ、電車内だ。よく、頑張ったな、、ミラナ、、で、いいんだよな、?」
「お、お兄ちゃん、?」
「ああ、お兄ちゃんだ。おはよう、ミラナ」
エルマンノはそう笑みを浮かべて放つと、手元に置いてあった怪しい入れ物を手に取ってミラナに差し出した。
「起きるって、信じてた。ミラナは、強い妹だ。証拠を絶対に見るっていう強い思いがあれば、起きられるって。そう、お兄ちゃんは信じてたぞ」
「ん、?あ、し、証拠、?証拠って、こ、これなん、?」
「ああ」
「これって、」
差し出された入れ物を、ミラナは未だ朦朧とした様子のまま受け取ると、マジマジと見つめる。それを見据えながら、エルマンノは告げる。
「ユナの、部屋にあったんだ」
「ユナの、部屋に、?」
「ああ、ベッドの下にな。実は、勝手に見てしまったんだ、、悪かった、」
「はぇ!?お兄ちゃん勝手に入って勝手に見たん!?」
「う、わ、悪かった、、もし、妹のベッドの下にそういう本とかあったら、ワンチャンできないかと思って、」
「そういう本って、なんや、?」
「ああ、そういえば、そういう知識ないんだったな、」
ミラナはエルマンノと歳がほぼ変わらないお年頃だというのに。お兄ちゃんは寧ろ心配です。
「そ、それでなんだが、、それ、実はユナが大切にしてたものらしいんだ、」
「ユ、ユナが、?」
「ああ。それと、チェスタから聞いた。本当に、仲が良い姉妹だったんだな、」
「っ」
「いっつも一緒に居たって聞いたぞ?」
「ま、まあ、、そうやね、べったり、やったと思う、」
「寝る時とか、お風呂もだったらしいな、」
「今考えると怖いくらいやわぁ、」
「本当に、大好きだったんだ。ユナは、ミラナの事、」
「そ、そんな事、ないで、」
「そう、思うか?」
「っ」
エルマンノの言葉に、ミラナはその箱を持つ手に力が入る。それに目を細めながら、エルマンノはその入れ物に視線を送った。
「開けて、みてくれ」
「...いいん、?」
「ああ。本当は、ミラナには恥ずかしくて見せたくなかったみたいなんだがな、、チェスタがまとめて、ユナの部屋に隠してたみたいなんだ」
「そんなん、、ええの、?」
「ああ、チェスタから許可は出てる。ユナも、きっと今の状況を見たら、頷いてくれるよ」
「...分かった、、じゃあ、開けるで、」
ミラナはゆっくりと、その入れ物を開ける。すると、中には。
「な、なんや、、これ、?」
そこには、何十枚と、ノートを破いてメモとして使っていた様な紙が入っていた。
「日記だ。"ユナ"のな」
「えっ」
「チェスタに、見せてたみたいなんだ」
「こ、これを、?」
ミラナは、頷くエルマンノを見据えたのち、その日記に視線を落とす。
六月一日。
今日から日記をつけ始めます!五月を越えてるので、五月病にはならへん!
「ふふっ、」
今日はねぇねぇと一緒にお買い物に行きました。いつもはケチなねぇねぇですが、毎日お洋服を見つめたり駄々を捏ねてたら買ってくれました!ほんまねぇねぇチョロいわ!
「ちょ、」
六月二十日。
最近雨が多くて施設でも外で遊べていません。それに残念に思っていたら、ねぇねぇが今週末お外で遊んでくれる言うてくれた!すっごく嬉しかった。いつも悲しい時に、それを分かってくれる。私の、大好きなお姉ちゃんや!
ミラナは、震えた手で、一枚。また一枚と紙に目を通していく。
六月二十九日。
今日は台風でした。施設もガタガタと揺れて、雷がピカピカして、ほんま怖かった。一人、また一人と。みんなお母さんが迎えに来て帰って行きます。先生は側に居てくれとったけど、ほんま怖かった。お母さんもお父さんも働いとるけん、迎えに来られへん。寂しいです。そう思っとったら、ねぇねぇが迎えに来てくれました!壊れた傘を持って、走って来たみたいです。代わりの傘は無く、雨が吹き込んできとったけど、ねぇねぇがギュッと抱きしめてくれて、全然寒くありませんでした。ねぇねぇはやっぱり、私のヒーローです。
七月十九日。
今日はねぇねぇと海へ行きました!少し早めの海でしたが、いっぱい人がおりました。人が多くてあまり泳げませんでしたが、ねぇねぇと砂のお城を作ったり、アイスを食べたり、ほんま美味しかったです!ねぇねぇと食べるご飯が、世界一美味しいです!
八月十四日。
花火大会に行きました!今日はお母さんもお父さんも一緒です!ダルコ焼きが熱くてびっくりしました。ねぇねぇもとても楽しそうに花火を見ていました。ねぇねぇが笑っとると、私も自然と笑顔になります!
九月三日。
ねぇねぇが、私が髪の毛を伸ばす言うたら切りなさいって言った!みんな伸ばしててアレンジしとるのに、ねぇねぇは目が隠れてみっともないから切れってほんまうるさい!大っ嫌いや!
九月十日。
ねぇねぇがお姉ちゃんお姉ちゃんってうるさいと!お姉ちゃんの言う事が聞けないのって、、お姉ちゃんはそんなに偉いのでしょうか。
九月十一日。
今日はねぇねぇに叩かれた。私が怒って服を引っ張ったら破けちゃったから。凄く怒られて、怖かった。あそこまで怒らんでええのに。許せない。大嫌いだ!
その夜、私は家出しました。お母さんもお父さんも、とても心配していました。でも、そんな事知りません。ねぇねぇが悪いんです。そう、思っとったのに、雨が降ってきました。寒いです。まだ昼間は暑かったのに、ほんま寒かったです。そんな時、ねぇねぇが駆けつけて来ました。私は話すつもりは無かったです。ねぇねぇも、まだ怒っとると思いました。でも、ねぇねぇは私を強く抱きしめてくれました。ごめんねと。何度も謝ってました。何故だか分からないけど、私も涙が溢れました。やっぱり、傘は壊れとったけど、もう、寒くなかったです。喧嘩ばっかりだけど、その日のねぇねぇはいつも以上に優しかったです。口では言えへんかったけど、ありがとう!
「うっ、クッ、」
ミラナは、嗚咽の様なものを零しながら、次の紙へと、紙を入れ替える。
九月二十三日。
来月の十月十一日に、家族みんながお休みを取れたみたいで、みんなで旅行に行く事になりました!とっても楽しみです!温泉に行くみたいです!ねぇねぇと観光地巡りをしよう約束しました!美味しいものがいっぱいあるとです!楽しみです!お腹いっぱい食べてええよって、お母さんから言われました!迷ってしまいます!お洋服も、何着てこうか、今から考えなきゃいかんと!楽しみで毎日が楽しいです!ほんま待ち遠しいです!
十月十四日。
おおきなじこがあったみたいです。あまり詳しい事は覚えてません。でも、楽しみにしとった旅行に行く時、電車に乗ったのは覚えてます。ねぇねぇが泣いていました。ねぇねぇが泣くと、私まで泣きたくなります。ずっと、泣いていました。お母さんと、お父さんは、別の部屋に居るのでしょうか。私は、ベッドから動けません。病院の先生が、安静にしててと、お薬をくれました。ポーションは苦くて嫌いです。飲まなきゃまた怒られるとです。辛いです。
十月十八日。
お話が出来る様になってきました!でも、ねぇねぇは辛そうなままです。私は聞いても、答えてくれません。大丈夫と言います。大丈夫じゃ、ないのに。
十月十九日。
お薬は今日も苦いです。今日はお客さんが来とったみたいやけど、こっちには来ませんでした。私も行きたかったのに、動いたら駄目やと、言われました。元気なのに、駄目やと言われるとです。私は、壊れてしまったのでしょうか。
十一月二日。
気づいたらいっぱい時間が過ぎてました。どうやら、手術をしたみたいです。回復魔法をいっぱい受けた後は、ポワポワして何も考えられません。何だか、楽しいです。
十一月四日。
昨日からずっと、ねぇねぇはただごめんなって、何度も言ってきます。なんの事かは分からへんかったけど。どうやら、お父さんとお母さんは、死んでしまったみたいです。ねぇねぇが泣きながら先生と話しているのを、聞いてしまいました。辛いです。手術を受けたお腹よりも、胸が、苦しくなりました。
「っ、、や、やっぱ、、気づいとったんやね、」
「...そうだな、、ミラナの言う通り、もう一人の人間で、立派な妹だったんだ、」
突如、啜り泣いていたミラナが目を見開き掠れた声で呟く。それに、エルマンノは恐る恐る割って入ると、それを聞き入れて無言で頷いたのち、続けて紙をめくる。
十一月二十日。
毎日苦しいかったとです。苦いお薬と、お腹が凄く痛くて、いっつも怖かったです。お腹に、かいじゅうでも居るんやないかって。そんな時、ねぇねぇがいつも駆けつけて抱きしめてくれました。夜遅くも、そのまま同じベッドに居てくれました。先生にはいつも怒られてました。それでも私の側を離れなかったねぇねぇは、やっぱり、私のヒーローです。
十一月二十三日。
私が笑うと、ねぇねぇが元気になります。嬉しかったです。私がねぇねぇの笑顔につられるのと同じで、ねぇねぇも私の笑顔に助けられてる言うてくれました。私も、ねぇねぇのために、ねぇねぇを笑顔にしてあげたいです。だから、頑張ります!みんな笑顔で、居続けるために。
「っ、、嘘、そんな、」
ミラナは、それを見て崩れ落ちた。
「っ、大丈夫か、?」
「うっ、、ひくっ、、うぅ、ユナは、、全部、分かっとったんや、、あたしのっ、、あたしのせいで、無理、させてしもうたんや、、あんな、小さな体で、痛くて苦しかったのに、無理に笑わせて、」
「それは違うぞ」
「えっ」
「ユナは、この頑張りに、無理をしてるなんて書いてあるか?」
「書いとらん、、書いとらんけどっ、!」
「きっと、ユナはそんな感覚、無かったと思う。ユナは、ミラナを愛してた。ミラナはユナを愛してた。それぞれに笑顔になって欲しかった。それだけだ」
「そ、そやけど、」
「そして、それはチェスタも、同じだ」
「えっ」
エルマンノはそう告げると、残りの紙に目をやり、ミラナに続きを読む様に促した。
十一月二十四日。
私達の病院に、チェスタっていう子が居たとです!前々からお隣に居て気になっとったけど、改めて今日ねぇねぇに紹介されて、とっても可愛くて、お姫様みたいやった!...お友達に、なれるかな、?
十一月二十五日。
チェスタは無口で、いっつも辛そうな顔をしとります。チェスタも、お母さんとお父さんを亡くしてしまったみたいです。私を救ってくれたお姉ちゃんの様な人は、チェスタには居らんみたいです。やから、私がねぇねぇみたいに、チェスタを支えるお姉ちゃんになりたいです!
「ユナ、」
十二月二日。
最近口を聞いてくれる様になりました!大きな一歩です!チェスタはねぇねぇみたいに、思ったよりチョロいです!
「ふふ、」
十二月三日。
チェスタと好きなものの話をしました!チェスタはせーれーしみゅれーしょん?ってやつが好きみたいです!私には、よく分からへんかったけど、いつか一緒にやってみたいです!
十二月五日。
最近、チェスタからもお話をしてくれる様になりました!毎日楽しいです!ご飯のお話をしました!チェスタはお魚が好きみたいです!私はお肉の方が好きなんやけど、病院のお肉はマズいので、お魚の方が好きです!
十二月七日。
体を起こして、遊べる様になりました!とっても楽しいとです!でも、それでええんかな。チェスタの、ねぇねぇに、ならなきゃ、いけへんのに。
十二月九日。
最近、チェスタが笑う回数が増えて来ました!とっても嬉しいです!私まで元気になります!今日は、チェスタと約束しました!退院したら、家族になろって。私が、お姉ちゃんになるでって!でも、チェスタは私がお姉ちゃんな事に不満があるみたいです。同い年なのにって言うとります!チェスタはわがままです。
十二月十二日。
ねぇねぇが先に退院するみたいです。どうやら、チェスタも退院出来るみたいです!嬉しいです!私も、早く退院して、みんなで仲良く遊びたいです!
十二月十三日。
なんかねぇねぇとチェスタが戻って来ました!退院したのに、また体おかしくなったんかなって、心配しましたが、どうやら私を待っててくれるみたいです!嬉しいです!早く退院して、みんなを安心させたいです!
十二月十六日。
まだかなぁ。なんだか、最近この言葉が口癖になってきてます。いつ退院出来るんかなぁ。そんな事を、いつも思ってます。早く退院して、チェスタのお姉ちゃんに、ならないけへんのに...
十二月二十日。
ねぇねぇが病院から居なくなって、遊びに来てくれる回数も減りました。私がチェスタとばかり遊んどるから、来なくなっちゃったんかな、?会いたいなぁ。
十二月二十八日。
今日はチェスタと遊んでいたら、ねぇねぇが来てくれました!どうやら、ねんまつだからみたいです!でも、なんだが寂しそうな顔をしてます。その時、私はチェスタのお姉ちゃんだけや無くて、ねぇねぇの妹なんを思い出しました。二人とも、大好きな家族です。笑顔にさせてあげたいです!今度は三人で、笑顔で遊びたいです!
「ユナ、」
一月一日。
今日は久しぶりに三人が揃いました!私の大好きな家族で、みんなで遊びました!まだ二人とも辛そうな顔をする時があったけど、楽しそうです!私も、つられて楽しくなりました!それに、後三週間で六歳になるとです!これで、チェスタよりお姉さんになります!言い訳はさせません!
「っ」
ふと、紙をめくる手が止まる。次の紙は、ぐしゃぐしゃで、湿っていた。
一月五日。
なんか、苦しいと。辛いとです。目の前がクラクラします。今日、後一週間も持たないって、聞こえてしまいました。私の事なんかな、?分かりません。でも、最近は調子が良かったので、違う人かもしれへん。そう、願いたいです。だって、チェスタと、約束したから。
「うっ、うぅ、」
ミラナは、そのぐしゃぐしゃになった紙を、上から更にぐしゃぐしゃにする。
「あ、あぁ、、あぁっ、ああぁぁぁぁっ、」
「ミラナ、」
「うっ、うぅっ」
子供の様に泣くミラナに、同じく涙を堪えるエルマンノは、"最後の一枚"を手渡した。
一月九日。
怖いです。辛いです。嫌です、、いや。いやや、、死にたくないと。どうして、どうして私なんやろうか。怖くて仕方ないです。怖い時、いつも、ねぇねぇが居ました。今日も、手を握っててくれました。嬉しかったです。でも、夜になると、一人で。このまま、消えてしまうんやないかって。怖くて、仕方がないです。怖い、、怖いよ、ねぇねぇ。助けに来て、、お願いや。ねぇねぇ、来てよ。
「うっ、うぅっ、ごめん、、ごめんね、」
ねぇねぇは、凄いです。いつも、私の事を助けてくれます。怖い時もあります。ムカつく時もあります。ねぇねぇは自分勝手で、そのくせお姉ちゃんだからって怒ってきます。ムカつきます。それでも、大好きです。最近来られなかったんは、私のためにバイトをしてたって事も知ってます。それでもいつも来てくれてたんを知っています。辛くて、起きてるんがしんどくて。ずっと寝てる時も、ずっとただ手を握ってくれてたんも、知ってます。ねぇねぇはお外遊びが好きで、筋肉が凄いです。私も負けとらんけど、私はねぇねぇに追いつけません。今は魔力がどんどん少なくなっていっとるみたいやけん、もっと弱くなっとるけど、それでも、ねぇねぇがいつも助けてくれます。凄いです。何でも出来ちゃいます。そんな、誰よりも優しくて、私をいつも救ってくれる、ねぇねぇが大好きです。きっと、助けてくれるって、信じてます。
「クッ、、うぅ、、ごめん、、ごめんね、、ごめん、お姉ちゃん、、何もっ、何も、してあげられなくて、ごめん、ごめんねユナ、」
「...」
エルマンノは拳を握りしめて、背もたれにもたれながら、上を見上げる。まるで、その姿を見せない様にするかの如く。
すると、少しののち、エルマンノはその箱に残された手紙を指差した。
「日記は、、これで最後だった。でも、後一つ、残ってる」
「え、」
「ユナが、チェスタに渡した手紙だ」
「手紙、?」
ミラナは掠れた声でそう呟き、その手紙を手に取る。
「...見ても、、ええん、?」
「ああ」
エルマンノが頷くと、ミラナはその手紙を開けて目を通す。と、そこには。
私は、もしかすると居なくなっちゃうんかもしれへん。きっと、考えると辛くなってしまうけん、深く考えずに書くとね。まず、チェスタに、謝らないけへんね。ごめんなさい。お姉ちゃんになるって、約束したんに。果たせんくて、ごめんなさい。でも、なんだかんだ言ってチェスタは優しいからっ、許してくれるかな?それでも、ごめんね。チェスタのお姉ちゃんになって、チェスタを支えたかった。チェスタが苦しいん、知ってた。私も、苦しかった。でも、私にはねぇねぇが居た。やから、私がチェスタのねぇねぇになろう思っとったと。少しでも、代わりになれたらなって。でも、出来なかったね、ごめん。でもね、私、本当の家族だと思っとるよ、チェスタの事。チェスタは友達じゃ無くて、妹の様に、思っとる。友達よりも、もっと近くに感じとる!私、チェスタもねぇねぇも大好き。大切な家族。やから、私のねぇねぇは、チェスタのねぇねぇでもあるから。やから、チェスタはねぇねぇと仲良くしてあげてほしいと。そして、本当の家族になって欲しい。ちょっと恥ずかしいけど、私の日記をあげる!ここには、ねぇねぇのいいところいっぱい書いてあるけん!やから、ねぇねぇの事知って、好きになって欲しいと!ねぇねぇ、きっと私が居なくなったら苦しいと思うから、やから、チェスタが、支えてあげて。お願いな。
「っ、!ユ、、ユナッ、」
ミラナはそう名を呟くと、その手紙を抱きしめる。すると、その中から、もう一枚の封筒が落ちる。
「へ、?」
ミラナはそれを拾い、既に涙で上手く見えない瞳でそれを見据える。
「これって、」
「これは、ミラナへの手紙だ」
「え、」
「本当はずっと前に渡すつもりだったらしいんだけどな、、チェスタが、ミラナがこれを見たら、ただでさえユナを想ってるのに更に思い出して、辛くなるからって、、そして、そしたら本当にユナになってしまうって、怖がってたんだ」
「っ」
エルマンノもまた掠れた声でそう零すと、ミラナはそんな前からチェスタは心配していたのかと目を見開きながらも、封筒から手紙を取り出し目をやる。
と、そこには。
もし、私が居なくなっても、泣いちゃ駄目やで!私にいっつも言ってたやろ?泣かない泣かないって!そして、お願い。チェスタの事、救ってあげて。私を、何度も救ってくれた様に、今度は、チェスタのねぇねぇになって、救ってあげて欲しい。これが、私の最後のわがまま!
「っ」
そして、手紙の後ろにはーー
ーー私の大好きなヒーローへ。
そう、書かれていた。
「っ、、うっ、クッ、、うぅぅぅぅぅぅぅぅっ!あぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!」
ミラナは、抑えていたものが崩れた様に、その手紙を強く握り、泣き崩れた。それを見据えるエルマンノは、ネラに添える手の力を強め、無言で。俯いて大粒の涙を溢した。
「ユナッ、、ユナッ!ユナァァァァァッ!ごめんな、、お姉ちゃん、、やっぱ寂しいわ、、辛いよ、、ごめんね、、何も、してあげられなくて、、ごめんね、、ごめんね、ユナッ、、あたしも、大好きだよっ、、あたしだって、何回救われたか、、分からないよ、、ユナ、ユナァ、、ありがとう、、ほんま、、笑顔をくれて、ありがとう、」
ミラナは、そう掠れた声で、ただ零しながら、時間が流れた。するとふと、手に震えた感触が伝わり、ネラの方を見ると、彼女もまた、声を出さずに震え泣いていた。エルマンノは無言で、ネラの背中を小さく摩った。きっと、話す事はないだろう。ユナの事すら知らない。会った事がないエルマンノに、どうこう言う事は出来ない。だが、それでも。会った事が無くても伝わるくらい。この姉妹は、お互いが大好きで、たまらなかったのだ。
「はぁ、、はぁ、ひくっ、、はぁ、ひくっ、」
ミラナが、少し落ち着いたのか、席へ座り直し背もたれにもたれる。エルマンノは、未だに何も口にはしなかった。きっと、ミラナの中で、既に答えは出ている筈だから。すると。
「「「っ」」」
突如、電車が止まった。いつの間にか、終点だった様だ。エルマンノは仕方がないと。ネラを起こし、荷物を持って皆で停留所へと出る。どうやら、電車内には我々しか居なかった様だ。すると。
「っ、!ミラナッ」
「っ」
そこには、チェスタが居た。それに駆け寄るミラナの後ろで、エルマンノはチェスタの後ろに居るフレデリカやアリア、オリーブ。そしてソフィまで居る事に気づき、目を見開くと、優しく微笑む。
「チェ、、チェスタ、」
「ミラナッ!良かったっ!良かったっ!」
「っ」
途端に、チェスタは駆け寄り、ミラナに抱きついた。それに、ミラナは泣きそうな表情を浮かべながら、抱きしめ返す。
「ごめん、、ごめんね、、心配かけちゃったね、」
「ほんとだよっ、、本当に、、心配かけてばっかり、」
「チェスタ、、ずっと、あたしの心配してくれてたん、?」
「っ」
ミラナのその一言に、恐らく「あれ」を聞いたのだろうと目を見開いたのち、頷く。
「うん、、そうだよ、」
「...そっか、、ごめんね、」
ミラナはそれだけを震えた声で告げると、抱きしめる力を強める。すると、少しののちチェスタは口を開く。
「私、ミラナと、話したい、」
「え、」
「本当の、ミラナと。私の事ばっかり考えない。本当のミラナと話したい」
「チェスタの事、、考えない、?」
「うん。私の支えになりたいとか、ユナの代わりとか、そうじゃなくて、、私は、ミラナと。家族になりたいの、」
「っ」
「駄目、かな、?」
「っ、、い、いぃよ、、ええに決まってるやん、」
ミラナは涙を溢しながら、改めてチェスタを強く抱きしめる。それに、チェスタもまた涙を浮かべる。
「ごめん、、ごめんな、、こんなお姉ちゃんで、ほんまごめんな、」
「分かってるよ、、ミラナの、いいところ。ユナから、毎日のように、嫌になる程聞かされてたから」
「えっ、」
「だから、分かるよ。ミラナが、どれ程凄い人で、素敵な人なのか、、だからこそ、私は、家族に、なりたい、、ミラナ、、ううんっ、お姉ちゃん!」
「っ!う、うんっ、、ごめんな、ちゃんと、、妹として、、チェスタを、見るからっ、、やから、、家族に、、なろっ、」
互いに顔をくしゃくしゃにしながらそう放つ。きっと、チェスタという存在はミラナにとってプレッシャーになっていたのだろう。ユナの大切な友達。家族の居ない子。自分が家族の代わり。ユナの代わり。その使命感が、ミラナを苦しめていたのだ。だが、そうじゃないのだ。ただチェスタは、ミラナと話したかっただけだったのだ。そこに気遣いは要らない。家族の代わりじゃなくて、家族が、欲しかったのだ。それを思い、エルマンノは二人を見つめる中、アリア達の方へと足を進め、小さく呟いた。
「俺が出る幕はないな、」
「そうだね」
「でも、いいんじゃない?抱きつきに行ったら?」
「おお、フレデリカも面白い事が言える様になったじゃないか」
「直ぐにでも抱きつきたいって感じするから」
「バレたか、」
フレデリカは、エルマンノがずっと震えながら赤い目で二人を見据えていたのを見て、小さく告げる。
「でもいいんじゃない?たまには。だって、エルマンノだって、もう、家族でしょ」
「っ!」
エルマンノは先程泣いたのもあり、熱いものが込み上げる。それを、必死に抑えながらエルマンノは微笑んだ。
「そうかもな、、なら、みんなで抱き合うか。今日から、みんな家族だしな」
エルマンノが微笑みながら口にすると、その時。
「うっ、」
「「「「「「えっ」」」」」」
「ど、どうした、?立ちくらみか、?」
突如ミラナが蹌踉け、一同は皆声を漏らす。すると、ミラナは掠れた声で放った。
「ま、まだ、、おる、、ユナが、消えへん、」
「っ」
「嘘、」
未だに、体を飲み込もうとしているのだろうか。ミラナはチェスタという一人を妹と認識し、自分を見つけた筈である。ユナが居ない寂しさが勝ったという事だろうか。それとも。
エルマンノはそう考えながらミラナに駆け寄る。
「大丈夫か!?」
「いやや、、あたしは、、チェスタの、家族に、なるんや、、消えたく、、ない、」
「っ」
その一言に、エルマンノは確信する。ミラナの心境。では無いことを。
「兄ちゃん、、だ、駄目だったん、?」
「ミラナ、」
「えっ、、ど、どうしてっ、何とかなったんじゃないの!?」
「まだ、、だったの、?」
ネラとオリーブ、アリアが放つ中、ソフィもまた待っている間に皆から話を受けたのか、それを理解している様子で放った。そして、対するフレデリカが怪訝な表情を浮かべる中、エルマンノは思考を巡らす。その最中、チェスタが不安げに覗き込む。その表情は、今にも崩れそうだ。
「エルマンノさん、、ど、どうすれば、」
それにエルマンノは歯嚙みしながら、目を逸らし口を開く。
「わ、分からない、、ただ、言えるのは、これは、ミラナの意思じゃないって事だ、」
「えっ、」
「そうだろ、?ミラナ」
「せ、、せや、、消えたく、なか、」
「っ、お姉ちゃん、」
エルマンノの問いにミラナが歯嚙みしながら放つと、チェスタが身を乗り出し放つ。
「お姉ちゃんっ、お姉ちゃんっ!いやっ、私はっ、お姉ちゃんとっ、お姉ちゃんと一緒に居たいのっ、!」
「チェスタ、」
チェスタの言葉にミラナが目に涙を浮かべ、フレデリカが顎に手をやると、エルマンノが目を細める。
「おかしいな、、ユナもチェスタとミラナが仲良くするのを望んでるって事は分かった筈だ、、ミラナもチェスタと家族になりたいという想いがある、、それでも、駄目なのか、?」
「何か、、心に引っかかってるものがあるんじゃない?」
「引っかかってるもの、、ミラナ、分かるか?」
「わ、分からへん、」
フレデリカの促しにエルマンノはミラナに問うものの、彼女は首を横に振る。と、それを見据えていたソフィが小さく零す。
「なんか、、分かる気がする、、私も、頭では分かってても、そう簡単に割り切れないっていうか、、なんというか、」
恐らくラディアの事を思いながらの言葉だろう。エルマンノはそれを察しながら口にする。
「そうか、、って事は、酒の力に頼るか」
「えぇ、ここにきて、?」
「ソフィにとっての対処法はそれだしな、」
エルマンノは半ば冗談混じりにそう口にしながら考える。すると。
「対処法にはなってないよ、、全然、心は満たされないもん。酒で出来るのは現実逃避だけ。その間だって、なんか、引っかかるっていうか、」
「っ、ひ、引っかかる、?」
エルマンノは、ソフィのその言葉に目を見開く。
「うん、、なんていうか、、その、こんな行動で忘れようとしてる自分への嫌気というか、」
「っ、そうかっ」
ソフィの小さく放ったその一言に、エルマンノは目の色を変えてミラナに視線を戻す。その様子に、一同は身を乗り出す。
「な、何か分かったの?エルマンノ、」
「お兄たん、?」
「ああ、、ありがとうソフィ」
「えぇっ!?私!?」
「ああ。恐らくだが、ユナへの罪悪感でこうなってるんだ。ユナを忘れようとしてしまってる自分への恐怖。そして、ユナを消してしまうという罪悪感に、押し潰されそうなんだ、」
「えっ、」
「じゃあ、どうすれば、」
その言葉にチェスタが不安げに声を漏らし、アリアが呟くと、一同は悩む。
その場には、ミラナの荒い息のみが響いた。
すると、少しの間ののち。チェスタは目を見開くと、エルマンノに振り返る。
「お姉ちゃんは、、ユナを忘れてしまうのが、、怖いんですよね、?」
「ま、まあ、、多分だけどな、」
「な、ならっ、その、ユナの、、ユナの誕生日パーティーッ、、やりませんか、?」
「っ!」
「それめっちゃ最高じゃん!マジアガる!」
「そう、だね。うん!やろ!」
「うん!パーティー!」
チェスタの言葉にネラは元気に跳ね、アリアも頷き、オリーブははしゃぐ。対するフレデリカは息を吐きながらもやれやれと微笑み、ソフィは「えぇ」とノリ気では無かったものの、どこか優しく微笑んでいるように見えた。その皆の姿を見渡しエルマンノは微笑むと、「ああ、だな!」と元気に返し、ミラナに視線を向ける。と、対するミラナは今にも泣き崩れそうな表情をしたのち。
「せやなっ!」
と笑い、一同は獣族の村へと向かった。
☆
その後、時間帯もありケーキを買う事は出来なかったものの、帰って改めて事情を説明すると、お姉さん達がコカトリスを出してくれた。どうやら、クリスマス用に用意していたらしい。これは後日倍にして返さなくてはと。エルマンノは感謝しながら、皆で食卓を囲んだ。
「ハッピー バースデートゥーユー。ハッピー バースデイ トゥ ユー。ハッピー バースデイ ディア ユナー。ハッピー バースデイ トゥ ユー」
「何それ」
「誕生日をお祝いする歌だ」
「き、聞いた事ないんだけど、」
「無いのかよ、」
異世界にこの曲がない事を知り、エルマンノは絶望を見せる。だが。
「でもっ、ひくっ、ありがとう、、凄いっ、嬉しいわ、」
「っ」
ミラナは、泣いていた。いや、これはもしかすると、ミラナの中のユナなのかもしれない。それを皆は察し、優しく微笑んだ。
「ずっと、、私に自慢してたもんね、、私よりお姉さんになるんだって、いっつも言ってた、」
「うん、、お祝い、、遅れて、、ごめんな、」
チェスタが小さく笑うと、ミラナは掠れた声で謝る。と。
「これから、毎回ユナの誕生日、お祝いしない?」
「えっ」
ふと、ミラナにチェスタが優しく提案をすると、エルマンノは優しく割って入る。
「そうだな、、ああ、その通りだ。大丈夫。ユナは忘れない。あまり、亡くなった人をお祝いするってのは、いい事じゃないかもしれない。道徳的にもそうかもしれない。思い出して辛くなるかもしれないし、虚しくもなるかもしれない。それでも、それも含めて、誕生日の度に、ユナの記憶を思い出せる。向き合える。それを、ミラナだけじゃない。俺達全員で共有して、背負って生きていこう。それが、家族ってもんだ」
「っ」
「変態さんのくせに、、良い事言わないでください」
「良い事するか」
「違う意味に聞こえます」
「ちなみに、本当の誕生日はいつなの?」
エルマンノとチェスタが話す中、フレデリカが割って入る。と。
「一月二十八日です!」
「だとすると、二ヶ月後にはまたパーティする事になるね」
「まあ、妹とパーティなんていくらでもやっていいからな。それに、ユナも俺の妹だ。妹の誕生日は毎月。いや、毎日お祝いしたいところだ」
「どういう周期なわけ、?」
「っ、、あ、ありがとう、」
いつも通りの言葉を放ちながらも、そのエルマンノの言葉にミラナは俯く。
ユナは戻らない。だが、ユナの居ない世界に悲しむのは、ユナは望んでいないだろう。ならば、笑ってお祝いしよう。大切な、妹の誕生日を。それが、生きた。いや、この世界に産まれて、大切な人達に囲まれている。ユナを想っている人達がこんなに居るっていう、証拠になるから。エルマンノはそう思いながら微笑むと、ミラナは顔を上げて目に涙を浮かべながらもニカッと。まるで子供の様な、無邪気な笑顔で放った。
「ほんまにっ、ありがとうな!今日はいっぱい新しい家族が出来たわ!ありがとうっ、あんちゃん!」
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