いざ日ノ本へ

 小笠原諸島の父島に着いて10日目。

拠点作りは順調に進み、仲間達と作戦会議を開いていた。分かったことは、俺はもちろんゲームのNPC達も本物の人間になったこと。


「俺も含め、みんなの名前を一新しよう。俺の名前は坂本龍司(りゅうじ)だから、みんなよろしくね!」


「いい考えだと思います。見た目は日本人ですが、名前はゲームの中で考えられたカタカナですからね」


 参謀のケイトは智(さとる)、鉄砲鍛冶のキッドは吉虎(きちとら)、船大工は木兎(ぼくと)、医者は清子(きよこ)、料理人は誠子(せいこ)


「問題はどこに上陸するかだよな〜。何をするにも俺達じゃ目立つだろうし、どこかの大名で働いた方がいいと思うんだけど」


「となると、やっぱり信長のいる尾張じゃないですか?」


「やっぱそうなる?」


 でも信長ってブラック企業の予感が凄いんだよな・・・忙しくなるの絶対無理だわ。


「うーん、あんまり西に行っても畿内の泥沼に巻き込まれるだけだしな・・・」


「頭はどこに住んでたんだ?」


「ん?埼玉だけど」


「じゃあ北条でいいんじゃねえか?生まれ育った土地を発展させようぜ」


「なるほど、それいいね!感謝の念も込めて発展させよう」


 相変わらず領主様は決断力があるな。短慮とも言えるが、それは参謀である私が支えればいいだけ。


「では、上陸場所は北条でよろしいですか?」


「いや、伊勢に上陸する。伊賀と甲賀から忍者を部下にしたい」


「忍者に関しては既に調べてあります。まず伊賀からは藤林長門守保豊、千賀長保長。千賀長に関しては、後の服部半蔵もいる所です。甲賀からは、多羅尾光太、鵜飼孫六などが優秀な一族になります」


「よし、全部取り込もう。無敵の諜報機関を作るのが俺の夢!あと俺が唯一好きな武将、真田一族って今何してるのかな?」


「まだ武田家に仕える前なので、恐らく取り込めるかと思います」


「真田一族も取り込もう。じゃあ明日、伊勢に上陸して伊賀、甲賀に行く方向でよろしく」


 翌日、部下のみんなと小笠原諸島を出発した。島には100人ほどの元NPC達が残り、開発を進めている。


 ようやく、日ノ本上陸。

 伊勢に来たけど、戦国時代にしては中々な賑わいじゃないかな?季節的には春だな。


「目立つといけないから、小さい船用意したけど正解だったね」


「本艦で行ったら大騒ぎですよ」


「吉虎と木兎、もう少ししたらたんまり仕事あるから我慢してね」


「おうよ」


「はいよー」


 伊勢に上陸して、伊賀に向けて歩を進めていた。少し歩いただけで賊に2回遭遇し、治安の悪さを痛感した。


「賊に襲われるし、道は悪いし。ほんとに戦国時代来ちゃったんだね・・・」


「この時代は人殺しが当たり前です。さきほど龍司様は、賊を殺さず気絶させてましたが、覚悟を決めてください」


 そうだよね。平和ボケした日本人とはいえ、ここは戦国時代。油断すると簡単に命を落とすし、大事な仲間を失うことになる。心を鬼にしないといけない・・


「智、ありがとう。覚悟を決めたよ」


 気楽な気持ちで来たけど、気合い入れていかないと守りたいものも守れなくなる。

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