大改革への道 其の一

 坂本龍司



 夜、風魔の使いに呼ばれて小田原城の一室に来た。うん、風魔の皆さんいっぱいだね。まあいいけど。


氏康さん、幻庵さん、氏綱さんと俺の四人での話し合いになる。智も呼ぼうとしたけど逃げられた・・・


「よく来たな、龍司」


「この場を設けて頂き、改めて感謝申し上げます」


「無理に取り繕うな、恐らく出自が複雑なのだろう。それにこの場ではもっと楽にして良い」


 幻庵おじさん流石だね。出自を見抜くのもそうだけど、こっちが話しやすいように誘導してくれた。


「では龍司、色々を話してくれるか?」


 俺は部下の皆の能力や、伊賀、甲賀で乱波を大勢スカウトしたことを話した。


「・・・恐ろしいな。どこにそれほどの銭があるのだ?」


「それは出自とも関係しますが、少し話すと私達は日の本から少し離れた小さな島を拠点に生活しています。そこで生きて行くには、船と商売が何よりも大事になります」


「それと皆さんは、銭をどう思ってますか?」


「どう思っているか?国を守るには必要不可欠だと思っているが」


「もっと広く深い使い道がございます。これから皆さんには、銭の持つ力と、恐ろしさを伝えられればと」


「よい、遠慮なく話してみよ」


「はい。私は北条家にて孤児院、学校、病院を建ててもらいたいです。孤児院はその名の通り、孤児を北条家にて保護し育てます。読み書きや算術を教え、剣術も教えて行きます。学校では武官、文官はもちろん、絵画や焼き物、職人等も学校にて教育させます」


「な、なんと・・・学問や技術を万人に与え国を栄えさせるか」


「しかし、恐ろしく銭がかかるの」


 いかに北条家と言えども、そんな莫大な銭を出せないことは最初から予想出来ていた。でも俺はやる。


「銭は全て私が出します」


「な、なんだと!?」


「銭だけは任せてください。北条家の家臣達からどんな目で見られようが私はやります」


「意志は固いか。それにしても、それらを建てるとどうなるのだ?」


「子供は宝です。保護した子を立派に育てあげれば、幻庵殿のような文官や、一騎当千の武官が沢山現れます。1•2年の話ではなく10年、20年先の北条の為になるはずです。伊賀、甲賀の者には既に孤児と老人を北条に連れてくるように支持しました、秋頃に続々と来ると思います」


「た、確かに恐ろしいな。長い目で見れば、北条家は歳を重ねるごとに強くなっていくということか」


 幻庵おじさんはそこまで見抜いたか。ついでだから、すぐに出来ることも言っておこう。


「すぐに出来ることを言えば、領内の次男や三男に兵士の募集をかけてください。この者たちに飯を食わせ、銭を払い、日頃から訓練させます。最初は少なくてもいいです。増やしていけば、田植え等に縛られず一年中戦を仕掛けることが出来ます。いずれ北条の精鋭に育つでしょう、その軍を氏康様の直轄軍にした方が良いでしょう」


 おー、3人とも絶句してらっしゃる。そりゃこの時代だと分からんよな〜銭の恐ろしさ。便利だとは思ってただろうけど。そう考えると信長ハンパないな。


 他にも、街道を整えたり、伝馬所を設ける利点を話した。

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