第22話「酒好き妹のお宅訪問」

「おはよう」

「おはよう、エル」

「...」

「...?」


 エルマンノは目覚めるとリビングに顔を出し、母に挨拶を口にした。それに返す母の表情で、これは間違い無いと息を吐く。


「大丈夫。言いたい事は分かってる」

「...エル、」

「ちょっと、行ってくる。確認したい事があるんだ」

「あっ、ちょっと、エル、」


 エルマンノはそう口にすると、家を飛び出した。そんな彼に手を伸ばす母は、小さく、我が子の名前を呟いたのだった。


          ☆


「ふふふん、、ふんふんふふふ、」

「おはよう。妹」

「はっ倒すよ?」

「そろそろ妹と認めて欲しいんだけど、」

「認める点が見つからない。私が駄々を捏ねてる様な言い方しないで」

「妹は多少駄々っ子の方が萌える」

「はぁ、なら、あんたを蹴飛ばして家から放り出すのも萌えるわけ?」

「ああ」

「なら」


 朝。そのままフレデリカの実験室に顔を出したエルマンノは、真剣に頷くと、それに対して本当に蹴飛ばそうと構える彼女に、慌てて声を上げる。


「ち、ちょっと待ってくれ!蹴ってくれるのはありがたいが、一つ、、話がある」

「一つだけ?」

「あー、なら、二つ」

「じゃあ嫌」

「えぇ、、ランプの魔人ですら三つまで聞いてくれるぞ、?」

「心が広いんでしょ?その魔人」

「フレデリカも心が広いと、お兄ちゃん信じてます」

「はぁ、」

「それにしても、今の鼻歌、あの時の歌だよな?あのライブの一回で覚えたのか?」

「はっ!?な、何勝手に聞いてんの、?」

「天才だなと。はっ倒してくれるのか?」

「はぁ、、もういいから。で?話って何?」

「突然素直になったな」

「話が進まないから」


 エルマンノが先を読んで放った言葉に、呆れた様にため息を吐いて席に座るフレデリカ。そんな彼女に、エルマンノもまた微笑みながら隣の席に座る。


「その、ラディアの事なんだけど」

「まあ、大体そうだろうね。とりあえず、昨日のは成功したんじゃない?口パクだったけど」

「え、?何で分かったんだ、?」

「見れば分かるよ。あんたの演奏、ズレ過ぎ」

「そんなにお兄ちゃんのこと見ててくれたのか」

「浮いてたって事」


 エルマンノが微笑みながら頬を赤く染める中、フレデリカは淡々と返す。


「それで、、さ、ラディア、その時悔やんでたんだ」

「それはそうでしょ。口パクなんて」

「いや、結局、口パクは成功だった。きっと、口パクじゃ無かったら、言葉が出てこなくて、ライブは失敗してたって。そう本人は言ってた」

「なるほど。その、自分に対しての嫌悪が、彼女に芽生えたって事ね」

「ああ。でも、ラディアは立派だった。そんな自分を変えるために、努力するって、目標を立てた。だから、大丈夫だと思ったんだ。ただ人気が出て欲しい。ライブハウスを建て直して、みんなに恩返しをしたい。そんな、方法もわからず願ってた頃とは違って、明確な目標が出来て、どうするべきかも分かった。だから、もう、ラディアは大丈夫だと思ったんだ」

「その言い方からすると、ソナーはまだ収まってないって事?」


 エルマンノは、フレデリカの問いに、無言で頷いた。


「はぁ、、そういう事ね。だから言ったでしょ?あんたが手を貸した分、きっと、前よりも期待してしまう。自分が有名になる道が見えた方が、それを望んでしまう。結局、彼女が満足するまで、ソナーは止まらないんだと思う」

「ああ。俺も、、そう思ってた。でも、昨日、少し気になる事を言ってたんだ」

「気になる事?」

「ああ。今までは、"バンドのメンバー"が居たから、ライブも大丈夫だったって。お互い不安だったけど、お互いが居たから、みんな安心出来たって。そう、言ってたんだ」

「そこまで分かるなら、私に話を持ちかける必要無いんじゃない?」

「一応、話しておこうかと。それに、フレデリカの意見が欲しい」

「...はぁ。私も、嫌だけど、多分あんたと一緒の考え。そこまで安心出来るメンバーが居て、解散したのか、今は一人になってる。昨日ので、きっと、彼女も分かった筈だよ」


 フレデリカがそこまで言うと、エルマンノも僅かに頷きながら彼女に視線を向ける。と。


「心のどこかで、ずっと、メンバーを求めているって事」

「やっぱ、、そうだよな、」

「それがソナーに繋がってるのかは分からない。私もなんとも言えないけど、、可能性はあると思う」

「フレデリカも、、そう思うか?」

「言ったでしょ。嫌だけど、考えは一緒。きっと、あの時のメンバーを求めてて、その人達に届いて欲しいから、ソナーが出てしまってる。彼女がソロになって、少しした後にソナーが出た。それも、メンバーが恋しくなって、求め始めた。そんな心の変化を想定するなら、辻褄は合う」

「やっぱ、そうだよな、」


 フレデリカの仮説を、悶々と頷きながら聞き入れると、よし、と。息を吐いて席を立った。


「サンキュ、フレデリカ。今日、俺がやらなきゃいけない事。何となく分かった気がするよ」

「言っておくけど、あくまで仮説だから。それでソナーが止まるとは限らない」

「ああ、それでいい。仮説を立てたなら、可能性が低くても実証しなくちゃな。それが、実験ってもんだろ?」

「...はぁ、あんたが何実験を語ってるの、?」

「フレデリカに、教えてもらったんだ。実験の楽しさと、レシピの無いものは様々な可能性を試さなきゃいけないって事を」


 エルマンノはそう微笑むと、呆れた様子のフレデリカは息を吐きながらも彼を見送った。


          ☆


「居るかー、ラディア〜」


 ドンドンと。彼女の実家に平然とノックしながらエルマンノはそう口にした。すると。


「何の用ですか?」

「これはラグレスさん、元気してます?」

「元気なわけがあるか、、ヘラ様を、、知らぬ間に連れ回していたというのに」

「あ、バレてましたか?」

「家に来ていたの、知っていますよ」

「どうやって?」

「毛が落ちてました」

「脱がせてないですよ」

「そっちじゃ無い、獣族の髪です」

「毛だけで分かるんですか、、俺と似て相当ヤバいですね、」

「ヘラ様の毛は少し違います。勿論、土地神の力も宿っている筈です」

「確かに、魔法モノで髪の毛とかって重要ですもんね」

「何の話ですか」

「いえ、こちらの話です」


 エルマンノは玄関の前でラグレスとそんな会話をしたのち、改めて問う。


「その、ラディアって居ますか?」

「居ないですよ。それよりも、詳しく聞かせてください。まだ、私は貴方を許してはーー」

「分かりました。ありがとうございます」

「なっ!?お、おいっ」


 エルマンノはラディアが居ない事を知ると共に、その場を後にした。丁寧語なラグレスの口調が砕けている点から、相当お怒りの様だ。時には逃げる事も必要だ。恥ではあるが、役に立つ。


「居ないとなると、、多分、あそこか、」


 エルマンノは可能性を考えながら足を進めた。


          ☆


「ふ〜、、あ、あっ、あ!」

「やっぱりここか、」

「えっ!?エル、、あ、お兄ちゃん!?」

「マイクテストですか?」

「...マイク、、って、何ですか、?」

「そうか、、マイク無いのか、、じゃあ、魔力テストですか?」

「あ、、は、はい、そ、そう、ですけど、」


 以前案内してもらったライブハウス内。恐らく、いつもの掃除を終わらせた後か、現在は一人でライブの練習をしていた。


「次、いつでしたっけ?ライブ」

「え、?あ、ら、来月です」

「引越しは大丈夫なんですか?」

「はい、、一週間違いで、、何とか、」

「そうですか」

「もし引越しした後でも、ここまで来てライブしてますよ。こんなチャンス、逃せるわけありませんから」

「...それも、そうですね」


 エルマンノは彼女が懸命に掃除したであろう室内と、一人で練習を重ねているだろう姿に、口元を綻ばせる。


「あの、そんな時に悪いんですけど、一つ、聞きたいことがあって」

「え、あ、はい、」

「その、、いや、ソナーが出てる理由、何か分かったりしませんか?」


 あえて、エルマンノはそう切り出した。バンドメンバーとどういう関係なのか、何故今はソロ活動中なのか、その理由が分からない以上、突然メンバーの話を聞くのは、あまり気が乗らなかったからだ。


「え、、も、もしかして、まだ、ソナー、、止まらないんですか、?」

「まあ、、そうですね」

「そ、そんな、、す、すみません、」

「いや、別にラディアが謝る必要無いですよ。というか、ラディアの方が辛い思いをしてしまうでしょうし、それを回避するためにも、、何か、心当たりとか、ありますか?」

「心当たり、、やっぱり、、私の曲を、心のどこかで聴いてほしいと、、願ってるから、ですかね、」

「誰にですか?」

「え、、そ、それは、、皆さんに、」

「確かに、そうですね。...でも、その中でも特にって方、居ませんか?」

「っ」


 ラディアはそれに目を見開く。ダメ元の言葉だった。もし、バンドメンバー以外の人に、そんな思いのある人がいるならば、その人を捜さないといけなくなる。そのため、一応と。ダメ元で聞いてみたのだが。


「...ソ、ソフィ、」

「え、?」

「...な、何でも、無いです、」

「何か、、心当たりあるんですか、?言いづらいかもしれないですけど、、貴方が引っ越す前には、そのソナーを、止めてあげたいんです」

「...え、、えと、その、、前のバンドメンバーです、、凄く、仲が良くて、」

「っ」


 エルマンノは目を見開く。やはりか、と。


「確かに、、その人には、私がこうなった姿、見せたいです」

「なるほど。今の自分を、見てもらいたいんですね」

「はい、、許せなくて、」

「え、?」


 予想外の返しに、エルマンノは声が裏返る。


「その人、自分勝手で、ほんと、許せないです!あの人のせいですよ!ソロになったのは!最初は三人だったのに、あの人のせいで二人になって、それでも、仲良くて、頑張れてたのに、、ほんと傲慢でっ!それで、私、一人でも人気者になれるって、そう見返したいんです!」

「あー」


 なるほど、そっちか。エルマンノは棒読みでそう返した。だが、確かに未練が残されているという点ではその可能性は高いだろう。エルマンノは浅く息を吐くと、ラディアの前にまで歩みを進め、そう口にした。


「その人、今どこに居るか、知ってますか?」

「え、?そ、それって、」

「良いですよ。無理に合わせるとかはしませんし、しなくていいです。ただ、俺がその人と会って、話してみたいんです。ラディアの頑張りを、伝えに行きたいんです」

「...そ、それは、」

「嫌ですか?それとも、住所分からないですか?」

「いえ、、その、場所は、、分かります、昔、二階建ての貸家の、一階に私が、二階にソフィ、、が、住んでたんです。私は解散した後実家に戻りましたけど、あの人は性格的に帰らないでしょうし、お金も無いので引越しもしてないと思います」

「なるほど、、それなら、鮮明に分かりますね、、すみません、これに住所と簡単な地図お願いしても良いですか?」

「行っていいって言ってないですよ!?」

「と、言いながら書いてますけど」

「う、」

「ツンデレだなぁ。本当は、会ってきて欲しいんじゃ無いですか?」

「ち、違いますよ!」


 ラディアはそう口にはしながらも、住所と地図を書いてエルマンノに渡した。恐らく、心のどこかで頑張りを伝えて欲しいと。そして、その人は今どうしてるのか。きっと気がかりだったのだろう。だからこそ、ソナーの原因である可能性が高いと、エルマンノは踵を返した。


「ありがとうございます!行ってきます!」

「あ、そのっ、元気かどうか、聞いてきてください!あと、私は、元気だって!」

「フッ、、分かりました!」


 素直じゃないな、と。エルマンノは微笑みながらライブハウスを後にした。


          ☆


「...ここか、」


 数分後。エルマンノは地図を見ながら目的地へと到着した。


「いや、本当にここか、?」


 ふと、不安になる。もしノックしてクソデカい不良みたいな奴でも出てきたら、失禁する可能性がある。


「先にしておくか」


 エルマンノは謎理論で近くのトイレへと入ったのち、改めてその貸家の二階へと登っていく。

 見た目は確かに異世界の建物の雰囲気はあったが、外に階段があり、マンションの様な造りである事から、現実を思い出させる。


「やっぱり向こうもこっちも、一番最善な造形を目指すとこうなるんだな」


 エルマンノが小さく呟くと、ここか、と。恐らくソフィと言っていた人物が住んでいるだろう部屋の前に佇んだ。


「ふぅ〜、、よし、いくか」


 小さく、覚悟を決める様に口にすると、いつもと同じ様にドアをノックした。


「すみません!宅配で〜す」


 堂々と嘘をついてドアをノックし続ける。と、それから約四十秒後。


「すみませ〜ん、、お、?」

「もぉ〜、しつっこいなぁ、、えぇ?私何か頼んだっけぇ?」

「お、おぉ、」


 中からは、酔っ払いが出てきた。だが、それよりも。


「見えてますけど」


 まさかのシャツ一枚の彼女は、前屈みでドアを開けたのもあり襟元から見えまくっていた。そして大きい。何がとは言わないが。


「えぇ?あぁっ、も〜!変態なんだからぁ!」

「ごはっ!」


 照れながらエルマンノの背中を叩く。いや、冗談で叩くレベルを超えている。エルマンノは口から空気を吐き出すと、その場で蹲る。


「え〜、もうギブ?駄目だよこれからじゃん」

「その吐息混じりの声でそれ言われると、、元気出ます、」

「もう!変態〜!」

「ごはっ!?」


 これは能力者じみている。こんなヤバい人に酒を飲ませちゃ駄目だろう。エルマンノがそんな事を考えていると、突如腕を引っ張られる。


「うわっぷ!?」

「ねぇ?今暇なの?」

「え、ま、まあ、予定は無いですけど」

「じゃあ飲も〜!」

「えぇ!?」


 エルマンノはホラー映画の如く引っ張られながら家へと引き摺り込まれると、ドアがゆっくりと閉まった。


          ☆


「お、お邪魔します、」

「は〜い」

「...これは、、酷いな、」


 エルマンノは中に入ったや否や、目を細める。床は踏み場が無い程に物が散乱し、服や、空き缶等のゴミは散らかしっぱなし。キッチンには食べ終わったものや酒の瓶。皿などが適当に置かれており、これこそクリエイターの末路か、と。とてつもなく失礼な偏見をエルマンノは感じた。すると。


「も〜、そんな緊張しなくて良いよ〜?もしかして女性の部屋は初めて?」

「いや、初めてじゃ無いですし、緊張もしてません。絶望してたんです」

「はははっ!面白い事言うねぇ君っ!」

「貴方の方が面白いですよ」

「えぇ〜?そうかなぁ?そうかも〜!」


 予想外にヤバい人だった。エルマンノとはベクトルの違うヤバさであるものの、ラディアと一緒に居たのを考えると、もっとお淑やかなのかと思っていた。というかまず、ソフィなのかどうかも分かっていないが。


「にしても、女性の部屋初めてじゃ無いんだぁ?おっとなだねぇ〜」

「妹の部屋ですけど」

「あははっ!何だぁ〜、それはノーカンだよ!ね、そしたら、、そういうのも、した事ない?」

「そういうのとは?」

「も〜、女の子に言わせないでよ変態なんだから〜」

「それは誘ってるって事で良いんですか?」

「ん〜?だとしたら、、どうするの?」


 エルマンノはニヤリとしながら近づく。二人っきり。そして相手は無防備。これは、こうなっても仕方がないだろう。エルマンノは目つきを変えて、彼女の肩を掴んだ。


「わぁ!積極的!」

「すみません、それよりも前に」

「え?」

「妹になってください!」

「へ、?」


 酔いが覚めるほどの衝撃。エルマンノは、本気の言葉と双眸。態度で、それを強く告げた。


「ど、どゆこと、?」

「俺をお兄ちゃんと呼んでくれれば良いです」

「あ!そういうプレイ好きなんだ!」

「本気です」

「へぇ〜、、じゃあ、良いよ〜」

「っ!良いんですか!?」


 エルマンノは思わず前のめりになり声を上げる。前言撤回。天使だ、この人は。


「じゃあ、ニキで」

「ネット用語みたいな呼び方しないでください」

「えぇ、、それ何〜?というか意味一緒でしょ〜?じゃあ何?にぃでいい?」

「ん?おお、、それは、それで、」


『にぃ〜!今日は遊んでくれないの〜?』

『ごめん、今日は、疲れててな。明日でも、、いいか?』

『ふふ、いいよ〜。じゃあ、今日は疲れてる体、癒してあげるね〜』

『頼む』

『にぃ〜、にぃ〜い、』


 妹は甘えた様子で兄の手を取りいじりながら、そんな甘えた声で何度も兄を呼んだ。


「ぐふふ、、それはアリだな」

「へぇ〜、こういうの好きなんだぁ」


 頰を赤らめながら、その女性は微笑む。顔が赤いのは、恐らくアルコールのせいだろうが。そう思いながら、改めて見る。

 その女性の迫力に圧倒されていたものの、銀髪に、僅かに水色の様な、冷色の混じったボブの髪。丸い眼鏡をしており、アルコールが入っているからか、シャツ一枚とズボンというラフな格好なのに対してどこか色っぽく大人びている。


「なんか、、寝ると記憶がリセットされそうとか、言われた事ありません?」

「え〜?何の話?」

「いや、ただそう思っただけです」


 エルマンノはそれだけを告げると、改めて彼女に向き直り、問う。


「それで、その、突然ですみません。その、貴方が、ソフィさんですか?」

「え〜?なんで名前知ってるの?どっかで会った?」

「いえ、初対面です。俺みたいなのに会ったら忘れないでしょうし」

「それもそうだねぇ〜。じゃあ、誰かから聞いた?」

「はい。実は、ラディアって人から、聞きまして」

「えっ!?ラディアちゃんから!?」

「はい」


 エルマンノがラディアの名を口にすると、ソフィは目を見開き声を上げた。


「そっかぁ、なるほどねぇ。なんて言ってた?」

「今度、ライブやるんで、見に来て欲しいって。あと、元気ですか、と」

「あははっ!あの子らし〜。うん、元気だよ〜」

「それは見れば分かります」

「あの子には見えないでしょ?」

「それもそうですね」


 半分嘘を平然とつきながら、エルマンノはソフィにそう告げたのち、彼女は息を吐く。


「そっかぁ、、実はね、ラディアちゃんとは、バンド仲間だったんだぁ」

「はい、それも知ってます。確か、元々は三人だったって」

「お〜、結構親密のようだね君。どういう関係?」

「ラディアとは兄妹で、俺は兄です」

「えっ!?再婚したの!?」

「いえ、俺がお願いしたんです」

「え、あぁ、そういえばそんな趣味だっけ、、てことは、最初の妹の部屋にってのは、」

「はい。ラディアの家にもお邪魔させてもらってます」

「っ!?それって実家!?」

「はい。実家です」

「うっわ良いなぁ〜」


 中々ソフィのキャラを掴めない。酔っ払っているせいか、そう声を上げると、突如悲しげに声を漏らした。


「私も行きたかったのにぃ」

「それは、すみません。でも、貴方も今日から俺の妹です。つまりーー」

「えっ!?私ラディアちゃんと姉妹!?」

「そうですね」

「うっほぉ〜、なんか、君が妹にこだわる理由も分かる気がするよぉ〜」


 何故か楽しそうに口にすると、ソフィは改めてエルマンノに向き直った。


「今更だけど、君、名前は?」

「エルマンノです」

「エルマンノかぁ、長いなぁ」

「名前なんて必要ありません。にぃと呼んでください」

「あ、それもそうだね〜、にぃ、今日からよろしくぅぅぅぅ〜!」

「あ!ソフィさん!?」


 ソフィはそう声高らかに口にすると、そのまま倒れ込み、仰向けの状態で天井に目をやった。


「だ〜いじょ〜ぶだいじょ〜ぶぅ、、なんか、眠くなってきただけ、」

「眠ってはいけません、寝たら死にますよ」

「雪山かぁ、ここは〜」

「それじゃあ、寝てはいけません。攻撃されてます!」

「舞台みたいになったなぁ、突然、」

「正確にはアニメ映画です」

「何ソレ」


 エルマンノの言葉にニヤニヤとしながら返すと、少しの間ののち、微笑みながら切り出す。


「後、、にぃ?」

「何ですか?」

「敬語、やめてよ〜、兄妹でしょ?」

「た、確かに、俺としたことが、ラディアの影響か、」


 普段は妹相手に自然とタメ口になっていたのだが、ラディアとの敬語が長かったためか、はたまた圧の強い相手で、尚且つ初対面だからか、敬語になってしまっていた。


「確かにあの子はかしこまってそ〜」

「かしこまってたなぁ、、それに、お兄ちゃんって呼ぶのを躊躇してた」

「あははっ!まぁ、それは普通かもね〜」

「突然切り捨てないでくれません?」

「はははっ、ほら〜、また敬語〜、」

「これは、妹に敬意を払っての意で、、って、ソフィ?」

「ん〜、、むにゃ、」

「寝てるのか、、早いな、というか、リアルにむにゃむにゃ言うのは初めて聞いた」


 どこかで起きてるのではと、そう思ったものの、起こすのもあれなので、起きるまで待つ事にしたエルマンノだった。


「さて、、その間に、いっちょやりますか」


          ☆


「ん、、う、いった、」


 どれくらいの時間が流れただろうか。ソフィはガンガンとする頭を押さえながら、ゆっくり呼吸をして起き上がった。


「また飲み過ぎたかぁ、」

「おぉ、起きたか、妹よ」

「へ?」

「え?」

「だ、だだっ、誰っ!?」

「わ、忘れたのか、?お兄ちゃんだぞ、?」

「誰かぁぁぁぁぁっ!ストーカーッ!変質者が部屋にっ!助けてぇぇぇぇっ!」

「えぇ、」


 突如、声を荒げるソフィに、エルマンノは辺りを警戒しながら、冷や汗混じりに声を漏らした。


 マジ、上手くいかねぇ、何でこうなった。

 エルマンノは、ソフィ以上に頭を押さえながら、そう息を吐いた。

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