クルージングツアーと信長の躍進
坂本龍司
春も通り過ぎた頃、豪華客船が完成した。と言ってもこの時代の船は風で動くから現代のような船は不可能、定員は五十人くらいになったけど出来るだけ波の影響を受けない船を作った。
お市ちゃんに催促されてから急ピッチで創ったこの船は、大市丸と名ずけた。
「私が尾張へ帰る前に乗れて光栄でございますわ!龍司殿ありがとう!!」
「はい、最初に姫様を乗せられることを誇りに思います」
流石のお市ちゃんもこのでかい船に興奮している様子だ。この笑顔を見ると作ってよかったと思える。
乗船するメンバーは、日帰りなので大殿や幻庵を始め氏政君、お市ちゃん、重臣達、坂本家と妻と子供達だ。
「じゃあ木兎、出港しようか」
「了解した。大市丸、出港ーーー!」
どぉーーーーん!
空砲によって出港した大市丸を伊豆の領民が手を振って送り出している。年に四回はツアーをして領民には無料で乗せてあげよう。
航路は伊豆諸島を折り返し地点とし戻ってくる形だ。坂本一家はデッキに出て皆とお酒を飲んでる、あぁゲームをやってた頃を思い出すな。
大殿は最初は渋っていたけど半ば無理矢理連れてきた、休養も必要だからこの時間だけはのんびり過ごして欲しい。
氏政君はお市ちゃんとイチャコラしながら船内を探検している、おしどり夫婦まっしぐらですな。結ばれる前からあんなに仲が良いなら何も問題ない。
うちの家臣達も各々楽しんでるな。幸綱さんも隠居してからすっかり老け込んでしまったけど、まだまだ元気そうだ。上泉さんはある程度船になれたみたい、唯一の欠点が無くなったわけだ。
大市丸はその後も進み、伊豆諸島近くまで来た。北条家の皆さんは発展ぶりに驚いてたね、俺も伊豆諸島に活気が溢れてて嬉しかったな。
無事に伊豆に着いたけど少し暗くなっちゃったな、伊豆の治安は良いけど万が一を考えて各々に護衛をつけよう。初回のクルージングツアーにしては大成功と言っていいだろう、これからも定期的にやりたいね。
織田信長
龍司のお陰で帰蝶と養父上を助けることが出来た。危ないところだったな・・・
三河は竹千代を抱えているし、今川が抱えていた人質も北条に巨従する際に返したのもあってほぼ服従に近い状態だ。
美濃は新九郎のやつがいて何をするかわからんが、今の内に北伊勢を攻めとる。六角に文句を言われるかもしれんが、まともに統制出来ていない地があるのだ、遠慮なく奪い取る。
「これより北伊勢に攻め込むぞ!これを機に六角と敵対するかもしれん、大国だがそれは前管領代がいた頃の話だ。切り崩すことも出来よう、北条に負けじと織田も大きくなるぞ」
「「「ははっ」」」
北条から大筒は貰えなかったが改良した火縄銃は五百も送ってきた。数本をそのままくれるらしい、織田でも量産して欲しいとの事だろう。
面白い話も聞けた。極秘だが銭から金と銀が取れるとはな、北条が潤っておる要因の一つだろう。だが南蛮人共がそれを知ってて貿易をしていたとは、油断ならぬ奴らよ。
龍司は南蛮や明などの脅威を分かっているのだろう、それを匂わせる文も送ってくる。
結局、北伊勢を平定するのに二ヶ月もかかったが何とか終わらせることが出来た。次は美濃だ、養父殿からは好きにせいと言われておるし攻めとる。待っておれ新九郎、帰蝶を殺そうとした罪は重いぞ!
北条氏康
「織田の勢いが凄いな、瞬く間に北伊勢と美濃の半分を平定するとは。龍司が言っておったことはまことであったか」
「本人は新九郎を捕えられなくて嘆いていましたがね、余程お怒りなのでしょう」
「帰蝶とはそれほどの女子なのか?」
「蝮の娘と言われていますが気品もあり頭がキレると聞いております。信長様がお気に召すのも納得です」
「ふむ、そろそろ倅と市姫の婚姻の時期じゃろう。儂も信長殿に会ってみたい」
「情勢的に婚儀は尾張でやることになりそうですね」
「お主と幻庵は北条に残ってもらう、留守を頼んだぞ」
「畏まりました」
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