やって来たぜ北条家

 坂本龍司



 北条領に入ってしばらくして、皆と合流できた。富士子との一連を話したら、皆祝ってくれた。素直に嬉しかったな〜!


 俺が来るまで皆は、宿とかで過ごしながら色々情報を集めてくれていた。北条の忍び、風魔が接触してきたらしいが、後日俺が仕官すると伝えたら意外と好反応だったらしい。


 うーん、俺一人で小田原城行くか。大人数で行ってもあまり良い印象与えないと思うし。


 そしていよいよ謁見の間に入ると、北条家の当主、北条氏康に氏綱、幻庵がいた。氏康が真ん中にいるってことは、氏綱は隠居したのか。てか氏綱さん体調悪そうだな・・・あとで清子に診てもらおう。


「よくぞ参られた、坂本龍司よ」


「はっ」


 おいおい、氏綱って見た感じまだ若いよな?迫力ありすぎだろ・・・


「一目見て分かる、かなりの手練だな。なぜ北条に来た?」


「民の暮らしを見て決めました。この荒れた世の中で、民を想い政をしているのは北条だけだと思います」


「民のため、か。坂本龍司、お主は北条の為に何ができる?」


「私は剣術が得意なので、剣術指南でしょうか。他にも私の下にいる者が色々出来ます」


「下にいる者というのは、乱波のことか?」


 幻庵おじさんが鋭い目で聞いてきた。大剣豪の殺気に比べたら大したことないけどやっぱり恐いな、でもここは一つ大きく出るか。


「幻庵殿も、乱波の重要性を理解していると思いますが?」


 そう、風魔一族は幻庵が采配していると調べが着いていた。多分だけどこの爺さんとは気が合いそうな気がする。


「この儂に言い返してくるか!なかなかよのう」


「色々出来ると申したが、その色々を今聞くことは出来ぬか?」


 うーん、船大工はいいとして、鉄砲鍛冶に医者とかはここで話すの危険すぎるんだよな〜


「ここで申し上げるには、人が多すぎるかと。氏康様とご隠居様、幻庵殿と内密の場にてお話出来ればと」


「はははは!仕官してもないのに内密の場を望むか!!肝が座っておるわい」


 周りに控えてる人達に睨まれる・・・しょうがないじゃん、情報漏らしたくないんだもん。


「申し訳ございません。ですが、内密の場にて話すことは必ず北条家の力になります。何卒」


 しばらく考える3人。この間が長く感じる・・・誰か助けてください。


「夜にまた小田原城に来い。幻庵、その時に使いを出すよう頼む」


「うむ」


「さて、お主の待遇だが、何か望みはあるか?」


「剣術指南が出来るように、広い庭がある屋敷を頂ければ十分です」


「うむ・・・そなたを見る限りそれだけでは足りんな。禄を200貫出そう」


「ありがとうございます」


「父上と幻庵からは何かあるか?」


 2人とも首を左右に振る。こうして謁見が終わった俺は、夜まで大人しく過ごした。






 北条幻庵



 謁見を終えた後、氏康と兄上を呼び止めて、坂本龍司について話すことにした。


「ありゃ只者ではないぞ氏康。お主に操れるか?」


「元から操ろうなど思っておりません。ただ、なぜか彼の者に期待してしまっている自分がいます」


 なるほどの。若い上の好奇心か、それとも天命がそうさせるのか。


「今夜話してみれば分かるだろう。今更あれこれ話してもなんにもなるまい」


「それもそうだが・・・」


「仕官を認めたんだ。儂らも覚悟を決めんとな」

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