第22話 赤信号みんなで渡ってみんな死ぬ

 乱暴に手を引かれて部屋に連れ込まれた。ベッドに押し倒され、私の服を乱暴に脱がそうとした。

 何をされそうなのか私は本能的に感じ取った。


「嫌っ」


「本当にそう思ってる?」


「当然です! やめてください」


「じゃ、何で私に関係をいう時にあの子をって言ってあげなかったのさ。アンタってさ、今までゲスい女見てきたけど、同じだよ」


「そんな嫌です。もう福子と一緒にいたいと思ったんです」


「仮カノ子でも? それって、他に女作ってもオールOKじゃん。いいでしょ? 私に試されて、それを福子ちゃんに試せばいい。ウィンウィンじゃん」


「私、信用されているので」


「そうか、分かった。それを私の女に聞かせてやりたい」


「多頭飼いですか?」


「不思議だよな。絶対愛されないって分かっているのに私から離れないってさ。私は相当性質の悪い女だよ」


「あの頃の私に言ってやりたいですね」


「中学生はあの時初めて飼ったけど、飼って分かった。ダメだよ。だって私、ロリコンじゃないのよね。高校生はその辺まだ。おっと睨むなよ」


「常葉はこれまでに誰かを好きになって、どれほど愛してきた?」

 あの子、あの子、あの子。


「悔しいだろうな。どんな子がいたかは分かるのに、どういう名前でどんな性格だったかは忘れたんだ。行為だけ、どんな事を思ったか知ったのかだけ残る。なら、無理に大人になるな」

 突然、電話が鳴った。その人は内線を取った。


「もしもし、うん。分かった。何人? お、六人か。回せる? うん、分かった。私も片して行くわ。待ってもらって」


「あの六人って」


「前田くんは優秀だな。ちゃんと営業かけたみたいだな。私も行かなければならない。赤信号みんなで渡れば怖くないで来たのだろう」


「全員ひかれてみんな死にます」


「一学期で何人の先生がいなくなるか。それだけが気になるな」

 皮肉っぽく笑う。

 私が中学生だった頃のあの人そのままだった。でも、初恋じゃなかったのごめんなさい。騙されて、帰りまで。


「二人は裏口から帰れ。正面で立ち会ったら、どちらも顔色が変わるだろ」


「福子は喜んで写真撮るでしょうね」


「それはそうかもしれない。行きな、向こうさんも早めにすっきり遊んで早く帰りたいだろう」


「これで終わりです。お世話になりました。ありがとうございます」


「いつでも来てもらって構わない」


「私は心も身体も同じく大切にしたいので、身体も心も福子でありたいです」


「ますます、うちの元カノ子と女たちに聞かせてやりたい。講演会開かないか?」


「嫌ですよ。そんな仮カノ子だらけの地獄みたいな空間に行くなんて自殺行為。本当に刺されますよ」


「心配するな。みんな仮カノ子未満だ。シャツのボタン悪かったな。縫ってやるよ」

 ものの数秒で全てのボタンを縫い付けた。


「よし、これで終わりだ。部屋を出たら合流しろ。元気でな」


「お元気で」

 細めの女性の誘導で私は非常口を出た。外には湯気の立っている福子が待っていた。


「マットプレイって初めてやったけど、めちゃくちゃどすけべだよ。あれ」

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