第20話 善き睡眠

「せっかく街まで出て来たのにさ。なんで寝ちゃうのよ」

 映画は寝るものだろう。そう思って口を閉じた。


「分かるよ。確かに程よく涼しかった。シートは恋人シートにしたからふわふわで、すごい気持ちいい。分かるけどさ」


「初めてのお外デートにごめんね」

 頭をなぜると大人しくなるのにゴールデンウイーク過ぎた辺りに気づいた。

 その分少し背伸びをする必要があるのだが、なぜて欲しいのか手を伸ばすとかがんでくれる。


「また来ればいいじゃん」


「うん」

 頭の中で福子と呼ぶにはまだまだ追いつかない。

 やはりゴリラと呼ぶのがしっくり来る。

 それに悔しい事に恥ずかしい。こんなに純愛は久しぶりでそれこそお昼寝の時間に可愛い女の子とお布団が一緒くらいさかのぼる必要があるかもしれない。


 中学の頃に明らかに世間の女の子とは少し違うなと感じた。ここは私と似たような人がいたのだが、平和にことが進んでいた。

 学内を攻めるタイプが多かったことからだろう。私は学外で遊ぶタイプだったからだ。


「私が教えてあげる」

 そう上から来るタイプの女をこてんぱんに出来るようになるまで、中学二年まで時間がかかった。女の子が好きな女の子は学外でしか遊べなかったのだ。


 ネコをしている間に少し触る場所や言われて嬉しい言葉を習得することで自然とタチの訓練も出来た。


「あまり調子に乗って遊んではいけないよ」

 過去にそう言うことを言った女性がいた。外には外のテリトリーがあって、それを超えてしまった時に言われたことだった。


 街でも侵してはならない線があると教えてくれた人がいた。


「ねぇ、次どこ行く?」

 手を何となく狙ってきたので、私はすぐさま逃げた。


「それくらいいいのでは無かろうか。ほれほれ」


「私の手は安くないの。残念」


「手は触らせてくれるくせに」

 うん、それはそうだな。


「それとちゃんとお付き合いしている子たちがするは違うでしょ」

 ほう、体温が上がったな。


「そのゴリラとでは手は繋ぎたくないの?」

 ゴリラのくせにやるではないか。ならばこうしよう。


「福子。目を見て」

 名前を呼んで目を見るようにさせたら、見てすぐに福子はそらす。


「これくらいでそらす女に手は繋がせないな」


「ずるいし、学校ではゴリラって言うくせに」


「そりゃ、学校と二人きりの時は違うわよ」

 モゴモゴとずるいのを繰り返す動物に私は行くわよと声を掛けた。お昼がまだだった。


「何、食べたいの?」


「そりゃ、豚カ。いや、パンケーキ」

 お前、可愛い瞬間ちょくちょくあるな。


「私も豚カツ食べたいなー」

 かなり棒読みだった。


「でも、今日の服にソースが垂れるとダメだよね」

 それなら同じ理屈でパンケーキはダメだと思う。


「最近の豚カツは前掛けあるところも多いわよ」


「常葉が言うなら仕方ないな!」

「電器屋の上にあるところかな、百貨店かな、駅の上かな。たくさん選ぶのにあちこち行くのはな」


「現代人でしょ。携帯を使いなさい」


「えっと、まずは電器屋から攻めよう」


「携帯って言っているでしょう」


「あ! ごめん。テンションがおかしくて、そうだよね」

 結局、アプリを使い。天丼を食べるはめになった。なんでだよ。

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