第四章 : ぬいぐるみギャルとシスコン馬鹿
第27話「起きた先は妹オールスターズ」
妹達とのパーティ。楽しかったな。だが、やはり、四人か。五人で、やりたかったな。
エルマンノは薄らとした意識の中、昨日の記憶が浮かび上がり、脳内で思う。
と、その後、段々と。意識が明確になっていく。
「...ん、?んん、」
「っ!にぃ!?」「おにぃ!?」
「お、おお、」
目を覚ますと、両隣に妹。そして、奥の席には妹。声を上げる妹達によって、妹声が全方向から聞こえる立体音響。これは、VR以上の至福。妹楽園だ。また一つ、願いが叶ったな。
と、そんな事よりも。
「...と、、いうより、、どこだ、?」
「良かったっ!良かったよ〜!」
「ソフィ酒入ってるか?」
「えっ、こんな時に飲むわけないでしょ!」
「なんか、甘えてるから」
「甘えてるんじゃない!」
「良かったです、、本当に、起きてくれて、」
「まず質問に答えていただけると幸いなんですが、」
「ここは病院」
「っ」
両隣からソフィとラディアが声を上げエルマンノに駆け寄る中、奥の席に座っているフレデリカが小さく呟く。どうやら、エルマンノはベッドの上に居たと思いきやベッドの中にいた様だ。それも、病院の。
「リスポーンされたのか、?」
「違う。あの後、倒れたの。覚えてない?」
「確かに、そんな記憶もある」
「良かった〜!」「良かったです!」
「おおっ!おおぉぉぉっ!なんとっ」
エルマンノに、両方から抱きつく二人。これは、天国か。
それから大体の事を、医師の人からも聞いたエルマンノ。どうやら、あの日魔力増加魔薬のせいで限界がきていたらしい。特に、増加させたのち、大きくそれを放出した事による身体の負荷が大きすぎた様だ。何とか病院で手当を行い、こうして意識を取り戻したという。なんと、三日以上は寝ていた様だ。相当疲労が溜まっていたんだろうな。
「...」
「...」
『今はこうして何とかなっていますが、恐らくこのまま身体に負荷がかかり続ければこちらも対処のしようが無くなってしまいます。もう二度と、魔力増加は止めるようお願いします。また魔力増加魔薬を使用したら、次はないと思っていただいた方が良いかと』
「...」
医師からそんな事を告げられたのち、時間が経ち、ソフィとラディアは帰宅した。そんな中、夕方になっても居続けるフレデリカと二人で、エルマンノは外を眺めた。
「...あの葉っぱが全部落ちたら、俺は死ぬんだな」
「...もうないでしょ」
「俺はもう死んでたのか、」
あながち間違ってないな。エルマンノはそう呟きながら、枯れ切った木を眺める。すると。
「...もう、やめて」
「え、?」
ふと、フレデリカが本を読みながら呟いた。
「音読か?」
「違う」
「...魔力の事か、?」
「そう。もう、、やめて、、お願い」
「...悪い、、頷きたいんだが、、無責任には誓えない」
「可能性があるって事?」
「...それ以外方法が思い浮かばない時もあるはずだ」
「あんた本当に危険な事だって分かってるの?」
フレデリカは、目つきを変えて立ち上がった。
「...分かってるよ。身をもって、、三回も死にかけたんだから」
「ならやめてよ!何でっ、、何でまだ使おうと思うの、?思えるの!?」
「...分かってる、、それにしても、、なぁ。妹が、増えてきたよな」
「何、言ってるの?」
「大切なものが増えてきたって話だ。...だからこそ、俺だって、死のうと思ってるわけじゃない。俺だって、、死にたくないんだ」
「...なら、、何で、」
「言っただろ?それ以外方法が無い時だ。今度からは、、よく考えるよ」
「今までだって、、よく考えた結果だったんじゃないの?」
「俺は馬鹿だからなぁ、、俺のよく考えては当てにならない」
「なら、」
「だから、、フレデリカ。その時は頼むよ。頼りにしてる」
「...」
エルマンノのそれには、確かに案が思い浮かばなかった時に一緒に考えてくれ。そんな言葉のままの思いもあったがしかし。他の妹達を頼む。そんな思いも、あった気がした。
「ふざけないで」
「普段からふざけた様な性格だと真面目に話してても駄目か?」
「違う!」
フレデリカが声を上げ、エルマンノは口を噤む。
「もういい、、でも、絶対に死なせない。まだ、あんたの事殴ってないから」
「...それもそうだな、」
「エルマンノの事だから、、エルマンノが考えて行動すれば良いと思う。自分の意思で、やれば良いと思う。...でも、」
「でも、?」
「私は嫌、」
「...」
「多分、みんなも、、絶対にあんたを死なせたくなんか無い」
「今日の反応で、、分かるよ」
「当たり前でしょ、、みんな、、それに私だって、、迷惑で、遠回しで、卑怯で、酷いやり方しか思いつかないけど、、そんなあんたに、救われたんだから」
「酷い言われようだな、」
「それでも、みんなあんたの事が、、すーー」
「エル!?大丈夫なの!?」
「「っ」」
エルマンノとフレデリカが放つ最中、突如病室のドアを開け母親が入ってくる。それに二人は驚愕に振り返った。その時のフレデリカの瞳には、涙が浮かんでいた。
「っ、あ、貴方は、、っ!もしかしてエルのガールフレンド!?あ〜、もう、ちょっと前まで赤ちゃんだったのにっ、いつの間にこんなにおませちゃんになっちゃって」
「ちっ、違います、」
「違うの?」
母はそう言うと、フレデリカを通り過ぎてエルマンノに視線を送る。と。
「断じて違う。フレデリカは妹でーー」
「それも違うから!」
「あぁ、えと、」
フレデリカはそうエルマンノの声をかき消すと、そのままズカズカと母親を横切り出口へと向かう。それに、母が声を漏らすと、その途中で突如止まり振り返る。
「すみません。ちょっと、頭に血が上っちゃって」
「ナースコールしてやろうか?」
「あんたは黙ってて。その、私フレデリカって言います。エルマンノとは、、そういうのじゃありません。家が近いので、たまに会うくらいです」
「えっ、家が近いって、、あの魔獣の居る森から?」
「はい。森の中に家があります」
「家というよりかは小屋だな」
「こらっ、失礼な事言うんじゃありませんエル!」
「はぁ、、どうしてこんな良いお母さんからこんな狂った人が出来上がるのか、」
「聞こえてますが」
「聞こえてますよ?」
「...す、すみません、、今日は失礼します」
「別に気にしなくていいのよ?気まずかったら私達部屋から出るから」
「その提案逆に気まずいです」
母とフレデリカの会話に、エルマンノが小さく「私達、?」と呟く中、彼女は頭を下げて踵を返した。だが、病院から出る瞬間、何かを思い出した様に声を漏らすと、振り返って放った。
「あと、オリーブが凄く心配してた。前の鍋パーティーの事もあって、村の人からは外に出るのは駄目だって言われてて、ここには来れてないみたいだから。今度顔出してあげて」
「っ!...分かった。あ、ありがとう」
「ん」
エルマンノの返しに小さく頷くと、そのまま早足で病院を後にした。すると、それとすれ違う様にして今度は父が現れた。
「なんだエルマンノ。心配して病院に来たら、またたぶらかしてたのか?」
「違う。あれは妹だ」
「たぶらかしてたんだな」
「あの子、家の近所の子みたいよ?」
「え?あの魔獣の森の近所?」
「森の中みたい」
「変わった子も居るんだな」
「一番言われたく無いと思うが、」
父と母の会話にエルマンノが呟くと、二人は改めてベッドの周りにまで駆け寄った。
「それで、大丈夫なの、?エル、」
「ごめん、、心配かけて、」
「心配なんてもんじゃ無い。突然部屋に引きこもったと思ったら、夜遅くまでどこかに行って、そしたらこんな事になって」
「ごめん、」
「本当に心配したのよ?」
「...こ、こんな時に言うのもあれだけど、、その、母さん、ソナーの音、消えた、?」
「...やっぱり、、その事だったのね、丁度治った時期と一緒だったから、そうかもって、思ってたの」
「っ、、じゃあ、ソナーは、、止まったんだな、」
無言で頷く母に、エルマンノは安堵する。やはり、もう大丈夫みたいだ。二人は均等に魔力が分散されて、程よい魔力になったということだろう。
「あの閉鎖空間も、お前の仕業なのか?」
「...あ、あれは、、色々あったんだ。...あれを止めるために、、魔力増加魔薬を使った、」
「大したもんだな。...あれに対抗できる程の魔力を、いくら魔薬の力とはいえ、生み出せたなんて」
「やっぱりエルは天才なのかもしれないわね!」
「...その、、ごめん、」
「まあ、父さんも昔はやんちゃしてたもんだ。この歳でそれくらい出来なきゃ、冒険者にはなれないからな」
「冒険者になるつもりないんだけど」
「だが、今回のはまた別問題だ」
「え、」
「下手したら死んでたんだぞ?エルマンノ。周りを頼ったり、他の方法を探しなさい。自分の魔力の中で出来る事を、考えなさい。そうやって魔薬に頼ってばかりだと、いつもそれを見越した、自分の力以上の考えしか出来なくなるぞ」
「...ごめん、」
エルマンノは、小さく呟いた。確かに、それはそうだ。いつも命を賭けたやり方しか考えられなくなるのは、問題だろう。足りないのなら、足りる様に力をつけなくてはならない。
「そう、だよな、」
エルマンノはぼやく。こんなにも、心配してくれる人が居るのだから、と。
「ま、でもとりあえず何ともないみたいで良かったな」
「何ともないわけじゃないでしょ!」
「まあまあ、でも、本人は元気そうだぞ」
「はぁ、、ほんと、甘いんだから、」
「エルマンノ。この調子なら明日には退院出来そうだってさ。まあ、病院には通わなきゃいけなくなるだろうけどな」
「そうか、ありがとう」
「外に出た瞬間ハッスルするなよ?」
「しないよ。外に出たのに中に入るわけがない」
「外に出たからこそじゃないか?」
「んっん!」
「おお、、わ、悪い、」
エルマンノと父のとんでもない会話に母が強く咳き込んで止めると、夜になるまで二人と会話をしたのち、エルマンノは眠りについた。
きっと、寂しくならない様に、居てくれたのだろう。それを思うと同時に、エルマンノは前世の両親を思い出し、僅かに胸を痛めた。
☆
翌朝、家族と共に家へと戻り、お昼まで安静にしながら家族で過ごしたのち、エルマンノはオリーブに声をかけに行かなくてはと席を立った。
「エル!駄目でしょ!まだ寝てなさい!」
「ごめん、でも、みんなに挨拶しに行かなきゃ、、心配してるって、フレデリカも言ってたから」
「それでも駄目です!」
「まあまあ。ずっと病室のベッドだったんだ。歩かせてあげようじゃないか」
「っ、いいの!?エルがまた知らない内に苦しんで、また倒れたりなんてしたら、」
「母さん、ありがとう。心配してくれて、、でも、俺は大丈夫だから。昨日から、考えた。もう、そんな事をするつもりはないよ」
「けど、」
「行ってこい。帰りが遅かったら、迎えに行く」
「っ、、ありがとう。行ってきます!」
エルマンノは父に背中を押される様にしながら、家を飛び出した。どうやら、背後で母に咎められている様子の父。ありがとう。君の死は無駄にはしない。まるでエルマンノはそんな胸熱シーンの様なノリで、獣族の村へと足を進めた。
と、森を歩く事、数分後。
「っ!」
カサッと。ふと茂みの方から音が聞こえた。
「...魔物か、?」
普段なら何とも思わないものの、現在はただでさえ魔力の無い危険状態である。今に魔物でも出てみろ。きっと餌になる他ない。
「クッ」
故に、身構える。音を立てない様に、ゆっくりと、ゆっくりと進む。だが、匂いを嗅ぎつけているのか、何故かその音は近づいてくる。
ーマズいな、、いっそのこと逃げるかー
エルマンノは冷や汗混じりに静かに動いても駄目ならばと。足を強く踏み出した。と、その時。
「っ!?」
「いっ!?」「った!?」
突如横の茂みから現れた何者かと衝突し、エルマンノとその人物は倒れ込んだ。ん?人物?
エルマンノはこんな森の中に、と言わんばかりに怪訝に思いながら目を開く。と、そこには。
「っ!」
「い、、いったた、、えっ、」
「何やってるんだ?」
「えぇっ!?エルマンノ!?」
何と、行方不明だったアリアがそこには居た。再会が呆気なさすぎる。
「エルマンノ!?じゃない。ここに居るって事は俺に会いにきた様なものだ、、っ!そうかっ、そういう事か!悪かった、、意味を汲み取れなくて、、だが、ありがとう。兄に、会いたかったんだな、、助かったよ」
「え?どういう事、?」
「シチュエーションは僅かに違うが、妹と衝突で再会なんて一度は経験してみたいだろ?」
「意味分かんないのは健在なんだ、」
「ん、?どうしたんだ?」
「ふふっ、ううん、、なんか、安心しちゃって」
あの時と全く同じ。フードを深く被って地味な服装で居たアリアに、エルマンノは立てるか、と。手を差し伸べる。
「あ、ありがと」
「そろそろお兄ちゃんと呼んでくれても良いんだぞ?」
「よ、呼ばないっ!」
「えぇ、なんでだよ、」
「そ、、それより、、私の事、まだ、妹だって、、思ってくれてるの、?」
「当たり前だ。妹はな。ずっと妹なんだよ。簡単にはやめられないんだ。妹が生まれて、親から構ってもらえなくなって、兄がもう妹なんていらないとか言って、家を出る。それでも、その二人は兄妹なんだ。分かるか?」
「え、分からない」
「なら、親が離婚して、別の家庭に行ったけど、転校を繰り返したのち、大きくなって二人はまた出会う。そこで恋に落ちるものの、その相手は元々兄妹だった。その時も、兄妹は兄妹だ」
「え、更にごちゃごちゃして分からなくなってきた、」
「つまり、妹は家族なんだ。彼氏彼女みたいに、そう簡単に別れられるものでもないんだ。ずっと、妹は妹だからな」
「っ、、そ、そっか、、というか、一番最後が一番分かりやすかったんだけど、」
「理解力が上がった証拠だな」
「絶対違うと思うけど、」
エルマンノが流石は妹と。そう鼻を鳴らしながら放つと、改めてアリアは俯きながら口を開いた。
「ごめん、、なさい。私、、勝手に、居なくなって、」
「...まぁなぁ。でも、家出する妹の方が、感情を溜め込まないだろうし、ちょっと安心だな。まあ、その先の様子が心配ではあるが」
「...また、そんな事言って、」
「それよりも、俺の方こそごめん」
「え!?」
突如頭を下げるエルマンノに、アリアは驚愕する。
「なななっ!何でエルマンノが頭下げるのさ!やめてっ、やめてよっ!そんなのっ!」
「アリアの事、何も分かって無かったんだ」
「え、」
「俺は、本当はいつも気になってた」
「えっ!?わ、私の事!?」
「ああ。どこから来たのか、、何でここに居るのか、一体君は誰なのか、とか」
「あぁ、なるほど、、そう、ねぇ、」
アリアは何故か。別の答えを期待していたのか目を逸らす。だが、対するエルマンノは変わらず真剣に続けた。
「それでも、アリアは言いたくなさそうだったし、聞くのもあれだから、、あえて聞いて無かったんだ。言いたくないことも、そりゃ誰にだってある。言えない事も、兄妹間には沢山あるはずだ」
「...エルマンノ、」
「だから、聞かなかった。でも、そう、思ってただけだったんだ俺は!」
「えっ」
「怖かったんだ、、どこかで、それを聞くのが。だから聞こうとしなかったんだ。アリアの明るさによって、今のままなら何でも良い。そう、思ってしまってたんだ」
「え、、わ、私の、、明るさ、?」
「ああ。いや、思ってたとかじゃないな。...俺は、逃げてたんだ。ずっと。アリアと向き合う事から。頭では分かってた。それでも、向き合わなきゃいけないのに、、それが出来てなかった」
「...エルマンノ、、そんな事ない、、私は、深い事は聞いて来ない。そんなエルマンノに、救われた。だから、、そんなに気にする必要は、」
「いや、それは救われてない」
「えっ」
エルマンノは、真剣な表情でアリアにじりじりと近づく。
「こ、、怖いよ、、エルマンノ、」
「...アリア。そういう言い方するなよ」
「え、」
「聞かない方がいい事も勿論ある。でも、アリアはここにまた戻ってきた。俺の家に来たのも、、きっと、困ってたからだろ。行く場所が無くて」
「っ」
「...その根幹の問題がまだ解決してなくて、困ったままなんだろ、?それの、どこが救われてるんだ」
「そ、それは、」
「確かに、物分かりのいい、優しいお兄ちゃんでありたい。でも、それが本当に妹のためになるのか。そう考えながら、本当の兄は、嫌われ役をやらなくちゃいけなくなる時があるんだ」
「...」
エルマンノの言葉に、アリアは俯く。そんな彼女に、エルマンノは真剣に。だが、優しく、問うた。
「だから、悪い、アリアにとっては嫌かもしれないが、聞かせてもらう。一体、何があって、どうして俺の家に住もうと思ったんだ?」
「...」
彼女の目の前で、エルマンノは対等な立場だと告げる様に僅かにしゃがみ目線を合わせながら、それを口にした。すると、彼女は少しの間目を泳がせ悩んだのち、手をギュッと握りしめて呟いた。
「もう少し、、もう少しだけ、、待って、くれないかな、?」
「ん?」
「私、帰る場所が無いの。それだけは、、言える、、詳しい事は、、少し、待って、」
「それだけがめちゃくちゃ大変な事なんだが?」
「う、、そ、そう、だね、」
この世界にも宿はあるものの、彼女一人じゃ怪しまれる可能性がある。せめて、冒険者ならば怪しまれないかもしれないが、一人のパーティなんてものは存在しないし、中々見つけるのは難しいだろう。それに。
「後、お金は?」
「む、無一文、」
「文無しに用はないな。帰った帰った」
「えぇっ!?酷くない!?ここお店だったの!?」
「ははっ、やっぱ変わらないな」
「え?何、今のは何!?冗談!?」
「ああ。冗談抜きでな」
「ムッカァ、エルマンノこそ、相変わらずそういうところ変わってないね!」
「そんな数週間で変われたら苦労しないよ」
「っ、、ま、まあ、それも、そうだね、」
小さく縮こまりながら呟くアリアに、エルマンノは懐かしさを感じながら微笑むと、そののち。
「あ、それよりも今からオリーブのところに顔出しに行こうと思ってたんだ。悪いが、詳しい話は後だな」
「あ、うん、、別にもう話無いんだけど」
「無いのかよ」
「え、うん、」
「お兄ちゃんと感動の再会だぞ?もっと話す事あってもいいだろ。例えば、こんなに背が大きくなったんだよ!とか、もう、子供じゃないんだからねっ、とか」
「それ何歳から何年会ってない設定なの!?てかっ、それでも私そんな事言わないから!」
「えぇ、マジかよ、」
「マジです〜!」
「まあ、早く帰らないと今日は父親が召喚されるんだ。悪いが、獣族の村に行くから後でな!森の中で待っててもらえると助かる」
「何でこんな魔物がウヨウヨ居る森に放置しようとするわけ!?というかっ、そのっ、えと、私もオリーブちゃんと、、会いたい、」
「っ、、そうか。よし!じゃあ付いて来い!」
「な、何で仕切ってるの、?」
アリアはジト目を向けながらも、エルマンノと共に獣族の村へと向かうのだった。
☆
「はぁ、はぁ、オリーブ〜、居るか〜」
数十分をかけ、お婆ちゃん達の家に到達したエルマンノは声を上げた。獣族の村は大雨だったがためにここまで来るのが大変であった。
「っ!お、お兄たん!?お兄たんっ!良かったっ!大丈夫だったの、?」
「ああ。お陰様でな」
「わ、私、、何も、出来てないよ、?」
「そんな事ない。いいか?お兄ちゃんはな。妹からの想いがあれば何度でも蘇るんだ」
「そ、そうなのっ!?」
「ああ。しかもオリーブは神様だもんな。オリーブの願いは特別だろう」
「そっか、、良かったっ!良かったよお兄た〜んっ!」
よしよしと。着いたや否や、エルマンノの声を聞きつけ走ってきたオリーブを抱きしめ、号泣する彼女の頭を撫でる。
「おお、エルマンノさんかい!良かった〜、オリーブから大体のことは聞いとるよ」
「ああ、その、すみません、心配かけて、」
「本当じゃよ。あれ程危ないと言ったのに」
「あの変な幕みたいなの、エルマンノさんが取ってくれたんだろう?」
するとふと、オリーブとの感動の再会の最中、家の中から祖父祖母オールスターズが登場し、エルマンノは立ち上がる。
「いえ、その、正確には俺の妹がですけど」
「どの妹だい?」
「あ、あれ、?あ、、あり、、あ、?」
「っ!や、やほ、、ひ、久しぶり、、オリーブちゃん、」
「っ!」
「ああ、気づいたか。流石妹。姉妹愛は美しいな」
「アリアァァァ〜〜ッ!」
お婆ちゃん達との会話の中、エルマンノの意味不明な言葉を無視し、オリーブはアリアに駆け寄る。
「っ、オリーブちゃん〜!久しぶりっ!良かった、、元気そうでっ!本当にっ、、ごめんね、、ごめんね、、ずっと、、来れなくて、」
「ううんっ、良かった!良かったよ〜!アリアッ、ひっく、良かった!会いたかった、、ずっと、、ずっと待ってたの、!会いたいって、、ずっと!」
「っ!...オリーブちゃ〜んっ!ごめんねぇ〜!」
号泣するオリーブに、アリアもまた顔をくしゃくしゃにして大号泣する。
ーあれ、なんか俺の時よりも二人して感情昂ってね、?ー
エルマンノは僅かに悲しみを感じながらも、二人の様子に微笑む。
「にしても本当に良かったよエルマンノさん。どうやら、死んじゃってもおかしくないみたいだったようじゃない?」
「ああ、はい、そうみたいです。これからは自粛しますよ」
「うん。そうだね、、エルマンノさんが苦しむと、誰よりも、オリーブちゃんが悲しむから」
「はい、」
アリアとオリーブを見据えながら、村の人達と言葉を交わすエルマンノは、目を逸らした。そんな皆に、ふと太陽の光が降り注ぐ。どうやら、もう雨は降らなそうだ。
☆
「それで、、その、」
「どうした。言ってみていいんだぞ」
モジモジとするオリーブに、エルマンノは真剣な表情で詰め寄る。
「あ、あの、、えと、」
「どうした。お兄ちゃんには言いづらいのか?いや、お兄ちゃんだから言いづらいのか?...そうか。でも、大丈夫だ。俺達は幸い血は繋がってない。お兄ちゃんは何でも受け入れよう。オリーブが望むのなら」
そう告げ、エルマンノは手を広げオリーブに向かう。と。
「はいはいもういいから」
「えぇ、今からがいいところなんじゃないか、」
「何を始める気だったの!?」
それを遮るようにアリアが頭を軽く叩くと、エルマンノはジト目で放つ。それにアリアが顔を赤らめる中、オリーブは俯き気味に口にした。
「その、、信じて、、もらえないかも、だけど、」
「お兄ちゃんは何でも信じるぞ」
「え。じゃあ私が宇宙人って言ったら信じるの?」
「えぇ、、マジかよ、」
「いや信じないでよ!」
村の人達曰く、前々からオリーブは何かに悩んでいる様子だったという。それをエルマンノに話そうとしていたのだが、ここ最近バタバタとしており、中々言い出す機会がなかったとの事だ。兄として不甲斐ない。妹全員を気にかけなくては、兄失格だ。
エルマンノは自身を悔やみながらオリーブの話を改めて真剣に聞いていた。すると。
「その、えと、ま、前、ぬいぐるみ、、貰ったでしょ?」
「ん?ああ、カラオケ大会の景品のやつか」
「え!?カラオケ大会なんてやったの!?へぇ〜、いいなぁ」
「アリアは音痴だろ」
「何で決めつけるの!?」
「お風呂から聞こえてきてたぞ」
「っ!あ、阿保!何勝手に聞いてるの!?」
「大熱唱しておいてなんと傲慢な、、森の中じゃ無かったら近所迷惑だったぞ」
「そ、そんなに大声で歌ってないし!」
「俺の家のお風呂で、裸の妹が歌っている歌だと思うと、一日の疲れも吹っ飛んでたなぁ」
「元気になりすぎじゃない、、それ、?」
「むー!」
「ああ、ごめんごめん」
「っ、ごめんねオリーブちゃん!この阿保のせいで、」
「最初に遮ったのはアリアじゃないか?」
エルマンノの呟きに「悪口言ったのはエルマンノの方だよ」とアリアは返すと、オリーブが続けた。
「その、、その時のぬいぐるみさん、、凄く、大切にしてたの、」
「嬉しいな、、お兄ちゃんだと思ってくれてたのか」
「誰も言ってないって、」
「いつも、、一緒にいたの、、名前はお兄たん、」
「え、?ほ、ほんと、?」
「ほらな」
エルマンノは驚愕するアリアにニヤリと返すと、オリーブは尚も続けた。
「その、神社で過ごす時も、下に降りてみんなと遊ぶ時も、ご飯の時も、寝る時も、」
「おぉ、寝る時もか」
「何想像してるの?」
「お兄ちゃんの匂いする、、んんっ、とか、言ってたのかなと」
「何で景品からエルマンノの匂いがするの、?」
「それで、、そんなに一緒に居るぬいぐるみ、持ってないみたいだけど、、まさか、ぬいぐるみが無くなったとかか、?」
「ううん、、違うの、その、夜、、夜ね、私一人だったの、、神社で、寝ようとしてた時に、」
「「うん、」」
夜に。そんな、寝る時も一緒なんて話の後にするが故に、エルマンノは変な想像をしたものの、オリーブの真剣な表情。まるで怪談話でもする様な表情にゴクリと生唾を飲んだ。すると、少しの間ののち、オリーブは呟いた。
「突然、、お願い、、お願いって、そのぬいぐるみさんが、、話し出したの」
「「え、」」
いやガチ怪談じゃん。トイレ行っとくんだった。エルマンノはそう脳内で呟きながら、冷や汗を流した。
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