寝耳に水がすぎるいつもの二人

 武田信玄



「殿!火急の知らせです、北条と織田が縁組を結びました!!」


「なんじゃと?あの両家に誼があったなど聞いておらんぞ!?」


「どうやら内々に進んでいたようです」


 北条は武田家をいかほど苦しめれば気が済むのだ?いっそ攻めてくれば良いものを戦をせずに苦しめる。


 信濃西側もようやっと落ち着いた頃だと言うのに。武田は海を得ずに細々とやってろと申すか?これはもう今川と同盟を結ぶしかあるまい。信がないのは百も承知、儂が直に向かうとするか。





 今川義元



 北条と織田が縁組を結んだ。詰んだな・・・


「芳菊丸、よろしいですか?」


「母上・・・」


「何を弱気な顔をしているのです、あなたは今川家当主なのですよ」


 寿桂尼、母上にも家中を纏めるのにかなり助けてもらったのに、斯様なことになろうとはな。


「今川家を守れませんでした、申し訳ございません」


「しっかりしなされ!まだ道は残されております。北条に降りなさい」


「母上!?」


「良いですか芳菊丸、どんな形であれ今川の血を終わらせることだけは何があろうとも許しません。私も一緒に行き頭を下げましょう」


 母上はやはりお強い、女子なのが勿体ないと幾度思ったことか。


「殿!武田家からの使者として当主の武田信玄自ら参っております」


「「・・・」」


 恐らく同盟を結びたいのであろう。


「武田と組み、北条に一泡吹かせよう等と考えてはいませんよね?」


「母上、分かっておりまする」





 武田信玄



「義元殿、久方ぶりですな。息災でありましたか?今回のご用向きは言うまでもない、北条と織田が縁組をしたのに際して我々も対抗すべく同盟、強いては婚姻同盟を結びたい所存」


「信玄殿、儂は北条に臣従いたす」


「な、真でございまするか?太原雪斎殿は北条に討たれたのですぞ!?」


「そんなこと儂とて分かっておるわ!!されど今川を残すには降るしかあるまい、既に北条と我々の差は歴然なのだ」


 なんてことだ、ここで今川が臣従したら武田はどうなる?今川は許されるかもしれんが武田はどうなるか・・・

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